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by Andrés Moreira

会社経営者のBill Sourourさんには、かつて一介の開発者だったころに「あのコードにしなければよかった」と後悔している仕事があります。これ以降コードの影響について二重に考えるようになったというほど人生に影響を与えたコードについて、Sourourさんが自身のブログで語っています。

The code I’m still ashamed of

https://medium.freecodecamp.com/the-code-im-still-ashamed-of-e4c021dff55e



Bill Sourourさんは6歳で初めてコードを書き、15歳のときにはコンサルタントをしていた父親の会社でアルバイトを開始。そして21歳でトロントにある市場調査の会社でコーディングの仕事を得ました。

この会社の設立者は医者で、クライアントの多くは製薬会社でした。Sourourさんの母国であるカナダでは、製薬会社が消費者向けに処方薬の宣伝をするにあたって厳密な制限があるので、製薬会社はそれぞれの薬の情報を記載したウェブサイトを作っていました。

Sourourさんが割り振られたプロジェクトの1つに「10代の女性向けの薬」があって、その薬のサイトではクイズに答えていくとその回答に応じたオススメの薬が表示されるという仕組みになっていました。Sourourさんはクイズの質問文まで含まれた仕様書を受け取りましたが、ではクイズの最後にどういった薬を表示するのかという答えだけが抜けていました。この点はアカウントマネージャーがクライアントに問い合わせを行って、改めてSourourさんは開発を始めました。

しかし、いざサイトが完成してクライアントに提出する直前、プロジェクトマネージャーが「クイズがちゃんと動作しない」と指摘しました。指摘の内容は「クイズにどのように答えても、ベストな答えとしてクライアントの薬が表示される」というものでした。実は、これはSourourさんが受け取った「要望」によるものでした。そのことを聞いたプロジェクトマネージャーは「ああ、なるほど。クールですね」と答えて、話はそれで終わったそうです。

Sourourさんが後悔しているのは「このサイトはクライアントの特定の薬を推奨するもの」と理解しながら、そのマーケティングに乗ってしまったことです。実際、クライアントはサイトに非常に満足して夕食会を開いてくれたほどだったそうですが、その陰で、Sourourさんは同僚から、当該サイトに掲載されていた薬を使った少女が自殺したというニュースを知らされました。薬にきつい鬱と自殺衝動を招く副作用があったためで、今でも元患者との間には訴訟が続いているほど。同僚は夕食会に現れませんでしたが、Sourourさんはなんとか笑顔を取り繕いながら夕食会に参加しました。

ちょうどSourourさんの妹も19歳でこの薬の処方を受け、Sourourさんは自分が仕事でサイトを作っている薬だという話をしたところだったので、あわてて電話をして薬を使わないようにと伝え、妹は薬の使用を取りやめました。そして夕食会からしばらくして、Sourourさんは会社を辞めました。

実はSourourさんはクライアントの要望を初めて見たとき、少女たちをだますことが目的になっているのではないかと悩んだそうですが、最終的には「やるべき仕事だから」と考えて仕事をこなしました。

しかし「私たち開発者たちは、潜在的に危険・不道徳なことを行うときの最後の防衛線の1つです」と語るSourourさん。すでに医者による疾病分析を助けるAIプログラムが存在している現在、そのプログラムが処方箋まで作るのにそう時間はかからないはず。そうなる中で、自分たちの倫理観をコードにも反映させることこそが大事だというのがSourourさんの主張です。

一件以来、自分が書いたコードの影響について2倍考えるようになったというSourourさん。こういう考え方がコードを書く人には必要なのかもしれません。