『データの罠』の著者・田村 秀が語る、メディアの数字との付き合い方

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今、メディアにはデータが溢れている。世論調査、ランキング・・・それらは何らかの情報をノ付けるものイ箸靴道箸錣譴討い襪、そのまま受け取っていいのだろうか。

例えば、小誌2016年6月号の企画「表現の自由を規制するのは誰か 〜映画編〜」で、喫煙シーンを巡る表現の自由についての特集をした。そこで取材のための資料を集めていた際、2つのデータを見つけた。1つは『たばこ警告画像に 賛成 72%/反対 7%』(読売新聞2016年6月2日朝刊)。もう1つが『タバコのパッケージに健康被害の画像、喫煙抑制に効果ある? 効果がある33・6%/効果がない66・4%』(Yahoo!ニュース/意識調査)。どちらのデータに触れたかにより、警告画像の受け取られ方は変わるだろう。
 
我々消費者がデータの落とし穴、罠に嵌らないために知っておくべきことを統計調査に詳しい、行政学者の田村 秀に解説してもらった。

―メディアでいちばん目にするデータは世論調査だと思うのですが、こうした数字の信憑性も絶対的ではない、と?

ええ。調査の仕方、質問の順番、ワーディング(言いまわし)、選択肢によって答えは変わります。本来40%くらいの結果になるものが80%になることはないですが、10数ポイントずれる可能性はあります。

―そんなにですか。では、どんな世論調査なら信じるに足りるのでしょうか?

一般的に、無作為の個別訪問など、直接会う場合が信憑性が高く、次に電話や郵送などの無作為での調査と言われています。また、インターネットでの調査にはバイアスがかなりかかっていると考えられています。まず回答者がネットを使う人に限られるうえ、自らサイト等に登録している人が回答していることが多いため、かなり無作為性が薄れるからです。とはいえ、現代の状況を考えるとネットの世論調査もある程度は参考にせざるを得ない部分はあります。また、最初に言ったワーディングや選択肢による恣意性も気をつけないといけません。わかりやすい例として、「消費税に関する世論調査」(図1)を見てください。傍線部はかなり恣意的です。この調査の結果、読売新聞の一面にはゾ暖饑脳紊56%が容認イ慮出しが踊りました。

―なるほど。他に注意すべき点は?

世論調査で大事なのは、回答数ではなく、回答率です。特に無作為の場合は回答率6割以上が理想的です。

―回答数は全然関係ないのですか?

きちんとした調査で無作為なら、回答数は数百で十分です。よく1万人が回答しましたイ班週しているものがありますが、それは逆に怪しい。片寄った特定の人たちに調査している可能性がありますし、そもそも回答率も低いものが多いんです。

―世論調査のほかに、データといえばランキングもニュースなどで取り上げられますよね。例えば、各国の人口ランキングなどは客観的な数字を元にしていますが、「報道の自由度ランキング」で日本は72位だと言われても、基準がよくわからないですよね。

数年前、ダこΔ琉汰甘戰薀鵐ングイ妊轡螢△一番になりましたが、武力衝突をしている国がトップなのかと疑問に思いますよね。これは、各国のビジネスマンが自分の国を評価したランキングなんです。シリアのビジネスマンはだいたい政府寄りの人間だし、政府が強圧的な国なのでこうした結果になった。評価項目がどうなってるか、誰が評価してるかで順位は変わります。

―では、どうやってデータリテラシーを養っていけばいいでしょうか?

まず前提として、数字・データを盲目的に絶対視しないことです。一つの情報や意見だけで判断しないことはメディアリテラシーの基本です。データも一つの意見なのですから。それに、似たような調査をやっている時は比較したほうがいいですね。一つだけではなく、いろんな新聞のデータを並べてみるとか。また、数字そのものに対する感覚を身につけることも大切です。この間、大学で学生に日本の国家予算はいくらか、というクイズをしたら1億円イ氾えたんです。正確に答えられないのは仕方ないとしても1億円はないですよね(苦笑)。そもそも人口が1億人以上いるのに1億円では一人1円にも満たない。そういう数字の一般的な感覚を身につけることがすごく大事なのだと思います。


(読売新聞1997年5月2日 朝刊)
4月1日、消費税の税率が3%から5%に引き上げられました。高齢化が急速に進む中で、いま消費税の引き上げを行わないと、財政状態がさらに悪化して、次の世代の負担が重くなったり、福祉の財源が不足するなどの影響が出ると言われています。あなたは、今回の消費税の引き上げを、当然だと思いますか、やむを得ないと思いますか、それとも、納得できないと思いますか。

〇当然だ       5.4% / 〇やむを得ない 50.7%
〇納得できない 42.6% / 〇答えない   1.2%

ローリングストーン日本版 2016年10月号掲載
特集|現代社会を生き抜くためのメディアリテラシー


SHIGERU TAMURA
田村 秀 1962年生まれ、北海道出身。新潟大学法学部教授・みなかみ町参与。1986年、東京大学工学部卒業後、自治省に入省。自治省、香川県企画調整課長、三重県財政課長を経て、東京大学大学院総合文化研究科客員助教授などを務める。専門は行政学、地方自治、公共政策。『データの罠 世論はこうしてつくられる』(集英社新書)、『「ご当地もの」と日本人』(祥伝社新書)、『自治体崩壊』(イースト新書)など。