花王を「優等生」たらしめる会計財務部門の存在

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上場企業きっての”株主還元優等生”と言われている花王。その背景には絶えざる革新を行う会計財務部門がある。現在、その組織を率いるリーダーが青木和義執行役員だ。

花王の会計財務部門の歴史を一言で表すと”絶えざる革新”だ。最近でも、2011年からグローバル・キャッシュ・マネジメント(GCM)の導入、16年12月期に国際会計基準(IFRS)の適用を行い、グローバル化を進める経営戦略を支えている。

同社の16年12月期の連結純利益は前期比14%増の1,200億円の見通しで、予想ROE(自己資本利益率)17.2%と好業績。今期は過去最高となる1,000億円の投資を計画し、約10年ぶりのM&A(合併・買収)を実施、2年ぶりの自社株買いを行う。その要因として経営指標「EVA(経済付加価値)」の存在をあげるのは同社執行役員会計財務部門統括の青木和義だ。

─会計財務部門として新しい取り組みを続けている。なぜ、できるのか。

1983年の「ノン伝票スタート」をはじめ、「キャッシュレス、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)、手形レス」(85年)、EVA導入(99年)、09年の経理業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)化、GCM、IFRSの導入など”常に先頭を走っていきたい”と挑戦を続けてきた。

その背景には、新しい取り組みを行い、自分たちで消化し、次の新しい取り組みに挑戦する─。そんなチャレンジ精神を評価する組織文化があるだろう。発泡タイプの入浴剤「バブ」など”ないものをつくる”ことで新たな製品市場を生み出してきた企業の歴史が会計財務部門にも及んでいる。

─自己変革的に進めているようにも見える。

EVA導入など経営トップの了解を得ながら進めていく革新と、キャッシュレスのように部門主導のボトムアップで組織の効率化のための革新という双方で進めてきた。確かに自己変革的な部分もある。たとえば、BPO化は単純に社内か社外か、ではなく、”何を得られるか”という視点で考えた。

他社の思考もわかるので、社内に置き換え「こういうことができるかもしれない」と新しいアイデアが浮かぶ。こうした取り組みで得た気付きをもとに次の仕掛けを考える。こういう発想とプロセスを重要視している。

─他社に根付かなかったEVAを駆使している。なぜか。

企業価値を高めるという企業の究極の使命に対して、「率よりも額」の方がわかりやすい。額は高いほどいいからだ。ただEVAを導入すれば、企業がよくなるという発想ではなく、「EVA的な視点」でいかに考えるか─という観点を徹底したことにある。

EVAの真髄は「キャッシュの使い方」にある。まさに経営そのものだ。今回、自社株買いを発表したが、それもその一環だ。資本コストをいかに抑制・減らしていくか、税引後営業利益(NOPAT)を増やしていくか。コストを抑制することは余剰キャッシュを創出することであり、成長のための投資やM&Aは新たなNOPATをさらに生むという観点から事業を考え、最後に株主還元をする。

EVA導入前から、ノンキャッシュをはじめさまざまな形で、キャッシュ意識を持つための施策をしてきたので、事業サイドも違和感なく受け入れられてきた。

ここ数年のGCM、IFRSの導入という直近の取り組みは、全てEVAにいきつく。継続的に取り組んできたからこそ整合できた。結果論のように見えるが、そうではない。

GCMは、グループ会社の資金を一元管理する「プーリング」、関係会社間の資金のやりとりをまとめる「ネッティング」をしながら、自由に使える余剰キャッシュを増やした。IFRSはグループ108社が同一基準となり、さらに機械装置の耐用年数の統一を行い、会計基準を一本化して、社内の尺度を統一した。EVAの考え方に則ったブラッシュアップだ。