バイリンガール英会話 Bilingirl Chika●英語解説や英会話などの動画を配信。

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Googleによる大型の広告キャンペーンなどにより、今やほとんどの方が「YouTuber」という言葉をご存じだろう。会社員として働きながら、動画配信で小遣い稼ぎ──「副業YouTuber」たちのリアルに迫った。

■動画広告によって生計を立てる人たち

サラリーマンをしながら、副業としてYouTuberで成功できるのか――。「趣味や特技などを映像に撮って配信すれば、自分もお金を稼げるのではないか」と考えたことのある方も、少なからずいるのではないだろうか。そこで本記事では、趣味や特技などを生かした動画を配信し、お金を稼ぐことに成功しているYouTuberにインタビューし、“副業YouTuberで稼げるか”を検証した。

YouTubeについて改めて紹介しよう。無料で利用できる動画共有サービスであり、自身のチャンネルを開設して動画をアップロードしたり、ほかの人がアップロードした動画を視聴することができる。

YouTubeでは、視聴者を対象にした広告が表示される。動画を再生すると最初に表示される広告には、スキップできるものとそうでないものがある。また、動画再生中にテキスト表示される広告もある。このような複数の広告によって得られる広告料を、動画の配信者に配分している。YouTuberとは、動画を定期的に配信し、広告料を収入源にしている人を指す言葉だ。

GoogleはYouTuberを支援するための様々な活動を行っている。その一つが、チャンネル登録者数1万〜10万人のYouTuberを対象にした「YouTube NextUp」だ。同社YouTubeパートナー・オペレーションズ・アンド・デベロップメント北東アジアマネージャーの船越貴之氏は「副業や趣味でやってきた方で、今後プロとしてやりたい方を対象にコンテストを開催し、優秀者に対して製作のスキル、視聴者の集め方などを講義します」と説明する。今回取材した「けんたさん」「まえちゃんねる」「TabiEats」の3組は2016年のNextUpでファイナリストに選ばれている。

■企業、官公庁とのタイアップも

英会話関連の動画を配信するチャンネル「バイリンガール英会話 Bilingirl Chika」の吉田ちか氏は、メディアにも多数登場している専業YouTuberだ。同チャンネルの登録者は60万人を超える。

吉田氏は「広告料以外に、企業や官公庁とのタイアップも大きな収入源になっています」と話す。直近ではVISAカード、オーストリア政府観光局、ウィーン市観光局とのタイアップで、ウィーンの魅力を伝える動画を配信した。これまでに複数の航空会社やJR西日本、パラマウントなど様々なタイアップ動画を配信している。

また広告料についても「一般的な広告と同様に、視聴者を明確にターゲティングしていて高い広告効果が見込まれる動画は、広告料が高くなります」(吉田氏)という。YouTubeでの稼ぎ方には様々なパターンがあるようだ。

親子での商品紹介動画などを配信するチャンネル「まえちゃんねる」の前原氏は「広告料のほか、企業から依頼を受けた商品紹介や、イベント出演などの収入があります」と語る。まえちゃんねるの場合、「広告料の収入が全体の3分の2、残り3分の1がタイアップなどの収入です」(前原氏)という。

自転車関連の動画を配信するチャンネル「けんたさん」のけんた氏も、大手企業や自転車パーツメーカーから商品紹介の依頼を受けるという。さらにけんた氏は、2016年4月から自身でデザインしたオリジナルグッズの販売も始めた。「最初に帽子を2種類計100個作り、YouTubeに紹介動画をアップしたところ、数時間ですべて売り切れました」(けんた氏)。現在では、自転車用ジャージの販売も始めており、帽子と合わせて約400枚を販売したという。

前原氏とけんた氏は、サラリーマンとして働く“兼業YouTuber”でありながら、YouTube関連の収入がサラリーマンとしての収入を上回っているという。

料理関連の動画を配信するチャンネル「TabiEats」の場合、英語圏に向けて英語で語り、日本語字幕をつけている。「英語圏での再生のほうが、日本で再生されるより単価が高い、というのが英語で配信している理由の一つです」(TabiEatsのサトシ氏)。彼らはYouTuberを主な仕事としているが、動画を配信しているうちに「他のYouTuberから英語字幕用の翻訳を頼まれるなど、YouTubeをきっかけにした翻訳の仕事依頼が増え、大きな収入源となっています」(TabiEatsのシンイチ氏)。現在では広告収入と翻訳による収入の割合はおおよそ3:7だという。

