【福田正博 フォーメーション進化論】

 日本代表はW杯アジア最終予選のサウジアラビア戦を2−1で勝利。勝ち点を10に伸ばし、前半戦をグループ2位で折り返すことができた。初戦でUAEに敗れたことから続いた重苦しい状況も、結果的に見れば、日本代表が競争原理の働くチームへ生まれ変わるきっかけになったといえる。

 ハリルホジッチ監督は本田圭佑、香川真司、岡崎慎司といった、これまで日本代表を支えてきた3選手を揃ってサウジアラビア戦のスタメンから外すことを決断。そして、彼らに代わって起用された選手たちがしっかりと結果を残し、そのことがチーム全体の新陳代謝と活性化につながった。

 トップ下で起用された清武弘嗣と、左サイドMFの原口元気は、これまでW杯最終予選で見せてきたパフォーマンスを、サウジアラビア戦でも発揮した。清武はスペースへ上手く走り込みながら、素早いパスワークで攻撃にリズムを生み出していた。

 原口は積極的な仕掛けと豊富な運動量で攻守にわたって貢献し、公式戦4戦連続となるゴールも決めた。原口の勝利を求める貪欲な姿勢と、不器用なまでの全力プレーは、日本代表に躍動感をもたらすだけではなく、スタジアム全体を期待感で溢れさせている。その存在感は代表に欠かせないものになりつつある。

 1年5カ月ぶりの代表招集となった大迫勇也は、サウジアラビア戦ではゴールこそ決められなかったものの、1トップとしてポストプレーで攻撃の起点となり、期待どおりのプレーをしてくれた。

 ハリルホジッチ監督の目指す縦に速いサッカーでは、1トップの役割が大きい。シュートを決めることはもちろん、前線でボールをおさめ、2列目以降の選手たちがゴール前に走り込む時間を作ることもFWに求められる。こうした役割を、大迫はポストプレーでのボールキープ力を生かして十分に果たした。

 ボールキープだけを考えるなら、本田を1トップに起用する策もある。本田も高いレベルでポストプレーのできる技術とフィジカルの強さを持っているし、実際、オーストラリア戦では1トップに起用された。ただし、ポストプレー以外にもDFラインとの駆け引きや豊富なシュートバリエーションなど、FWに求められる能力をオールラウンドに備えている大迫のほうが1トップとして適任だろう。その大迫が久しぶりの代表招集でいいパフォーマンスを見せたことは、今後のW杯最終予選を考えると大きな意義を持つはずだ。

 日本代表を再浮上させた原動力の原口、清武、大迫の3選手に共通しているのは、まだ日本代表として何も成し遂げていないということ。「ロンドン五輪世代」の彼らは、これまで常にひとつ上の本田や長友佑都、岡崎ら「北京五輪世代」の陰に隠れてきた。それだけに「次のW杯ロシア大会では、主軸として自分の力を証明したい」という強い覚悟や渇望感が、プレーに表れているように感じる。

 また、久保裕也や浅野拓磨ら「リオ五輪世代」にも期待をしたい。サウジアラビア戦で本田に代わって右サイドMFで先発した久保は、残念ながら試合中に負ったケガの影響で本来の力を発揮できずに前半で交代となった。ようやく訪れた日本代表初先発の機会だっただけに、どんなプレーをしてくれるのかもっと見たかったが、日本代表の世代交代を推し進める存在になる可能性を秘めた選手だけに、次のチャンスに備えてほしい。

 世代交代が停滞していた日本代表が転換期にさしかかっているといえるが、このまま本田、岡崎、香川がレギュラーポジションを追われたままになることはないだろう。彼らにしてみれば、常時所属クラブで試合に出場するようになるか、あるいは移籍をして、コンディションやパフォーマンスを取り戻して、再び先発で、という思いは強いはずだ。

 本田や岡崎、香川に限らず、宇佐美貴史など、所属クラブで出場機会のない選手たちが本来の輝きを取り戻せれば、日本代表の競争はさらに熾烈なものになり、チーム力が向上していくことになる。今回のサウジアラビア戦でのハリルホジッチ監督の決断は、彼らが移籍先を本気で探す契機になったのではないだろうか。

 攻撃陣に対し、不安が拭えないのが守備陣だ。最終予選で無失点に抑えた試合はまだなく、センターバックの森重真人と吉田麻也のバックアップに目を向けると、植田直通、岩波拓也、昌子源と人材はいるものの、代表での試合経験がまだ乏しく安泰とは言い難い。ミスの許されないポジションだけに、W杯最終予選という重圧のかかる試合で実力を発揮できるかは未知数な部分が多い。

 前半戦のヤマ場であるサウジアラビア戦に勝利したことで安堵感も漂うが、W杯ロシア大会の出場権を獲得できたわけではない。まだまだ課題の多い日本代表が、ハリルホジッチ監督のもとでどのように成熟していくのか、注視していきたい。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro