試合後の取材エリアに姿を見せると、レスター・シティの岡崎慎司は開口一番、次のように語り始めた。

「(今)自分は開き直っていて。代表に行っても感じていたことで、最近(レスターの試合で前半の)45分で交代させられたりもしましたけど、ちょっとチャレンジしてみようかなと。足もとでパスを受ける意識が強すぎて、自分の特徴である裏への飛び出しで勝負することが少なかった。『今日はそっちで勝負しようかな』と思っていた。

 自分のやりたいようにやってみようと。最近、感覚的にサッカーをやることがあんまりなかった。もちろん、守備もちゃんとやります。でも、このタイミングでゴールを獲り出したら、今まで『チームありき』と考えていた自分を変えられる可能性が出てくる。だから、そっちで勝負していこうかなと」

 11月19日に行なわれた第12節・ワトフォード対レスター戦。2トップの一角として先発した岡崎は、そんな決意を胸にピッチに入ったという。意識の変化は、試合序盤のポジション取りにも表れていた。これまでなら、2トップでコンビを組むFWジェイミー・バーディーのやや後方で、彼を支えながら走り回っていたが、この試合の序盤は、フラットに並んでパスを求めるシーンが多かった。岡崎も語る。

「(バーディーと)同じラインにいてもいいかなって。(※両手で振り子の仕草をしながら)バーディーを下げて、俺が裏へ抜けるみたいな。(FWイスラム・)スリマニや(FWアーメド・)ムサが加入して、自分のやれることを探しすぎていた。だから、裏に抜けるところで勝負するのをちょっと止めていた部分もあったんです。でも、今日はそこにトライして、俺なりのチャレンジをした。そういう決意を持って試合に入りました。迷いはなかったです」

 ほかにも、意識していたプレーがあるという。たとえば、MFのリヤド・マフレズがボールを持つと、これまでの岡崎なら近くに寄っていき、彼のワンツー突破を手助けした。しかしこの試合では、DFラインの背後のスペースに走り出し、マフレズからスルーパスを引き出そうとした。チームを機能させる"潤滑油"の役割から、自ら攻撃を仕掛ける起爆剤に――。「勝負する」(岡崎)ことをテーマに、この試合に臨んだという。

 しかしチームは、前半12分までに2つのゴールを許して劣勢に。岡崎の縦パスからバーディーがPKを奪ってすぐに1点を返したものの、苦しい展開は変わらなかった。基本型の「3−4−2−1」から守備時に5バックへ変形するワトフォードのディフェンスを前に、レスターは攻撃のスペースを見つけられなかった。

 スペースがないうえに、レスターに優れたパサーもいないことから、岡崎は徐々に位置取りを下げていく。PKを誘った縦パスではゴールにつなげたが、その後は得点に直結する危険なプレーを見せられなかった。日本代表FWは68分で交代。チームも1−2で敗れた。

 今季の岡崎を振り返ると、極めて微妙な立ち位置にいる。シーズン序盤はスリマニの加入を機に出場機会が激減。ベンチを温め続けたが、チームパフォーマンスが振るわないことから、第9節のクリスタル・パレス戦で先発に復帰した。この試合で1ゴールを記録。しかし第11節のWBA戦は、前半だけで交代を命じられた。岡崎のプレー内容は悪くなく、チームがうまく機能しなかったことが交代の理由だった。

 チームプレーがかんばしくないことから先発に復帰できた一方、本人のプレー内容に関わらず、チームパフォーマンスが悪ければ真っ先に交代を命じられる。ここが岡崎の抱えるジレンマだが、「チームを助けるプレーをやっていても、(監督の)評価を取りにいっているみたいで。それじゃ自分のポイントじゃない」と悟ったという。

「どちらかと言うと、『チームのリズムを作ってから』というプレーが多かったですけど、自分のよさはそこだけではない。もうひとつの自分のよさである、(相手DFの背後へ)抜け出すところで勝負していこうと。『やっていこう!』みたいな感じですね」

「開き直る」ようになった背景には、もうひとつ大きな理由がある。11月の日本代表戦だ。11日の強化試合オマーン戦は、途中交代で約30分の出場。15日のサウジアラビアとのW杯アジア最終予選では、後半ロスタイムから約1分間の出番で終えた。そして、1トップとして大迫勇也(1FCケルン)が台頭――。レギュラーの座が揺らぎ始めたが、「代表はいい刺激でした」と言う。

 ここで岡崎が口にしたのが、ブラジルW杯だった。

「(ブラジルW杯前のことを)思い返すと、(代表には)パサーがいるから、俺が何も考えなくても走ったらそこにボールが出てきた。でも結局、W杯でパスの出どころを潰されると、俺は何もできなかった。そこで、『高いレベルであっても、周りを生かせるような存在にならないと、W杯では活躍できない』って思うようになった」

 プレミアリーグに挑戦することを決めた最大の理由は、いかにストライカーとして進化するか、ということにあった。劣勢に陥っても、自らのゴールでチームを救う。ストライカーの嗅覚を発揮し、得点を量産する。その答えを見つけるために、「個の力が化け物みたいな奴がたくさんいる」(岡崎)プレミアへの移籍を決めた。

 しかし代表戦では、「1トップをずっとやってきましたけど、『チームを生かすように』とか考えて、あまり感覚的にやってなかった。代表では、ここ何年か思いきってやっていないなと思った」と言う。そしてもちろん、大迫の成長にも刺激を受けたのだろう。だからこそ今、ストライカーとして原点に立ち戻ろうと決意した。

 岡崎が明かした意識の変化は、この試合では実を結ばなかった。しかし、こうした変化は、たとえ小さなものであっても、やがて大きな成果を生む原動力となる。

「(レスターで)本来の目的を目指していこうかなと。それを無我夢中でやってみようかなと」

 これまで数々の試練や苦難を糧(かて)に変えてきた、実に岡崎らしい言葉だった。

田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke