松山ケンイチ×東出昌大、『聖の青春』を語る。「これは同じ志を持った者の純愛もの」

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 29歳でこの世を去った天才棋士・村山聖さんを描いた『聖の青春』が公開中です。

 聖さん役で主演の松山ケンイチさんと、村山さんのライバルで今も第一線で活躍する羽生善治さんを演じた東出昌大さんにインタビュー。松山さんが「燃え尽きた」と語るほどに力を注いだ作品へのふたりの熱が伝わってきました。

◆さらに先に行ける役を探していた(松山)

――松山さんは村山さんを演じるにあたり、ご自身でアプローチされたとか。

松山:ちょうど30代に入るタイミングで、自分のなかで全身全霊をかけて役を作りたい時期だったんです。限界を超えたところで見える景色を体験したかった。平清盛を演じた大河ドラマのときにもそういう経験はできましたが、さらに先に行ける役を探していた。それがまさにこの役だったんです。

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――東出さんはもともと羽生さんの大ファンで、劇中でつけている眼鏡は羽生さんのものだとか。

東出:羽生さんにお会いしたときに、「当時使われていたものを作ろうと思うんですけど」とお話ししたんです。その眼鏡をつけて生活したいなと思って。そしたら次にお会いしたときに、ブランドを思い出したとかではなく「家にあったので、さしあげます」とくださったんです。村山先生の遺品のネクタイを松山さんがつけていらしたように、また、劇中に出てくる村山さんの駒が実際に使われていた駒だったように、森(義隆)監督らしくドキュメンタリーになっているところが多分にあると思います。

◆殺し合いをする気で現場入り

――共演されていかがでしたか?

松山:東出さんに羽生さんをやっていただいて、本当に助かりました。将棋や羽生さんへの愛情をすごく持って現場に来てくれたので、とても影響されました。オーラとして出ていましたね。だから村山さんが羽生さんに抱いていたような憧れや尊敬やライバル心が素直に湧き上がりました。

東出:僕は事前に監督から、現場で松山さんと話をするなと言われていました。それから松山さんは僕より2週間先にクランクインしているので、現場は村山組になっているはずだと。そこに最強の異物として来いと言われました。現場では、村山さんがそうであったように、松山さんがみんなから愛され、みんなの中心に自然といました。だから僕はあの頃の羽生さんと同じように、殺し合いをするつもりで現場に入りました。

◆実際の対局を忠実に再現

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――対局のシーンで感じたことを教えてください。

松山:長回しのところは、お互いに1時間ずつの持ち時間で2時間ちょっとやったんですけど。

――実際に2時間以上、対局したんですか!?

松山:そうです。棋譜(将棋の対局での手順を記録したもの)自体はそれほど手数が多くはなくて、1時間ずつなくても指せちゃうんですけど、僕は1時間使いたかった。その時間をフルに使うことで生まれてくることがあるんじゃないかなと。

 撮影中は盤面にしか向いていないので、東出くんがどういう顔をしているかも分からないし、手だけで相手がどんな感じなのか見ている。そこで生まれてくるものを僕は待っていたし、もっともっと深いところを目指してたから、絶対に棋譜通りにやりたかった。やっぱりそれが会話になっているわけです。

「負けました」というセリフが一番難しくて。自分の全人生をかけてきたものの終着点といえるのがそこだから。でも最後にああいう「負けました」が出てきたのは、演技じゃなかったです。

――贅沢な撮影ですよね。

松山:はい。森監督ってすごいなと思いますよ。

東出:松山さんもおっしゃる通り、棋は対話なり。お互いに譲れないものがあの棋譜にあって、あのときのふたりにあった輝きだった。それを長回しで撮るというのを聞いたときは、そんな試みを役者としてできることがすごく嬉しかったし、僕は「もちろんです」とひとこと言っただけ。本当にかけがいのない、役者人生においてなかなか経験できない時間でした。

――村山さん、羽生さんを演じ終えた今の気持ちは?

松山:素晴らしい役に出会えたことに幸せを感じているし、感謝もしているけれど、まだ先に進めないんですよね。燃え尽きちゃったところがある。でもこれから先も役者をやらせていただくし、どこかで戻していかなきゃいけない。村山さんという役も自分の中で切り落としていかなきゃいけない。たぶん公開が終わってからそうなっていくのかな。

 今回、僕自身、いろいろなものをもらいました。自分自身の人生を大事にしよう、この限りある人生をと。観客の方にはラブストーリーとして観ていただければと思います。いわゆる男女の恋愛とか、同性愛の恋愛ではないですけど、同じ志を持った者の純愛ものです。

東出:役者という仕事を今後も続けていくうえで光明が見えた。役者という仕事は……言葉にならないんですけど……。こんな言葉にならない宝物みたいなものを得られる瞬間がある仕事なんだと実感しました。そして今後もそれを塗り替えていかないと、と思っています。

<TEXT&PHOTO/望月ふみ>

『聖の青春』は11月19日より全国公開
配給:KADOKAWA
(C)2016「聖の青春」製作委員会