<トランプのネガティブな報道を流し続けた主要なマスメディア、そしてその報道を逆手にとることで支持を得たトランプ。ポピュリズムが席巻する時代のメディアの役割が問われている>

メディアが犯した失態は結果予測の誤りだけではない

 アメリカ大統領選でのトランプの勝利は、従来型メディアの問題点に焦点を当てた。事前の結果予測においては、ほとんどのメディアでクリントン優位が伝えられていたにもかかわらず、結果はメディアが報じていたものとはまったく異なるものだったからだ。

 共和党と民主党の支持が拮抗した6つの「スウィング・ステート」において、メディアは有権者の投票行動を見誤っていた。アイオワ、フロリダ、オハイオといったこれらのスウィング・ステートでは事前にクリントンの勝利が確実視されていたにもかかわらず、蓋を開けてみればすべての州でトランプの支持がクリントンのそれを上回っていた。

 今回の選挙でメディアが犯した失態は結果予測の誤りだけではない。選挙期間を通じて、主要なマスメディアの多くはクリントン支持を表明し、トランプのネガティブな報道を連日流し続けた。その結果、ジャーナリズムに必要とされる「公平性」「中立性」が失われ、有権者からの信頼を損ねることにつながった。

 Investor's Business Daily/TIPP Pollが9月におこなったリサーチによれば、有権者の67%がメディアの報道は不正確でバイアスがあると感じており、クリントンに有利な報道がされていると感じている有権者の数は50%にのぼった。メディアがクリントンに対して「厳しすぎる」と感じた有権者は16%にすぎなかった。

 逆に、トランプは、この表層的な発言をあげつらった「スキャンダル化された」報道を逆手にとることで支持を得た。トランプは自分のスキャンダルや暴言を連日伝えるメディアによって十分な注目を浴びることに成功し、かつ既存のメディアは「腐敗した政治エリート側に付いて真実を隠し、プロパガンダを流している」と糾弾することで、自分はソーシャルメディアを使って、「真実」を伝えている、という物語をつくることに成功した。


「CNNは最悪だー彼らが如何に偏っているかみんなわかっているから、悪評を得ているところが不幸中の幸いだ」

 このような傾向は世界的なポピュリスト政治家の台頭にも当てはまる。現在ヨーロッパとアメリカで席巻しているポピュリストの共通点は、その多くがメディアをバッシングすることで人気を得た、という点にある。彼らはメディアを、政治エリートに都合の良い事実しか報道せず、本当の「民意」を報道していないと語り、投票によって「民意」を示そう、と語りかける。
 
 トランプの勝利を受けて、来春のフランス大統領選挙への立候補を表明している右翼のポピュリスト政治家ルペンは以下のようにツイートした。


「新アメリカ合衆国大統領となったドナルド・トランプ氏と、自由なアメリカ市民へ、おめでとう!」

Rio Nishiyama