ラストスパートに向けて走り出した『ウルトラマンオーブ』。18話はビートル隊員・渋川一徹こと柳沢慎吾をフィーチャーした異色回だったが、先週放送された19話「私の中の鬼」もそれに輪をかけた異色回だった。


SSPのキャップことナオミ(松浦雅)を主役に据えたこの回のテーマはズバリ「女の生き方」。はたしてテレビの前のチビッ子たちはついて来れたのだろうか?

女の幸せは男で決まる?


ナオミの親友・陽子(柳生みゆ)が一流ホテルの御曹司と結婚することになった。SSPの活動費を稼ぐためにバイトに明け暮れるナオミだが、なんとかやりくりしてバチェロレッテ(結婚式前日の独身最後の日を同性の友人たちと楽しむ会)に参加する。

集まった友人たちは玉の輿の陽子を口々に褒め称える。「女の幸せは男で決まる」と平然と言い放つ友人たちに眉をひそめるナオミ。陽子はホテルの仕事を辞めて専業主婦になるという。陽子はホテルの仕事がしたくて、両親の反対を押し切って就職したばかりだったのに……。

周囲の女性たちとナオミの価値観はまったく相容れないものだった。交通整理のバイトの帰りだということがバレて、友人たちに嘲笑されたナオミは失意のうちに会場を後にする。

「自分の幸せを決めるのは自分」と語り合っていたはずの親友が、“男で決まる”“女の幸せ”を手に入れようとしていた。ナオミの心は揺れ動く。幸せって何? 怪獣を追いかけ、バイトに明け暮れる私の幸せはどこにあるの? ナオミの心の奥底に封じられていた妬みが、怨霊鬼 戀鬼(れんき)を呼び覚ます。

戀鬼とは、戦国時代に姫と愛し合いながらも仲を引き裂かれ、無念のうちに死んでいった騎馬武将の怨霊だった。現世では“想い石”に封印されて恋人たちに幸せをもたらすと言われていたが、ナオミの妬みに触れて怨霊として復活したのだ。

うろたえるナオミの前に、突然現れるジャグラス ジャグラー(青柳尊哉)。この男、心の闇があるところにすかさず現れる。まさにダークサイドの化身だ。

「お前はどこかで悲劇を望んでいる。闇を抱えている。素直になったらどうだ?」

ナオミの心の闇を指摘して、追い詰めていくジャグラー。そこへガイ(石黒英雄)が現れた。

「勝手なことを言うな。誰の心にも闇がある。闇があるから光がある。闇を抱えていない人間に世界を照らすことはできない」

いいこと言うなぁ、ガイさん。サンダーブレスター登場から17話でオーブオリジンとして覚醒するまで、自分の闇とずっと向き合ってきたガイだからこそ言える言葉だ。

嫉妬の怨霊VSウルトラマンオーブ!


ジャグラーは消えたが、幸福な恋人たちに嫉妬する戀鬼は、結婚式当日に再び現れて花嫁の陽子を狙う。ガイはハリケーンスラッシュに変身するも歯が立たず、切り札のオーブオリジンも苦戦を強いられる。戀鬼、めっちゃ強い。

オーブと戀鬼が戦う音が鳴り響く中、陽子や仲間のジェッタ(高橋直人)、シン(ねりお弘晃)らの前で告白するナオミ。

「私ね、好きなことを自分で選んだつもりだったけど、でも、なかなかうまくいかなくて、不安だったんだと思う。そんなときに陽子の幸せそうな姿を見て……。私の心の奥深くにある小さな妬みが、あの怨霊を蘇らせてしまったの」

ナオミは責任を感じて、戀鬼を説得しようとする。

「私なんかのちっぽけな気持ちに惑わされないで! お願い!
今、陽子を傷つけようとしているのもあなただけど、
この人たちの幸せを祝福していたのもあなた! 
どっちの自分が好きだったか、幸せだったか、考えてみて!
だって、自分の幸せを決めるのは自分! そうでしょ!?
だからお願い、自分の気持ちに耳を傾けて!
あなたならできる! できるから!」

ナオミの渾身の説得に応えた戀鬼は、オーブに介錯を頼んで消え去る。さらに、陽子は玉の輿ではなく、ホテルの経営者一族から弾き出された夫とともにリスタートする予定だった。毎日が不安でたまらないという陽子だが、ナオミに微笑みかける。

「自分の幸せを決めるのは自分。でしょ?」

ナオミ=「こじらせ女子」だった!


