中国最大の売春都市が生んだスマホメーカー「金立」 急成長の裏側

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中国のスマホメーカーGionee(金立、ジオニー)は広東省の東莞(とうかん)市に本拠を置く設立14年目の大手企業だ。しかし、中国国外ではその名をほとんど知られていないため、同社は知名度の向上を目的に海外メディアを招待し、工場の見学ツアーを行った。

東莞市は、中国最大の売春都市として有名な”性都”だが、近年は政府による大規模な取り締まりにより風俗業界は衰退しつつある。その代わりに台頭してきたのが製造業だ。東莞は深圳と並ぶ製造拠点で、世界の携帯電話の5台に1台は東莞で製造されているとも言われている。

Gioneeは、最新の中国スマホメーカー別シェアでOppo、Vivo、アップル、ファーウェイ、サムスンに次ぐ6位にランクインし、インド市場でも急成長を遂げている。同社は品質管理に定評があり、製造の全工程をインハウスで行っている。同社の製造部門を率いるヴァイスプレジデントのLi Sanbaoは、電子機器の製造現場で20年以上のキャリアを持つ。

Gioneeは、品質を高めるために意外な点に注力している。それは、社員の幸福度を高めることだ。「我々は、従業員の幸福度を高めることがより良い製品づくりにつながるという哲学を持っています」とLiは話す。同社では、従業員に住宅や食事を無料で提供し、最新映画の鑑賞会やバドミントンの無料レッスンを開催しているという。

給料はフォックスコンの1.5倍

賃金についても高く設定し、フォックスコンの工場労働者の月給が2,200元と伝えられる中、Gioneeは3,000元(約48,000円)以上を払うという。賃金に加えて生活費も負担してもらえることは非常に魅力的であり、多くの人がGioneeでの職を得るために列をなしている。現在、Gioneeの東莞市の工場には1万人以上が勤務中だ。

筆者は見学中に従業員と話す機会はなかったが、彼らが休憩中にバスケットボールを楽しんでいる様子を目撃した。また、社員寮の中も見学したが、欧米の大学の学生寮に似た雰囲気で、香港にある筆者のマンションよりも住居スペースは広かった。

優れたハードウェアを製造するためには、高度な技術力も必要だ。Liによると、Gioneeのエンジニアは、Li本人を含めて業界で最も経験豊富なメンバーが揃っているという。

「私は大学を1994年に卒業し、20年間に渡り様々な工場で勤務し、中国のエレクトロニクス業界の急成長を目の当たりにしてきた」と彼は話す。
Liによると、Gioneeでは全工程を通じ3つのチームが品質管理を分担して行なう。まず最初のチームが製品の信頼性をチェックし、2つ目のチームが不良品の原因を究明し、3つ目のチームが追加検査を行なう。このようにして品質管理を徹底するのだという。

最新モデルはインドで大人気に

Gioneeは潤沢な資金力を活かし、機械設備に多額の資金を投じ、最近は数百万ドルを費やしてシーメンスとパナソニックからサーキットボードを作るためのSMT(表面実装技術)機器を50台購入した(1台当たりの価格は約300万ドル)。これらの装置の性能は非常に高く、クアルコムがプロセッサのテストを依頼してきたほどだ。

Gioneeでは部品の一つ一つをバーコードで管理しており、問題が起きたときにすぐに原因を特定できる体制を整えている。例えば、輝度センサーに不具合が見つかったとき、バーコードを調べることで、その端末がどのラインの誰によって組み立てられたかすぐにわかるという。

筆者はGioneeの最新モデル「M6」を使ってみてその性能の高さに驚かされた(Ginoeeのソフトウェアは筆者の好みではないが)。M6の特徴は、暗号化チップを搭載してハードウェアレベルでセキュリティを高めていることだ。Gioneeのスマホは特にインドで人気が高く、2015年に出荷された1,000万台の多くはインドで売られた。アメリカではまだ無名に近いが、Ginoeeはアメリカ進出も視野に入れている。

「スマホ競争はマラソンに似ている。中国メーカーはアメリカ進出に当たって、規制や官僚主義に直面している。時間が掛かるかもしれないが、我々は気長に取り組んでいく」とLiは話す。

当面、Ginoeeは中国とインドに注力するという。同社は最近、ミッドレンジモデル「S9」をリリースした。アルミボディにデュアルカメラを搭載し、価格は364ドル。12月には新たなフラッグシップモデルを発売する予定だという。