東京女子医科大学・皮膚科学教室講座主任 川島眞教授

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アンチエイジング医師団代表の塩谷信幸医師が理事長を務める、アンチエイジングネットワークが主催する「アンチエイジングセミナー2016」が、11月11日に東京国際フォーラムで開催された。

13回目となった今回のテーマは、「皮膚科医がこっそり教えるスキンケアの常識、非常識」。化粧品の効果やスキンケアの知識について、東京女子医科大学・皮膚科学教室講座主任川島眞教授らが、一般的には常識とされるさまざまな非常識を講演で取り上げた。

まずは正しいスキンケア、化粧から

そもそも皮膚や肌を若々しく保つというと、普段から当たり前のようにやっているスキンケアよりも、外科的な手法などのほうが効果的では、と考えてしまうかもしれない。しかし、塩谷医師は冒頭、「適切な化粧やスキンケアで満足できるなら、メスを使わないほうがいい」と語った。

「それでもカバーできていないと感じるようなら、まずはメスを使わないレーザーなどを。手術に踏み切るのは、最後の本当にやむを得ない手段であると考えています」(塩谷医師)

大切なのは、正しく適切なスキンケアや化粧をすることだが、皮膚科医から見ると驚くような非常識が、なぜか一般的な常識として受け入れられていると、川島教授は指摘する。

例えば、誰もが気にする「シミ」は、医学的に定義されたものではない。「そばかす」や「肝斑」「色素斑」、さまざまな母斑はもちろん、腫瘍やがんも含めて20種類以上の症状すべてがシミと一括りにされているのだ。

多くのシミは肝斑や日光性(老人性)色素斑であることが多いが、「ほくろのがん」ともよばれる「悪性黒色腫(メラノーマ)」を、単なる皮膚の黒ずみ、シミだと思い込む可能性もあり、たかがシミと馬鹿にもできない。

川島教授も、「シミに関する施術を受ける場合は、きちんとした診断ができる場所でなければ危険」だという。

では、そういったシミに効果が期待できそうに思える「美白化粧品」はどうだろうか。美白化粧品は、医薬部外品として売られている薬用化粧品だ。「アルブチン」や「ルシノール」「チロシナーゼ」など、各製品さまざまな美白成分を含んでおり、高い効果があるように思える。

白くなるわけではない美白化粧品、意味のないパッティング

美白成分というからには、その作用で実際にシミや黒ずみが消えるのでは、と考えている人もいるかもしれないが、これらの成分は、紫外線を受けて、表皮の下でメラニンを生成する「メラノサイト」の活性を抑制するものだ。

つまり、「日焼けなどによる新たなシミやそばかすの発生を防ぐ」効果は確認されているが、すでにあるものが消えるかは確認されていない。

「日光性色素斑やそばかすなどにはレーザー治療がとても有効です。ただし、肝斑に関してはまだ検証中の段階です」(川島教授)

化粧品関連でよく聞くキーワードといえば、「敏感肌」もそうだ。世の中には敏感肌だという人は多くいるが、この言葉も医学的な定義はなく、誰かが診断しているわけはない。

強いて言うなら、「バリア機能と保湿を担う角質層の機能が低下した肌」、いわゆる乾燥肌のことで、川島教授によると、代表的な例がアトピー性皮膚炎の肌だという。

「皮膚のうるおいは角質の水分量で決まり、表皮や真皮はほとんど関係ありません。私たちの研究では、特にセラミドで構成される角質細胞間脂質という物質が重要であることがわかってきました」(川島教授)

皮膚のうるおいと言えば、思い浮かぶのは化粧水などをパッティング(肌を手ではたく)で塗布する光景だ。

確かになんとなく「浸み込みそう」な気もするが、皮膚への物質の吸収度合は、その物質の分子量や濃度、油溶性か水溶性か、角層の状態などによって決まるため、塗り方で吸収量が変化することはない。

「化粧水の目的は角層に水分をあたえることで、そもそも浸み込ませる必要がありません。量はたっぷりのほうがいいかもしれませんが」(川島教授)

皮膚を叩いたりこすったり掻くという行為は、皮膚の炎症の原因ともなり、肝斑を悪化させる可能性もある。まったく意味もなく、デメリットしかないパッティングはやめたほうがよさそうだ。

アンチエイジング大賞2016受賞者も発表

川島教授の講演ではこの他にも、エイジングスタイルでも取り上げてきた、正しい日焼け止めの使い方や、「SPF」「PA」の意味、「オーガニックコスメはアンチエイジングにいいのか」「アレルギーやニキビの人は化粧品を使ってはいけないのか」といった、知っているようで知らないトピックも多数取り上げられた。

こうした化粧品や美容に関する知識を深めるため、川島教授が専務理事を務める日本コスメティック協会では、「コスメマイスター」「スキンケアマイスター」といった、さまざまな検定制度を用意しているという。

セミナーでは東京女子医科大学附属女性生涯健康センターの皮膚科医である、田中志保医師による紫外線や光老化に関する講演後、「第10回 アンチエイジング大賞2016」の受賞者も発表された。

「男性部門」は俳優の佐々木蔵之介さん(48)、「女性部門」は女優の斉藤由貴さん(50)が受賞し、協賛企業であるアンファー株式会社の「アンファー特別賞」には、リオオリンピックで男子柔道の監督を務めた井上康生さん(38)が選ばれた。

医師・専門家が監修「Aging Style」