東京・千代田区の朝鮮総連中央本部

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北朝鮮を支持する民族団体、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の機関紙である朝鮮新報が、ドナルド・トランプ次期大統領への期待を表した。

同紙は18日、電子版に「クリントンとトランプ」と題した短いコラムを掲載。「主流メディアはいかにも、善良な人々がクリントンを支持しており、トランプは『悪人』であるかのように描いているが、それはわい曲だ」と指摘した。

「公開処刑」に加担

同紙はたまに、国際情勢について独特の見解を示すことがある。2015年1月、フランスの週刊新聞シャルリー・エブドに対する襲撃事件が起きたときには、なぜか米国に猛烈な非難を浴びせた。

今回のコラムも、着眼点に独特なところがある。コラムは、旧態依然の政治と新自由主義に反感を持つ米国の有権者はクリントンを危険視している、米国民はウォール街や軍産複合体と癒着しているクリントンが、国家財政の危機を戦争で乗り切ろうとするはずだと恐れたのだ、などと解説。続けて次のように述べた。

「一方、トランプは野卑で差別主義的な発言で非難された。しかし彼の公約が重要だ。それは、これ以上、他国のことに干渉してはならない、対話を優先させなければならない、『世界の警察』のような真似をする必要がない、それより自国の問題を解決しなければならない、非常事態にある経済をどうにかして再生し失業者を救済せねばならず、腐った政治を清算しよう、というものだ。とても常識的で妥当な主張だ」

北朝鮮の公式メディアは今のところ、トランプ氏の当選について反応を示していない。朝鮮総連の主張をイコール北朝鮮の主張と見ることはできないが、少なくとも、トランプ氏を肯定的に評価することが禁止事項になってはいないことは分かる。

それではなぜ、朝鮮総連から、トランプ氏に対するこのような期待感が出てくるのか。その理由は人権問題の一点に尽きる。

現オバマ政権は、北朝鮮における人権侵害の責任を問い、史上初めて金正恩党委員長を制裁指定した。これに対する正恩氏の怒りは凄まじく、ブチ切れて周りに当たり散らし、拳銃を乱射したとの情報もあるほどだ。

ならば、トランプ政権が発足したらどうなるのか。トランプ氏やそのブレーンたちも、「北朝鮮の人権問題は重大だ」くらいのことは言うかもしれない。しかしその度に、人々は彼の発してきた人種差別的な言葉の数々を想起するだろう。北朝鮮に対する人権包囲網が、これまでに比べ真剣味の薄れたものになるのは避けられないのではないか。

朝鮮総連にとっても、北朝鮮の人権問題は耳の痛い問題だ。政治犯収容所や公開処刑の存在を認めないことで、彼ら自身がそこに加担しているも同然だからだ。

(参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」

筆者とて、北朝鮮と米国の対話に反対する者ではないが、それには、人権問題を後退させないという前提条件が付く。

もっとも、北朝鮮の人権問題はすでに国際的イシューとなっている。トランプ氏といえども、「追及するのはやめだ」とまでは言えないだろう。誰が何を期待したところで、人権問題をめぐる北朝鮮と朝鮮総連の状況は、今後も大きく変わることはないのだ。