なぜ「優秀だね」と言われるのに任されないのか

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■先輩たちが机を漁る理由

上司から仕事を任せてもらうためには、正攻法と、それ以外の裏道的な方法があります。

まず正攻法とは、仕事に一生懸命打ち込んで「こいつは見どころがある」と思わせることです。一生懸命という意味は深夜まで残業することではありません。よく考えて、早く、正確に働くのです。

「よく考える」とは、数字・ファクト・ロジックの3要素で徹底的に検討すること。目的や方法論が腑に落ちない場合は上司に「なぜ?」と聞く。議論をする。上司としては部下の思考プロセスがわかるので、安心して仕事を任せられます。

スピードも重要です。期限が1週間後の仕事を3日でやり遂げる部下がいたとします。出来栄えは経験豊富な上司に及ばないかもしれませんが、時間があるので上司は手を入れることができます。直す余裕があるかないかで印象は全然違います。

そして正確性。仕事はたいてい文章でやりとりされます。くだらない話だと思うかもしれませんが、誤字には気をつけましょう。どんなに立派な内容の報告書を作成したとしても、最初の1行目に誤字があったら台無しです。読んだ上司は、「なんだこいつは」という気持ちになります。上司への文章は提出する前に精査する習慣をつけるべきです。

以上は、上司から仕事を任せてもらうための王道です。あなたはこのような正攻法はすでに実践しているかもしれませんね。それでも仕事を任せてもらえない場合のために、裏道的な方法を教えましょう。

私は日本生命で新人時代に、上司の机を必死に漁る先輩たちに会いました。「何をしているのですか」と聞くと、「上司が自分たちに指示する仕事内容を書き留めたメモを探して解読している」という答えでした。優秀な先輩たちは、次にやってきそうな仕事の見当をつけて、あらかじめ準備していたのです。

与えられる仕事を予測できれば、成果に「付録」をつけることもできます。例えば、報告書の第3章を書いてくれ、と頼まれたら、第4章まで書いてしまうのです。上司としては「言わないうちにここまでやるならば、もっと任せてみよう」と思うかもしれません。

数字・ファクト・ロジックで上司と徹底的に議論したり、任せられてもいない仕事をどんどんやってしまうことは、「出すぎたヤツだ」と上司から嫌われるリスクをはらんでいます。でも、リターンには必ずリスクが伴います。リスクを避けたいなら、上司から言われた仕事だけをやって給料をもらい、満足するしかありません。

それに、上司に嫌われたら困るという人はリアリズムに欠けていると私は思います。会社員は左遷される可能性のほうが高いからです。社長になれる確率を計算すれば明らかでしょう。社長になれなければ、みんなどこかのタイミングで左遷されるのです。自分だけが嫌われているなんて考えるのは幻想です。

仕事とプライベートの比重を間違えないということも重要です。人生で過ごす時間において、働いているのは3割に達しません。大切なのは仕事ではなく、食べて寝て、家族や友人と楽しく過ごす時間です。仕事なんてどうでもいいと割り切れたら、八方美人になったり上司にゴマをすることがバカバカしくなります。絶対に譲れないと思うときは上司を打ち負かすつもりで臨めます。本当にいい仕事ができるのです。

いくら議論しても上司が理解してくれない場合は、あきらめて時期を待つしかありません。このような「骨っぽい」部下になることができれば、上司はあなたに任せてくれますよ。

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ライフネット生命保険 会長兼CEO 出口治明(でぐち・はるあき)
1948年、三重県生まれ。京都大学卒業後、72年に日本生命入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを歴任。2006年にネットライフ企画(現・ライフネット生命)を設立し、社長に就任。13年6月より現職。

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(ライフネット生命保険 会長兼CEO 出口治明 構成=大宮冬洋 撮影=市来朋久)