写真提供:マイナビニュース

写真拡大

『ハリー・ポッター』の映画シリーズ全8作をメガヒットさせ、同シリーズの新章『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(11月23日公開)も手掛けた名プロデューサー、デイビッド・ヘイマンにインタビュー。

『ハリー・ポッター』の原作者J.K.ローリングが初めて手がけた映画の脚本を、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(07)以降の後半4作を手掛けたデイビッド・イェーツ監督が映画化した『ファンタビ』。主演は『博士と彼女のセオリー』(14)のアカデミー賞俳優エディ・レッドメインだ。まさに鉄板ともいうべきドリームタッグだが、彼らを呼び寄せて1つのチームにしたのがデイビッド・ヘイマンだ。

エディ演じる風変わりな魔法動物学者ニュート・スキャマンダーと、魔法動物(ビースト)たちとのひと騒動を描く本作。冒険ファンタジーとしてのテンポも良いし、ニュートをはじめ、愛すべきキャラクターたちの魅力を余すところなくちりばめた丁寧な作りも素晴らしい。

これまでの輝ける功績は言うまでもないが、『ファンタビ』もすでに世界中で大ヒットを驀進中だ。一体デイビッド・ヘイマンはどんな信念の下で、世界中の映画ファンが熱狂する作品を生み出してきたのか。また、すでに話題沸騰となっている、あのビッグ・スターのキャスティングについても聞いてみた。

――エディ・レッドメインが、冒険ファンタジーで主演を務めると聞いた時、少し意外性を感じましたが、映画を観たら非常にハマっていてとてもチャーミングでした。

私は本作をファンタジーとは思ってなくて、むしろ真実であると思えることが大事だと考えています。もちろん俳優さんは素晴らしいイマジネーションをもっていて、実際にいろんなキャラクターを演じますよね。でも、彼らがそのキャラクターになった時、彼らの素の部分もどこかキャラクターに投影されると思っているんです。そういう意味で、ニュートは本当に1920年代に実在している英国人という感じがしました。

ニュートは本作の主人公ですが、よくある普通のヒーローらしからぬキャラクターです。人間がちょっと苦手で、どちらかというと動物といる方が心地良いという変わり者です。実際のエディはニュートよりも社交的だとは思いますが、そこの部分を彼は絶妙に演じてくれました。もちろんニュートのような人間を主人公にしたJ.K.ローリングさんもすごいと思っていますが。

――J.K.ローリングさんが映画の脚本を手がけるのは初めてでしたが、『ハリー・ポッター』シリーズではどの段階で脚本に目を通されていたんですか?

『ハリー・ポッター』の場合は脚本の中盤くらいで見せていました。当時の彼女は小説の執筆で忙しかったので。今回は最初から関わっていますが、『ハリー・ポッター』の時と同じように、プロデューサーの1人という立場からもいろいろとサポートしてくれました。

例えば今回は、ニュートがもつ魔法のトランクの内側のデザインについても、彼女の意見がかなり反映されています。ニュートはものすごい魔力をもつ魔法使いではないから、きっとトランクの中身もホームメイドで作れるようなものであるはずだと彼女に言われ、なるほどなあと思いました。

――ある重要な役柄で超大物スターが登場しますが、そのキャスティング理由についても聞かせてください。

彼をあの役にもってくるのは、素晴らしいアイデアだと思いました。あの役はアイコン的な俳優でないと負けてしまうと思っていたので、本当にベストだったなと。彼はこれまでにもいろんなアイコン的キャラクターを作り出してきた俳優だから、彼ならきっとできるだろうと私たちは確信していました。

――すでに『ファンタビ』が大ヒットしていますが、いつも映画を作る上で客層やマーケティングなどはどこまで意識されていますか?

僕が映画を作る上でいつも念頭においているのは、人のためではなく自分のために作ることです。まずは自分が観たいものを作ること。私はそうやってしか映画を作れませんし、もしも自分がそう感じられない作品なら絶対にうまくいかないとも思っています。

映画は何年もかけて作るもので、作っていく上でいろんな障害が生じます。自分が心から作りたいと思ってやっていかないと、それは単なる"商品"になってしまうんです。また、自分がいいと思ってないものを作ってしまったら、観客にもそういう思いがバレてしまうと思います。私が次から次へと映画を作っていけるのは、ただ単に自分が心から作りたいものを作っているからなんです。

――でも、それが超大作であればあるほど、そこにプレッシャーや怖さは生じませんか?

もちろん最初に取り掛かる時には怖さを感じますし、どうしようかと考えたりもします。やっていくうちに、もっと良くなる可能性があるとも思ってしまうし、もしかしてこの映画は失敗するんじゃないかと心配したりもします。やっぱり最終的な反応をもらえるまで、不安はつきものです。実際、私がコントロールできる部分は自分にとって楽しいものであり、自分が大事だと思えるものという部分だけで、観客の反応は自分の範疇外ですから。

――できあがった作品については、いつもどんなふうに向き合っているのですか?

作品に長く関わっていると、思い通りにいかない部分が出てきたり、逆に自分が想像したよりも良くなった部分が出てきたりします。幸い、デイビッド・イェーツ監督や主演のエディたちとはそういう意見交換ができる関係性です。今回1作目を作りましたが、この次もきっといっしょに仕事をすると思います。

――完成した映画をきちんと批評した上で、次へ進むということですね。

そうです。作った映画においては、自分たちが一番厳しい批評家であるべきなんです。その分析は、作りながらもやっていきます。デイビッド・イェーツ監督と組むのは今回で5作目だけど、お互いにエゴも何もなく、正直にものが言える関係なんです。作品を観た上で、次はここを改良したいとか、もっとより良いものにできるんじゃないかとか、そういう前向きな気持ちをもって次の作品に臨みます。そこが映画作りにおいてとても大事な部分で、そのことにすごくワクワクします。

――次の2作目にはもう入っているのですか? 全5作になると言われていますが。

はい。もちろん脚本は書き始めていますが、ちゃんと映画になるかどうかは1作目の結果次第ですね。オープニング成績がとても良かったからきっと2作目も作れるんじゃないかとは思っていますが、さらに良い映画を作っていきたいです。今後のストーリーについては、J.K.ローリングさんにしかわからないですよ(笑)。

――最後に、プロデューサーの仕事の醍醐味について教えてください。

私は毎日頰をつねっています。こういう仕事ができていることが夢じゃないかなと思っているので。しかもタダじゃなくてお金までもらえるんですから。いろんなクリエイティビティを毎日見られること、その瞬間の1つ1つが醍醐味です。

私はクリエイティブな人に囲まれて仕事をするのが本当に好きなんです。俳優さんは一生懸命役になりきり、プロダクションデザイナーはセットなどいろんなものを作っていき、コスチュームデザイナーはいろんな色の衣装を考えていく。500人くらいの人々がいろんな仕事をして、監督がすべてをまとめていく。私はそれこそが"魔法" だと思っていますし、その場にいられる私は本当に幸せ者です。

■プロフィール
デイビッド・ヘイマン
1961年7月26日、イギリス生まれの映画プロデューサー。1999年に『ハリー・ポッター』の映画化権を得て、全8作の映画シリーズを製作。その他のプロデュース作品は『アイ・アム・レジェンド』(07)や『イエスマン “YES”は人生のパスワード』(08)、『ゼロ・グラビティ』(13)など。
(C) 2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights (C) JKR.

(山崎伸子)