ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相(71)が11月1日から5日まで日本を公式訪問した。日本はミャンマーとの政治、経済関係強化を念頭に、スー・チー氏を事実上の元首として遇し、2日に行われた安倍晋三首相との会談、それに続く歓迎夕食会も首相官邸ではなく東京・元赤坂の迎賓館が充てられた。

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 歓迎夕食会には日本側から約30人の民間人が招かれた。企業のトップ、保健・医療、教育研究関係者に混じって、文化関係者の中にファッションデザイナーのコシノジュンコさんの名前を目にした時は、「やはり」と思った。彼女はミャンマーが民主化する前から、ファッションで文化交流を行ってきた第一人者でもあるからだ。

ミャンマー文化への貢献

 夕食会の冒頭、歓迎スピーチに立った安倍首相はスー・チー氏を「民主化の不屈の指導者」とたたえ、「日本は信頼できるパートナーで、最大のサポーターであり続けたいと思います」と語った。

 また、両国の共通点に「相手を思いやる国民性」を、自分とスー・チー氏の共通点に「火曜日生まれ」を挙げた。「ミャンマーの曜日占いでは、火曜日生まれはライオンのように情熱的とされます。ミャンマーの国づくりに対して、思いやりの心はそのままに、情熱的に取り組む真の友人同士でありたいと思います」と語り、笑いを誘った。

 この夜の食事は、最初はお弁当のように、小皿に懐石料理が幾つも盛られた〈旬菜〉。内容は落花生豆腐、秋色白和え、柔穴子細巻き、地鶏香り焼串刺し、子持ちアユ煮浸し、クルマエビ茶巾ずし、ギンナン松葉刺し。

 2皿目は〈蒸し物〉で、魚介とろろナスのスープ蒸し。魚介にはアマダイ、ホタテガイ、ズワイガニを使っている。

 3皿目は〈造り〉で、内容はマコガレイ、サーモン、本マグロ、イカ。

 4皿目はアイガモ甲州煮の〈煮物〉。

 5皿目は〈焼き物〉で、伊勢エビをチーズとみそで焼いた一品。スー・チー氏が大好きな焼きぐりが添えられた。

 6皿目の〈御飯〉はうなぎせいろ。香の物と赤だしが一緒に出された。

 最後の〈デザート〉は、日本各地の旬の果物だった。

男性が強い? ミャンマー

 デザートが出された時、コシノジュンコさんは近くの席を立って、安倍首相とスー・チー氏のメーンテーブルに向かった。

「私はスー・チーさんと会ったことはありませんので、ミャンマーでいろいろやってきて、このままごあいさつできずじまいになるのは何だと思い、思い切って自分から立って来ました」

 気が付いた安倍首相は「ちゃんとご紹介しましょう」と、スー・チー氏に英語で「この方は日本の有名なファッションデザイナーです」と言った。

 これを引き取ったコシノさんは、ミャンマー語の通訳を介して、これまで2度ミャンマーでファッションショーを開いたこと、2013年に同国で東南アジア競技大会(SEAゲーム)が開かれた時は、ミャンマーチームのユニホームをデザインしたことなどを話した。

 スー・チー氏は「ああ、そうだったのですか」と思い出したようにうなずき、「ミャンマーの女性のファッションはまだまだですから、ぜひお手伝いしてください」と言った。コシノさんは自分がデザインしたハンカチに名刺を添えてプレゼントした。スー・チー氏は「ありがとう」を受け取った。

西川 恵(毎日新聞社客員編集委員)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載