19日にソウルで行われた朴槿恵大統領の辞任を求める集会には主催者発表で60万人が参加した。また、釜山で開かれた集会には、野党「共に民主党」のムン・ジェイン代表が参加したこともあり、史上最高となる10万人が参加した。

脱北して間もない北朝鮮出身の人々にとって、こうしたデモや集会は民主主義の生きた教材となっている。

ハナ院(脱北者の教育施設)を出てから半年しかたっていないチェ・ユシンさん(仮名)の目に、集会はとても特別に映ったようだ。

「北朝鮮にいた頃は、非常に親しい友達同士で金正恩党委員長のことを『デブ』と呼ぶのが関の山だった。国民が公の場で、最高指導者に向かって『辞任せよ』と言えることにとても驚かされた。最高指導者と言えども、誤ちを犯せば責任を追わなければならないということと、国民こそが国の真のあるじだということを強く感じた」

一方でチェさんは、集会に参加し、政権批判を行うことについて戸惑いとためらいを見せている。

「(126万人が参加した)12日の集会にも参加したかったが『捕まったらどうしよう』『写真を撮られたら北朝鮮の家族に害が及ぶかもしれない』と思い、怖くて行けなかった」

チェさんと共に集会に参加したカン・ユラさん(仮名)は、集会を評価しつつも、まだ少し距離感を覚えるようだ。

「韓国にやってきてから昨日が一番驚かされた日だった。まだよくわからないが、民主主義を守ろうとする情熱がすごかった。そういう気持ちが心の底から理解できるようになりたい」

このように、韓国にやって来たばかりの脱北者にとって、政治的なデモや集会は、中々理解しがたいことのようだ。

韓国にやって来てほぼ10年のキム・ピルチュさん(31)は語る。

「韓国に来たばかりの頃は、集会やデモをなぜやるのか理解できなかった。反政府行為を放置するのが民主主義なのかと思ったぐらいだ」

「指導者が過ちを犯したことに国民が怒りを表出できるということが、韓国が健全な社会であるということを示していると思った」

平安道出身で2014年に脱北したヤンさんは語る。

「韓国で生まれ育った人にはわからないだろうけど、私は『ああ、民主主義ってこういうものなのか』と実感しています。北朝鮮ではデモをやることなんて考えすらできません。捕まったら連座制で一家全員が処罰されます。ましてや最高指導者に対するデモなんて恐ろしくて…。韓国のデモが不思議でもあります」