■「バイトのほうが効率がいい」

YouTuberは動画の企画や作成、編集などにどれほど時間をかけているのか。

料理動画のTabiEatsの2人は、週4回のペースで動画を作成している。彼らはほぼ毎日朝8時から夜11時まで料理の練習や撮影、編集をしており、その間に数時間、翻訳の仕事などもしているという。撮影や編集にかなりの時間を費やしている印象だが、「料理の動画は高画質が求められたり、ライティングが必要だったりと手間がかかります。細かな編集も必要なので、動画作成にかなり時間がかかる分野だと思います」(サトシ氏)。

自転車動画のけんた氏は、平日はサラリーマンとして働いている。「サイクリング動画は土日の撮影で、サイクリング中を録りっぱなしにします。商品紹介の場合は室内で20分ほどで撮影が終わります」(けんた氏)。出張が多い職業のため、「移動中の新幹線で編集作業をすることが多いです。商品紹介などは出張先のホテルで撮影してしまうこともあります」(同)。撮影や編集の手間があまりかからないため、週2〜3回のペースで配信できるという。

親子で商品紹介などの動画を配信しているまえちゃんねるの前原氏はサラリーマンをしながらも、配信は毎日行っている。「会社から帰宅後の20〜21時にかけて親子で動画撮影、21時以降は1人で編集・サムネイル作りなどを2時間ほどしています」(前原氏)。

このように、配信する動画の内容によって、必要な手間などが大きく変わってくる。専業が必須か、兼業でもできるかどうかは内容によって変わる印象だ。

今回取材したYouTuberが口を揃えて言っていたのが「本当に好きなことがあるのならばYouTuberになることを勧めるが、最初から収入を目的にするべきではない」ということ。月数万円を稼ぐための副業として適しているかについては、「少しの手間で数万円を稼ぐ、という目的にはYouTuberは合わない。一般的なアルバイトのほうが効率がいい」という答えが多かった。

■動画配信を始めたきっかけは?

▼CASE1:英語レッスン動画で登録者数60万人超!

「バイリンガール英会話 Bilingirl Chika」
英語解説や英会話などの動画を配信。様々な人に友達感覚で見てもらえるコンテンツを目指している。2011年スタート。16年7月現在の登録者数は約62万人。16年国連Change Ambassador(改革大使)就任。

──YouTubeでの動画配信を始めたきっかけを教えてください。

YouTubeを始める以前に、当時勤めていたコンサルティング会社などで学んだことについてのブログを日本語と英語で書いていました。あるとき友人から「英語のレジュメをチェックしてほしい」と頼まれました。その際に日本人が間違いやすい冠詞の使い方などを説明した動画をYouTubeにアップし、友達に見てもらうつもりでFacebookで共有しました。その動画に多くの反響があったことが定期的な配信を始めるきっかけになりました。

──会社をやめて専業のYouTuberになるきっかけは何だったんでしょうか。

YouTubeでの配信を続けるうちに、「凄く自分に合っている。これをメインにやりたい」と思うようになりました。2013年の末に退職したのですが、直接のきっかけは企業からタイアップのオファーがあったことや、NHKの番組に出演し話題になったことです。当時、YouTube関連の収入でワンルームのマンションの家賃と食費を賄えるくらいになっていたので、「ダメだったら会社員に戻ろう」と考えて退職しました。当時、チャンネルの登録者数は約10万人、動画1本当たりの平均再生回数は5万回ほどでした。

──YouTuberとしての収入で生活する、という夢を達成されています。今後の目標は何ですか。

一生続けられるかわからないので、いろいろなことに挑戦したいと思っています。動画の内容を広げたり、チャンネルで作ったブランドを他の分野で生かしたいと考えています。

▼CASE2:動画編集は出張中に。収入は本業超え

「けんたさん」
自転車とそれに関連するアウトドアや旅、商品紹介などの動画を配信。13年から自転車関連の動画配信を開始、16年7月現在の登録者数は約5万人。

──YouTubeでの動画配信を始めたきっかけを教えてください。

大学時代にダンスをやっていて、友人と共有するために動画をYouTubeにアップしていました。会社に入る直前の、大学4年の終わり頃に自転車の動画をアップしたところ反響があったので、定期的に配信することにしました。その頃はYouTubeでお金を稼げるとは知りませんでした。会社員としてのキャリアとYouTuberとしてのキャリアはほぼ一緒です。

