イランのモフセン・マフマルバフ監督

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 イランのモフセン・マフマルバフ監督が11月23日、第17回東京フィルメックスの特別招待作品フィルメックス・クラシックに選出された「ザーヤンデルードの夜」の東京・有楽町朝日ホールでの上映後にティーチインを行った。

 同作は、マフマルバフ監督自身も関わった1978年のイスラム革命の意味を問うため、人類学者の父と救急病棟で働く娘のたどる運命を革命前、革命中、革命後に分けて描出。1990年の作品で、イランの検閲によって37分カットされて同年のテヘラン・ファジル映画祭で上映されたが、再度の検閲でネガフィルムを当局に没収され以降、イラン国内外を問わず見ることができなくなった幻の作品だ。

 だが、経緯は不明なもののフィルムが国外に持ち出されロンドンで復元作業が行われた後、今年のベネチア国際映画祭でお披露目。検閲前のオリジナル版は100分だったそうだが、ネガが発見された63分バージョンでの上映にもマフマルバフ監督は「こういう所に皆が集まって文化の話をするのが大切であって、皆さんも友人や家族と話し合う機会を持ってほしい。話し合うことは脳のヘルシーフードだから」と日本初上映を喜んだ。

 17歳の時に刺傷事件で死刑判決を受け投獄されたが、5年後のイスラム革命によって釈放されたマフマルバフ監督。その経験が製作の大きな動機になったそうで、「5年で人々の心が変わったが、その10年後、バイク事故で倒れている人が路上にそのままにされているのを見て、なぜ人の心は変わりやすいのか、その変化はどこから生まれるのかと疑問を持った。人は互いに助け合う心を持たなければいけないのに」と訴えた。

 その上で、「映画は人の心を変えられる」と強調。韓国のセウォル号沈没事故のドキュメンタリー「ダイビング・ベル」を上映しようとした釜山国際映画祭に政府が圧力をかけたことを引き合いに出し、「結果を見てごらん。今の韓国は朴槿恵大統領がさまざまな問題を抱えているだろう」とニヤリ。自身もアフガン難民の識字・教育をテーマにしたドキュメンタリー「アフガン・アルファベット」(2002)を製作したことがきっかけで、イランの法律を変えた実績があり、「正直に気持ちを込めて作れば、人々の心にしみて変化を起こすことは可能だ。私も、黒澤(明)や小津(安二郎)の映画を見て、日本人の心を知ることができたのだから」と説き、大きな拍手を浴びていた。

 第17回東京フィルメックスは11月27日まで開催。