「Thinkstock」より

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 今夏終わり頃に突如として巻き起こった、米ツイッターの身売り騒動。

 売却先候補にはグーグルやマイクロソフトといったIT業界の一流企業だけではなく、エンターテインメント事業を核とするウォルト・ディズニーや、クラウドサービス大手のセールスフォース・ドットコムなど、名だたる企業が名乗りを上げていた。

 その買収額は200億ドル超ともいわれたが、10月末には興味を示していたすべての企業が買収交渉から撤退すると報じられ、ツイッターの株価が急落するといった事態が起きた。

 しかし、日本においてはツイッターといえば、フェイスブックやインスタグラムと並び、SNSの代名詞的存在でもある。そんなツイッターが、なぜ身売りをしなければいけない事態に陥っているのか。

 株式会社office ZERO-STYLE代表取締役であり、ウェブサイト「ネットメディア攻略研究所」を運営している落合正和氏に、ツイッター苦戦の理由と今後の動きについて話を聞いた。

●海外ではイメージ悪化

「ツイッターには現在、全世界で約3億2千万人のアクティブユーザーがいるといわれています。そのなかで日本のアクティブユーザー数が約4000万人。人口比率から見てみると、日本人の約3人に1人がアカウントを持っている計算になりますし、これだけのユーザー数を持っている国は世界中を見渡しても希有です。

 しかし、世界的に見てみるとフェイスブックのアクティブユーザー数は約17億人、さらにはその傘下のインスタグラムでも5億人とユーザー数では圧倒的に差をつけられています。また、SNSの新興勢力として海外のティーンエイジャーに人気のスナップチャットという動画共有型SNSにさえ、ツイッターは一日のアクティブユーザー数で抜かれてしまったという情報もあります。

 このように日本では人気であっても海外では圧倒的な劣勢に陥っており、収益もずっと赤字のまま。ツイッターの身売り話が出た理由は単純で、収益が伴っていないから、ということに尽きるのです」(落合氏)

 3億人のアクティブユーザーを抱えていながら利益をあげられていないのはなぜなのだろう。

「“商機を逸した”というのが主な理由のひとつです。ツイッターやフェイスブックなどのSNSは広告収入がメインの収益になるのですが、ツイッターは勢いが高まっていたタイミングで広告をほとんど取れなかった、ということが致命的でした。

 5〜7年前にはツイッターと互角の争いをしていたフェイスブックは、勢いが一番増したタイミングで広告フィードを表示するようにして一気に莫大な利益をあげられる仕組みに移行できたのですが、ツイッターが広告フィードを表示するようにしたのはアカウント数が伸び悩み、ユーザーもそれに気づいている状態になってからの話。そういった人気が停滞している状況のSNSに広告を入れようと思うスポンサーは少なかったのです。

 それにツイッターは海外ではヘイトコンテンツが多いと認知されているのも、広告が集まりにくくなり、収益につながらなかったポイントです。日本での2ちゃんねるのように、海外では匿名で好き勝手なことを言いたい放題つぶやく場所という使われ方をされており、さらにはISのようなテロ組織のアカウントも存在していてイメージが悪すぎる。そのため、スポンサーもなかなか広告を入れづらい、というのが実情なのでしょう。

 ディズニーが買収から撤退したのは、そういったヘイトコンテンツの多さをネガティブな材料として見過ごせなかったからだ、といわれています。セールスフォースも企業向けの商品を販売しているお堅い企業ですから、好き勝手に匿名で情報を発信できるツイッターを本腰を入れて買収しようとまでは思っていなかったのではないかと推測しています。

 もちろんツイッター側も、ヘイトコンテンツなどにまったく対策をしてこなかったわけではないのですが、企業イメージを覆すには十分ではなかった、ということでしょう」(同)

●ワンテンポ遅い

 ツイッターのダメな部分はほかにも多くある、と落合氏は語る。

「現在、フルサービスのSNSとしては、フェイスブックがユーザーの求めるものにすべて応えられているという状況で、文字数制限のあるツイッターは使いづらいという印象をユーザーに与えてしまっています。

 また、インスタグラムやスナップチャットのような画像や動画といったリッチメディアを使ったSNSが出てきたとき、LINEやSNOWといったメッセンジャーアプリがはやったとき、そのときどきでツイッターも似たようなサービスや機能をすぐに提供すればいいものの、対応が後手に回ってしまった、という歴史もあります。

 たとえば世界的にユーチューバーが最盛期を迎えていたのが2年前なのに対して、ツイッターのタイムライン上でユーチューブの動画を見られるようになったのが1年前。それに現在もインスタグラムの画像をツイッターにリンクさせても、タイムラインに画像が表示されるようにはなっていません。このような例はほかにも多く存在し、ツイッターは他のSNSやサービスとの連動、広告展開などすべてにおいてワンテンポ遅いんです。

 結局、ツイッターにある機能はほとんどのSNSで制限なしで利用可能となっています。これではユーザーが離れていってしまうのも当たり前というもの。今までツイッターを利用していた海外セレブなどのインフルエンサーも、どんどん後発のSNSに乗り換えていってしまっています。そんなサービスに200億ドル超ともいわれている買収額を出す会社がなかったというのが、この買収劇の顛末でしょう」(同)

 ツイッターは全社員の8%にあたる300人のリストラを検討中だと発表しているが、「その程度のコストカットでは焼け石に水」と落合氏は続ける。

「正直、ツイッターがかつての勢いを取り戻すのは、よっぽど画期的な新サービスの実装やイノベーションが起こらなければありえません。これには莫大なコストもかかりますから、買収側の企業がこれを嫌がった、という部分もあるでしょう。

 しかし、日本では“テレビをツイッターで実況しながら見る”といった新しい使われ方をしていて、ツイッターのCEO(最高経営責任者)であるジャック・ドーシーもこのことを認めています。それもあってツイッターは2011年、日本法人を立ち上げ、日本での使われ方を世界に発信するような取り組みも行っています。

 もともとツイッターの文字数制限は日本語との親和性が高く、日本人の感性ともフィットしています。もしも今後、買収額がどんどん下がっていけば日本企業がツイッターを買収できる可能性もあるかもしれません。そうなったときには日本発のSNSとして新たな使われ方が発見されて、ツイッターが存続する道も見つかるかもしれませんね」(同)

 今なおツイッターユーザーが数多くいる日本としては、サービスの存続を願わずにはいられない。
(文=牛嶋健/A4studio)