被災地に映画を届ける思いをアツく語る齊藤工

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 俳優・斎藤工が発案し、映画監督などのアーティスト名「齊藤工」として活動している移動映画館プロジェクトの第4弾「cinema bird(移動映画館) in 福島2016」が19日、福島県南相馬市の県立原町高等学校で開催された。MCには宮城県仙台出身のお笑いコンビ・サンドウィッチマン、ゲストに福島県東白川郡出身のあばれる君や齊藤の友人でもある芸人・永野なども参加し、この日一日、地元住民計900人と触れ合った。

 同プロジェクトは、父親が映像制作会社に勤務していた影響で映画を観て育ち、そこから世界を学んだという齊藤が、劇場体験の少ない子どもたちや映画館のない地域の人たちに「同じ空間で感動を共有する大切さを伝えたい」と2014年に始動。cinema bird(シネマバード)の名前には、「鳥のように自由に届けたい」という願いが込められている。

 これまで宮城県石巻、福島県双葉郡、大分県豊後大野市といずれも東日本大震災や福島第一原発事故、熊本地震と、いまだに震災の影響が残る地域で開催。今回の南相馬では今もなお仮設住宅での生活を余儀なくされている人たちが暮らしており、上映の合間にはサンドウィッチマンや永野たちと連れ立って、会場に隣接する牛越仮設住宅を訪問する一幕もあった。

 イベントは3部構成で入れ替え制。上映作品のセレクションに齊藤が携わり、こだわりが見られる。1部の親子対象向けにネイチャー・ドキュメンタリー映画『シーズンズ 2万年の地球旅行』(2015)、2部は行定勲監督、橋本愛らオール熊本出身者が熊本で撮影した『うつくしいひと』(2016)、そして差別や偏見をテーマにし、公開当時齊藤が大絶賛していた『チョコレートドーナツ』(2012)の3本。

 中でも、熊本復興支援のチャリティー上映を各地で行った『うつくしいひと』には、「今回、南相馬で上映することに熊本の皆さんも喜んでくれている。映画を通して、福島と熊本の皆さんが映画でつながれば」という齊藤の思いが込められている。上映前には出演者の高良健吾からのビデオメッセージが流され「映画を観たおばちゃんから、『美しい熊本を残してくれて本当にありがとう』と言っていただいた。映画の力に改めて気付かされました」と思いのこもったコメントが届けられた。

 上映後には齊藤自らマイクを持ち、客席に降りて感想を尋ねるシーンもあった。『シーズンズ 2万年の地球旅行』は多数の動物が登場しているにも関わらず、子どもたちに印象に残った動物を質問したところ口々に「犬」と答えて大笑い。『うつくしいひと』では「熊本に行ってみたくなりました」という声もあった。

 齊藤は「きっといつか、『皆でこういう映画を観たね』とか『こんなことがあったね』というのが思い出になると思います。僕らも映画を届けに来ただけでなく、皆さんとこういう空間を作れたことを思い出として持って帰りたい」と観客に語りかけた。

 子どもを連れて参加した南相馬市在住の主婦は「子どもの学校の関係もあるので震災後も南相馬に残りましたが、普段、映画を観るには宮城県の名取まで車で約1時間かかります。震災直後はこうした巡回上映も結構あったのですが最近は少なくなりましたし、まして芸能人が来てくれるなんて」と、上映後に観客全員にふるまわれた「博多もつ鍋 いっぱち」特製のもつちゃんぽんに舌鼓を打ちながら、笑顔を見せていた。

 次回の開催はまだ未定だが、問い合わせも多数届いているそうで、継続した活動を続けていくという。(取材・文:中山治美)