普段のイメージとは異なる姿の東出昌大
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 俳優の東出昌大が、公開中の映画『聖の青春』で演じたのは、将棋界のトップを走り続ける実在の棋士・羽生善治。劇中のビジュアルが発表された際には、羽生が実際に使用していたメガネをかけた東出の姿が本人ソックリと反響を呼んだが、東出がこだわったのは見かけだけではない。

 難病により29歳の若さでこの世を去った天才棋士・村山聖の生涯をつづった大崎善生のノンフィクションを、松山ケンイチ主演で映画化した本作。東出は、村山の最強のライバルであり、あこがれの存在でもあった棋士・羽生役を務めた。大幅に増量をして村山を演じた松山はもちろんのこと、東出の役づくりも並大抵の努力ではなかった。

 劇中で東出が使用したのは、羽生が1996年に史上初のタイトル七冠を達成したときに実際にかけていたメガネ。本人から譲りうけたそのメガネをかけ、和装で将棋盤を前にした東出の雰囲気は、まさに羽生そのものだ。実際に羽生本人にも会い、研究を重ねただけあって、クセや仕草、居住まいまでもが完璧。東出がどれほどの思いでこの役に挑んだかがうかがい知れる。

 クランクイン初日、メガホンを取った森義隆監督から東出に「芝居をするな」という指導があったという。劇中の東出は、まさに“羽生”という役どころが単に乗り移ったかのような、自然かつ説得力のある演技を見せている。2012年の『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビューした東出にとって、実際のキャリアの上ではかなり先輩にあたる松山と対峙する姿にも、まったく違和感がない。羽生本人と対面したときのことについて、「その存在と志すものの大きさのレベルの違いに圧倒された」と話していた東出だが、スクリーンの中の東出は、自身が感じた“畏怖”をそのまま体現したかのようだ。

 将棋における負けを「死にも等しい」と解釈したという東出。対局シーンは「村山聖の人生が苦しいのはわかっているけど、ぺしゃんこにしてやるんだという鬼のような思いで挑みました」というように、精神面も作り込んだ。松山に「東出くんの小手先だけじゃない演技が、僕の心にも火をつけた」と言わしめ、森監督には「東出史上ベストアクト」と評価された東出の新境地に注目だ。(編集部・小山美咲)