富士通本社が所在する汐留シティセンター(「Wikipedia」より)

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 富士通は、ようやく長年の懸案だったニフティの事業見直しに手をつける。ニフティはインターネット接続事業の老舗だ。パソコンとインターネットの普及期に会員数を増やし、かつては富士通の顔だった。2016年3月時点で134万人のブロードバンド接続会員を抱える。

 しかし、スマートフォン全盛の時代になり、その勢いは急激に衰えた。16年3月期の売上高は668億円と過去5年間で3割以上減った。そこで、将来、大きな成長が見込めない固定回線を利用したネット接続サービス事業から撤退することにしたのだ。その前段として7月、東京証券取引所2部に上場していたニフティを113億円でTOB(株式公開買い付け)を実施、完全子会社にした。

 そして10月、ニフティの企業向けクラウドサービス事業は本体に取り込み、個人向けネット接続事業を売却する手続きに入った。KDDIや伊藤忠商事、オリックス、丸紅などが応札すると報じられている。

●泥沼のお家騒動の火種となったニフティ

 ニフティは、富士通にとって鬼門だ。ニフティの売却問題が富士通を揺るがすお家騒動の発火点となったこともある。

 09年9月、当時の野副州旦社長は病気療養を理由に社長を辞任した。ところが、年が明けた10年に野副氏は記者会見を開き、「捏造された理由で、密室で解任された」と舞台裏をぶちまけた。

 故秋草直之取締役相談役(当時)が、間塚道義会長らとともに野副氏に「社長として適切でない」と迫り、辞任に追い込まれたと明らかにしたのだ。

 その抗争の火種となったのが、ニフティの再編問題だった。お荷物となっていたニフティの売却の話は、再三浮上しては立ち消えになっていた。野副氏は09年7月、投資ファンドを介してニフティの売却に動き出し、秋草氏の逆鱗に触れた。

 10年3月、富士通は、信頼関係が失われたとして野副氏を相談役から解任。同年3月24日、秋草氏も取締役を退任した。最高実力者として君臨してきた秋草氏は、野副氏の捨て身の反撃に遭い富士通を去った。

 今回、ニフティの売却で過去のしがらみに決着をつけ、人工知能(AI)など新技術を生かした企業向けサービスで成長軌道に乗せる考えだ。だが、企業向けクラウドサービスは米グーグルや米アマゾンといった新興勢力もこぞって参入しており、いわば群雄割拠の状態。富士通はマイクロソフトと組んでグローバル展開のシナリオを描く。

 9月、メールや内線電話、情報共有サイトなどの社内コミュニケーション基盤として米マイクロソフト(MS)のクラウドサービス「オフィス365」を全面的に導入すると発表した。富士通グループの世界16万人の従業員が対象で、17年3月から順次利用を始める。世界最大規模の導入事例となる。

 富士通はオフィス365と独自ソフトを組み合わせて外販。19年3月期に年間500億円の売り上げを目指す。

●IoT関連投資が増え、業績はV字回復

 IT(情報技術)業界では「IoT」という名の革命が進行中だ。IoT はInternet of Thingsの略で、あらゆるモノをインターネットに接続することで新しいサービスや製品の開発につなげる。「クラウド元年」と呼ばれた10年から6年。次のステップとしてIoTに注目が集まる。

 ITサービス、サーバーで国内首位の富士通は、個人向け事業を切り離す一方、クラウドサービスやIoTなどの新しい技術分野に投資を集中する。

 成果が問われたのが16年4〜9月期決算だった。売上高は前年同期比7%減の2兆850億円と減収だが、営業損益段階で258億円の黒字。前年同期は構造改革費用を計上して124億円の赤字だったが黒字に転換した。最終損益は118億円の黒字(前年同期は159億円の赤字)と、V字回復を果たした。

 田中達也社長は1月、クラウドサービス関連の開発投資に、16年3月からの3年間で1000億円を投じ、海外展開や機能強化を進めることを明らかにした。クラウドへの移行が進むと、富士通の稼ぎ頭のサーバーなどIT機器の販売が減る。クラウド関連の投資拡大によって、IT機器の販売が減少するのを下支えする。15年3月期に2400億円だったクラウド関連事業の売り上げを、18年同期に国内4000億円、海外1000億円に増やす計画だ。

●カーナビとパソコン事業は切り離す

 個人向け事業は切り離す。9月、カーナビゲーションを手がける富士通テンをデンソーに売却することを決めた。富士通テンは国内カーナビ市場でシェア第3位。直近の売上高は3600億円と富士通の売り上げの1割弱を占める。

 デンソーが富士通の保有株式を数百億円で買い取る。現在の出資比率は富士通が55%、トヨタ自動車が35%、デンソーが10%だが、売却後はデンソーが51%、富士通が14%となり、トヨタの出資比率は変わらない。17年度前半に売却手続きは完了する。

 販売不振が続いていたパソコン事業に関して、中国レノボとの提携を正式に発表した。パソコン事業はレノボ・グループの傘下に入り、富士通は連結決算から切り離す。
(文=編集部)