──兼業YouTuberは大変ではないですか。

完全に好きでやっているので負担は感じないです。現在の週2〜3回の配信であれば、うまく時間をやり繰りすれば問題なく続けられます。「会社で働きながら、趣味で配信する」というのが自分に合っていると思うので、今後専業YouTuberになるつもりはありません。

──YouTubeで稼ぐポイントは何だと思いますか。

自転車系のチャンネルは、それほど数が多くなく、競合が少ないというのがあります。そういった分野の趣味などがある方であれば、収入は得やすいのではないかと思います。

私は広告収入のほか、企業タイアップや自作グッズの売り上げなどの収入があります。チャンネルがある程度成長すれば、広告料以外で収入を得るチャンスも広がるように感じます。

──将来の目標を教えてください。

近い将来ではないですが、自転車店をやってみたいなと思います。YouTuberとしての経験やつながりが、広報や宣伝に役立つのではないかと考えています。

▼CASE3:おもちゃ、ガジェットを親子で紹介

「まえちゃんねる」
おもちゃやガジェットの紹介動画を親子で配信。寸劇や仮装なども取り入れている。13年から親子での動画配信を定期的に開始、16年7月現在の登録者数は約10万4000人。

──YouTubeでの動画配信を始めたきっかけを教えてください。

2012年から1人でガジェット紹介などの動画を定期的にアップしていました。あるとき、親子で遊んでいる動画をアップし、数カ月後に何万回も再生されているのに気がつきました。そういったことがあり13年から親子で動画を配信するスタイルになりました。

──動画の撮影や編集はいつ行っていますか。

会社員なので、帰宅後に撮影や編集を行って毎日動画をアップしています。

──毎日配信するコツは何ですか。

撮影や編集の負担をできるだけ減らすようにしていることですね。例えば、撮影では言い間違えても撮り直さずに言い直すようにしています。編集では字幕を入れないし、画面によって音楽を変えたりもしません。いろいろ模索してこのやり方に辿り着きました。

──専業YouTuberになりたいと思いますか。

そう思うこともありますが、家族の気持ちなどいろいろなことを考えて、兼業を続けようと考えています。ただ、専業になれば毎日ライブ配信をするとか、今ではできないスタイルがとれるので憧れはあります。

──今後の方針を教えてください。

食べ物だったり、プラレールなど昔からあるおもちゃの動画は、長期間にわたって再生されやすいです。そういった、あまり状況に左右されないコンテンツを配信していきたいと思います。今後、子供が成長して「出演したくない」と言ったとしたら、1人でも配信は続けたいです。

▼CASE4:自作の料理動画を配信。登録者の多くは外国人

「TabiEats」
自作の料理を中心に、食べ物や旅の動画を配信。英語で語り、日本語字幕をつけている。14年から配信を開始、16年7月現在の登録者数は約4万6000人。

──配信を始めたきっかけを教えてください。

シンイチ氏:米国で料理や旅についてのライターをしていた際、本を出したいと思っていました。しかし米国では書店が減っていて、本を出すにはYouTubeでの配信に成功してから、という流れがあり、配信に興味を持ちました。

サトシ氏:もともとサラリーマンをやっていましたが、YouTubeでの配信を知ってビジネスとして面白いと思い、シンイチが配信を始めた直後に合流させてもらいました。

──YouTubeのチャンネル登録者数や再生回数を増やすためにどんな工夫をされていますか。

サトシ氏:同じ料理をテーマに配信をしているYouTuberの方とコラボレーションすると、チャンネル登録者数が増えますね。どちらのチャンネルの登録者の方も料理に興味がある方なので、知ってもらえればこちらのチャンネルも登録していただける可能性が高いです。

──副業で月に数万円稼ぎたい場合に、YouTuberは適していると思いますか。

サトシ氏:月数万円稼ぐようになるのには結構な時間がかかりますし、例えば週末だけ作業に充てて月2回程度配信する、といったやり方で再生回数を伸ばすには希有なタレントが必要です。週末限定で、といった条件であればほかの仕事のほうが効率よく稼げるように思います。

──今後の目標を教えてください。

シンイチ氏:現在はYouTube関連の翻訳などもしていますが、今後は自分たちが配信する動画の収入だけで生活していけるようになりたいと思っています。

(吉田洋平=文 大崎えりや=撮影)