WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 まさかの大逆転で、第45代アメリカ大統領に選出されたドナルド・トランプ氏(70歳)。同氏はこの大統領選に出馬する前から、ゴルフ界では有名人であり、世界中に自身のゴルフコースを所有している。

 その中には、タイガー・ウッズがデザインし、現在ドバイで建設中の『トランプワールドGC』もある。それを含めて、トランプ氏が運営するゴルフ場は各国に17コースもあって、ゴルフ界との関わりは非常に深い。

 今、アメリカ国内外で大きな関心を集め、「トランプ氏が大統領になると、いったいどんな影響があるのだろうか?」と、期待や不安が世界中で膨らんでいるが、ゴルフ好きのトランプ氏が次期大統領になるこの機会に、ここではこれまでの「アメリカ大統領」と「ゴルフ」との関係性について、改めて振り返ってみたい。

 まずは、現職のバラク・オバマ大統領。同氏も大のゴルフ好きで知られる。ハワイ出身で、休暇中はいつも"ゴルフ・バケーション"であることは有名な話。この8月には、大統領になって7年半の間にトータル300ラウンド目を達成し、各メディアで「ゴルフのしすぎじゃないの?」と非難されたほどだ。

 オバマ大統領はレフティーで、現在のハンデキャップは「13」だという。大統領就任時はハンデ「17」だったゆえ、大統領になってから腕を上げたことになる。

 ラウンド仲間は、もっぱら有名アスリートや気心の知れた友人たちで、政府要人とのプレーは極めて少ないようだ。2013年、フロリダ州でウッズと初めてラウンドした際には、かなり話題になった。

 第42代大統領のビル・クリントン氏も、ゴルフには熱心だった。現在も、自身で設立した基金『クリントン・ファウンデーション』が、毎年1月にカリフォルニア州で開催されるPGAツアー、キャリアビルダー・チャレンジを5年間もサポートしている。同大会は、もともとハリウッドスターのボブ・ホープがホストを務め、ジェラルド・フォード元大統領(第38代)も、この大会のプロアマ戦には何度も参加している。

 実は、クリントン氏は2001年に大統領の職を退いたとき、ニューヨーク郊外のトランプ氏が運営する豪華ゴルフクラブのメンバーに加わった。そして今回、ヒラリー夫人がトランプ氏に惨敗するはめになるとは、何とも皮肉な話である。

 大統領をふたり輩出したブッシュ家も、ゴルフとはとても縁がある。大統領ではないものの、第41代大統領の"パパ・ブッシュ"こと、ジョージ・H・W・ブッシュの祖父ジョージ・ハーバード・ウォーカー氏は、銀行家で、ビジネスマンでありながら、1920年に全米ゴルフ協会(USGA)の会長を務めた。ライダーカップのアマチュア版とも言われる、英国選抜vs米国選抜の『ウォーカーカップ』を設立したことでも知られる。

 そのウォーカー氏の娘婿で、"パパ・ブッシュ"の父プレスコット・ブッシュ氏も、1935年にUSGAの会長に就任。ブッシュ大統領につながる一族は、まさに"ゴルフ一家"である。

"パパ・ブッシュ"も、もちろんゴルフ好きで、「最もプレーが速い大統領」と言われていた。また、地元テキサス州で開催されるゴルフ大会には大きな力を注いできた。そうしたゴルフへの絶大な貢献によって、2009年には世界ゴルフ殿堂入りを果たしている。

 その息子、第43代大統領のジョージ・W・ブッシュ氏も、ゴルフ愛好家。その腕前は、ハンデキャップ「10」と言われている。それでも、大統領在任期間中、アフガニスタンやイラクなどで米兵が戦っている間は、「ゴルフをするわけにはいかない」と明言し、プレーを封印していたエピソードを持つ。

「アメリカ大統領とゴルフ」というテーマにおいて、最も忘れてはいけない存在は、第34代大統領のドワイト・アイゼンハワー氏だ。

 ホワイトハウスで目が覚めたら、まずは8番アイアンで体をほぐした、という逸話があるほどのゴルフ好き。しかも、1953年〜1961年まで8年間の大統領在任期間中、そのラウンド数はなんと800回を数えるという。要するに、大統領の激務の間を縫って、年間100ラウンドをこなしていたというのだから驚きだ。

 さらに、マスターズが開催されるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブのメンバーだったアイゼンハワー氏は、10番ティーグラウンド横にある一軒家"アイゼンハワー・キャビン"に執務室まで設けた。この場所で、しばしば政府要人との会議が行なわれていた。つまりその当時は、ゴルフ場が米国の政治活動の中心になっていたのだ。

 ちなみに、かつて17番ホールのフェアウェーにあった松の木は(※2014年の寒波で枯れて倒木)、「アイゼンハワーツリー」と呼ばれていた。その木を苦手とするアイゼンハワー氏が、「邪魔だから切ってほしい」と何度頼んでも聞き入られなかったことから、そう名付けられたという。

 こうしてみると、ゴルフとアメリカ大統領の関わりは、本当に深いものがある。そして、次期大統領のトランプ氏は、「ゴルフはビジネスにとって重要な役割を果たしている。私はたくさんの商談をグリーン上でまとめてきた」と語っている。もしかすると、大統領に就任したあかつきには、重要な法案がグリーン上で話し合われるかもしれない。

 なお、ゴルフをしなかったのは、第39代大統領のジミー・カーター氏ぐらいだそうだ。要はそれほど、ゴルフはアメリカの政治の世界において、大きな役割を果たしてきたのである。

text by Reiko Takekawa/PGA TOUR JAPAN