「Thinkstock」より

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 昨今、「空き家」が社会問題化し、すでに2015年2月26日から「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されています。ここで言う「空家等」とは、「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)」と定義されています。

 簡単に要約すると、「人が住まなくなった家」ということになるでしょうか。同法では、「特定空家等」に指定されると、その所有者に行政から「指導→勧告→命令→代執行」といった措置がなされます。この指導や勧告は、「その空き家を適正に管理しなさい」という趣旨です。また、特定空家等に指定されると、固定資産税の優遇措置が外され、更地と同じ税金が課されるため、実質的に増税となります。

 政府が想定している空き家は、もともと住んでいた方が高齢化して施設や老人ホームへ入居、あるいは他界されるなどして自宅が放置されたもののようです。

 一方、不動産業界、特に賃貸住宅を主体とする不動産に携わる者からすると、増えすぎた賃貸住宅の空き家も、いずれ社会問題化し、賃貸住宅の建築に規制がかかることが想定されるため、将来を危惧しています。

 ここ最近は、特に為替や株価といった金融情勢が不安定なこともあり、現物投資である不動産投資も人気で、その需要に応じるように賃貸住宅が建設されています。加えて、2015年から相続税の基礎控除額が従来の60%に減額されるなど、相続税が実質増税となったこともあり、相続対策としての不動産活用から土地を所有するオーナーも賃貸住宅を相当数建設しています。

 すでに世帯数を上回る数の賃貸住宅があるにもかかわらず、新たな賃貸住宅が勢いよく建設されています。そうした賃貸住宅のなかには、賃貸需要は二の次にして建てられた賃貸住宅も出てきます。

●需要がなくても賃貸住宅を建設

 ここで、賃貸住宅の空き家が今の空き家問題の上乗せになるのではないかと心配になる事例を紹介します。

 小田急線沿線の神奈川県内に建てられたある賃貸住宅は、今年4月に完成した新築物件で、8世帯のワンルームアパートです。最寄り駅から徒歩12分の距離にあり、建物の外観や部屋の広さ、設備はほかのアパートと比べて特に見劣りするところはなく、家賃も相場から見れば安い設定となっています。それにもかかわらず、すでに7カ月たった今でも1件も入居者がないのです。周辺の不動産会社への営業はもちろん行っており、賃料交渉も可能な状態で、さらにさまざまなオプションも添えて募集しても入居希望者の見学すらない状態です。

 これは、建物の良し悪し、募集の時期や賃料設定が悪いといった問題ではなく、そもそも「その地域に少なくともワンルームの需要がない」ことの表れだと思われます。

 こうした新築でも長い間入居者がない物件が全国には相当数あり、もっと条件の悪い賃貸住宅、たとえば駅から遠い、築年が古いといった物件の空き家は膨大な数になります。以前からこうした賃貸住宅が飽和状態であることは指摘されていますが、そうしたなかで、前述したようにさらに多くの賃貸住宅がつくられているのです。

 前出の賃貸アパートの並びには、また新たにアパートが2棟建築中で、需要に関係なく賃貸住宅が建てられる状況がよくわかります。これは、立地によってはすでに「賃貸という土地活用の限界」が表れているといえます。

 自宅が放置されている空き家問題も、賃貸住宅の空き家問題も、“立地”が不動産の生命線であることを痛感させられます。

 これから自宅を購入する方も、不動産投資で賃貸住宅を購入する方も、こうした空き家問題は、今後自分にも降りかかるおそれがあると覚えておくべきでしょう。不動産の購入にあたっては、極めて慎重に立地を選ばなければなりません。場合によっては、「購入しない」という選択をすることも重要です。
(文=秋津智幸/不動産コンサルタント)