「自分の幸せは自分で決める」

先週のオンエアでこのフレーズを聞きながら思ったのは、「雨宮まみさんが見たら何て言うかなぁ」ということだった。雨宮さんとは「こじらせ女子」という言葉を生んだライターさんで、筆者も何回かお会いしたことがある。著書やエッセイも読ませていただいていた。
ウルトラマンのファンだという話は聞いたことがなかったが、アニメは好きなので薦めたら見るかもしれない思っていた。しかし、まさか亡くなってしまうとは思わなかった。

女性であることに自信を持てない女性が、この社会の中で、どうやって自分らしく生きながら幸せを掴むか――が、彼女が書くもののテーマだった。

「私は『もう若くない独身女』ではなく、ただ私自身として生きたいです。それは、結婚している人も、子供を持っている人も、みんなそうであればいいと思うのです。立場で生きるのではなく、意志で生きることだけが、人生を輝かせるのだと、私は思っています」
「ずっと独身でいるつもり?」第70回

「いつまでも若い人でいたいわけじゃない。もうババアですからと自虐をしたいわけじゃない。私は私でいたいだけ」
「40歳がくる!」01

いずれも彼女のエッセイの一節だ。年齢のことはさておき、「ただ私自身として生きたい」「立場で生きるのではなく、意志で生きることだけが、人生を輝かせる」というのは、今回描かれたナオミの心の内のようだ。
ナオミは「意志で生きる」ことを望みながら、男性から選ばれて“女の幸せ”を得たいという気持ちとの狭間で揺れ動いていた。揺れ動きすぎて、怨霊を目覚めさせるほどだ。そして、雨宮さんも揺れ動いていた。だから、今回の『オーブ』を見たらどう思うのかなぁ、とボンヤリ考えていたのだ。そういえば「私の中の鬼」というタイトル自体、彼女のエッセイの中にあっても違和感がない。


筆者の見立てがあながち間違っていないことは、『ウルトラマンオーブ』でシリーズ構成を務める中野貴雄のツイッターによって再確認できた。

「ロマン優光『サブカル』本にあった『自分の中にあるフェミニズム的意識と、男性に女性として認められたいという気持ちの折り合いがつかない』というのがまさにオーブ『私の中の鬼』の夢野ナオミだと思う」

「ロマン優光『サブカル』本」というのは、ロマン優光の著書『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コア新書)のこと。中野氏が引用した一文は、同書の「サブカルと女性」という項で、雨宮さんが発案した「こじらせ女子」という言葉をまさに定義している部分なのだ。生前、雨宮さん自身もこの本を読んで、自身の著書の分析に賞賛を送っていた。ナオミは「こじらせ女子」だったのだ。

今回の脚本を担当したのは、映画『明日の記憶』やドラマ『イタズラなKiss〜Love in TOKYO』などを手がけた三浦有為子。三浦氏が「こじらせ女子」なのかどうかはわからないが、彼女が大切にしていることは、

「自分の欲望に正直でいること」
「夢をかなえた人のそばにいること」
「夢をかなえた人を素直にうらやみ、ちゃんとリスペクトし、理解しようとすること」

の3つなのだという(2016年7月27日の日記より)。筆者にはこの3つが「こじらせ」への処方箋のように読めるが、さて、ナオミには伝わったかな?

さて、この記事が配信されている頃には放送が終わっている第20話は「復讐の引き金」。メトロン星人が復活! 傷ついたジャグラーとナオミがなんだかイイ雰囲気に……!? 見逃してしまったあなたには、円谷プロダクション公式チャンネル「ウルトラチャンネル」で1話まるごと見逃し配信中です。銀河の光が我を呼ぶ!
(大山くまお)