演劇の楽しさを新発見!海外の話題作『フリック』を新国立劇場で鑑賞
新国立劇場で2016年10月30日まで上演されていた『フリック』。海外の現代演劇を日本で初演するという同劇場の企画で、今回の第4弾は2014年ピュリッツァー賞を受賞し話題となった作品。30代の女性劇作家アニー・ベイカーの戯曲というところも興味深い。そこで同作品を鑑賞してみると、作品のおもしろさと同時に演劇の見方がわかったような満足感があった。
Kaz Sasaki
物語の舞台はアメリカ・マサチューセッツ州。フィルム上映を続ける映画館に押し寄せるデジタル化の波。そんな背景の中、その寂れた映画館でアルバイトとして働く若者たちの焦燥感を描いている。
古く小さな映画館だけれど、スクリーンの中には非日常の憧れの世界がある。一方で、お客がこぼしたポップコーンやドリンクを掃除し、その場に散乱するゴミを片づける日々、これが現実。そんな若者たちの地味で平凡な毎日を淡々と綴る中にも、愛と恋、差別、虚しさ、残酷さ、裏切りなど、さまざまなドラマが盛り込まれている。舞台上にあるのは映画館の客席だけ。物語の世界観が見事に描かれていて、なんともいえない臨場感が。
自分なりの感動や共感ポイントを見つけるのが演劇のおもしろさ
お芝居の中にどんなメッセージがあるのかを考えながら観るのも、演劇の醍醐味だと実感。同作の登場人物は4人だけれど、大部分をほぼ3人だけで展開していく。コミュニケーションに難ありで映画好きのアフリカ系アメリカ人のエイヴリー(木村了)、映写係になることを夢見て働く貧しい白人のサム(菅原永二)、強がっているけど愛に飢えている白人、ローズ(ソニン)。それぞれが生きる背景を想像したり、セリフの裏にある気持ちを考えたり、自分との共通点や違いを見つけることで感性がくすぐられていくのがたまらない。自分で考えて自分なりの解釈をしながら観る楽しさを発見できた。
『フリック』には演劇を楽しむ要素が盛りだくさん
そして同作を鑑賞していて気づいたことがもう1つ。それは“沈黙”だった。セリフはないけれど、表情や動作だけでその場の空気を変えてしまうほどの演技力。心のセリフを想像できるような、観客の気持ちを引きつけるパワーが感じられるからすごい。また、キャストの声だけを聞いていても、先輩や後輩、片思いなど人間関係が伝わってくる。時に目を閉じて声に耳をすませてみると、また違った何かが見えてきそう。さらに、若者たちの悩みやぼやきが共感を呼んだり、よりどころになったりするのもポイントのひとつ。作品か?生まれた土地の“今”を読み取るというのも楽しい。
ちなみに同劇場では、今後も海外の“今”を描く話題作を初演していくそう。こうなると次の第5弾にも期待が膨らむ。演劇鑑賞をきっかけに、自分を見なおしたり、眠っていた感情を呼び覚ましたり、あれこれ考えたり。まだ見たことがないという人は、ぜひ体験してみて。新たな趣味が見つかるかも!
写真撮影:谷古宇正彦
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