中国人観光客の日本での爆買いは1つの社会現象となっていたが、今年に入ってその衰えが目立つようになった。写真は海外商品を取り扱う中国・南京のショッピングセンター。

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2015年の新語・流行語大賞に選ばれた「爆買い」。中国人観光客の日本での爆買いは1つの社会現象となっていたが、今年に入ってその衰えが目立つようになった。これについて、日本の観光庁は「中国人観光客の消費パターンに変化が生じた。円高も爆買いの勢いが衰えた原因」と指摘する。実際のところ、中国人が海外の商品を購入するルートはますます増え、入手方法もより簡単になった。今では多くのネット通販業者が海外業務を展開し、世界の日用品が中国市場に押し寄せている。

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上海市、江蘇省、浙江省が形成する長江デルタは中国で経済が最も発達しているエリアだ。1人当たりの平均購買力も国内トップ。2015年末に江蘇省南京市にオープンした海外商品を取り扱うショッピングセンターは品質の高さと値段の安さを武器に、わずか2カ月で会員数2万人突破を実現した。店内には外国産の食品や日用品、家電製品など1万種類以上の商品が並ぶ。訪日中国人客に人気の粉ミルクやおむつ、化粧品もここで手に入れることができるのだ。

従来の流通モデルでは、海外の商品が中国の消費者の手に渡るまでに、海外の工場と輸出業者、国内の輸入業者、代理店、小売業者という「5つの関所」を通過する必要があった。しかし、このショッピングセンターの運営会社は上海、寧波(浙江省)の保税区や海外のメーカーと連携して商品を確保し、流通過程の中間部分をカット。市場価格より30〜50%安い値段で商品を消費者に提供しており、今後3年間で上海、南京、蘇州(江蘇省)、無錫(同)などに広さ3000〜5000平方メートルの「大型越境ショッピングセンター」を数十店舗設ける計画を立てている。さらに、コンビニエンスストア300店舗を長江デルタにオープンさせる考え。ネット通販利用者へのサービス向上のため、物流スピードを引き上げる戦略も打ち出している。

このような状況が示すように、中国人が家から一歩も出ずに世界中の商品を手に入れられる日がいずれやって来る。そうなると、訪日中国人客の爆買いは「歴史上の出来事」だ。日本を訪れる中国人観光客がお金を使う分野はかつての食事、ショッピング、観光、温泉からさまざまな方面へと広がっている。中国のポータルサイト・新浪が以前行った「日本で何をしたいですか?」と尋ねる調査では、花見、スキー、民宿体験などさまざまな意見が寄せられた。また、多くの若者から「アイドルのイベントに参加したい」との声が上がり、エステやそば打ちを挙げる人もいた。訪日中国人の関心は今まさに、ショッピングから自然、文化体験へと変わりつつあるのだ。日本の小売業界が中国人観光客の変化への対応を避けることは難しいだろう。

■筆者プロフィール:呂厳
4人家族の長男として文化大革命終了直前の中国江蘇省に生まれる。大学卒業まで日本と全く縁のない生活を過ごす。23歳の時に急な事情で来日し、日本の大学院を出たあと、そのまま日本企業に就職。メインはコンサルティング業だが、さまざまな業者の中国事業展開のコーディネートも行っている。1年のうち半分は中国に滞在するほど、日本と中国を行き来している。興味は映画鑑賞。好きな日本映画は小津安二郎監督の『晩春』、今村昌平監督の『楢山節考』など。