なぜ反トランプデモはここまで広がったのか?

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もはや怒りの発散だけではない-街頭デモは民主主義に参加するために必要な手段だ。トランプ新大統領抗議デモ大規模化を分析する。

大統領選投票日の夜、全米の市や町は抗議デモに包囲された。ニューヨークやロサンゼルス、そしてサウスカロライナ州コロンビアやユタ州のソルトレイクシティなど各地で、イスラム教徒に対する登録の義務付けや、約2千万人が保険加入の恩恵を受けたオバマケアの廃止、等々を宣言し、少なくとも13人の女性から性的暴行容疑で訴えられている人物が大統領に選出されたことに対し、数十万人規模の大規模なデモが行われた。掲げられた手書きのプラカードには『私の大統領ではない』『偏見を許さない』『トランプのせいで人生の危機』『抗議は愛国の気持ち』などと書かれている。

メリーランド州モンゴメリー郡、ミネソタ州ミネアポリス、アリゾナ州フェニックス、ネブラスカ州オマハなどでは、高校生が教室から飛び出し、デモに参加している。

米現地時間11月13日(日)、ニューヨークでは、トランプが宣言している不法移民の国外送還に抗議する『Here to Stay(生活の場を奪うな)』集会が開かれたが、その中にテレサ・ディアスがいた。「アメリカ市民権を持つ2人の美しい娘の母親として、水曜の朝に最低の悪夢から目覚めたわ。でも私が恐れていないことを示すために、今日はデモ行進に参加したの」と、移民の生活安定を求めるコミュニティ組織『メイク・ザ・ロード・ニュージャージー』の一員であるディアスは、ローリングストーン誌に語った。

2008年にバラク・オバマが大統領に選ばれた後のティーパーティ(茶会)運動の拡大をかなり上回るペースで抗議集会が組織され、行動が激化している。しかし、デモ参加者が「負け惜しみ」を言っているように見える、と考える市民もいる。

この感情は、政治に参加できる、つまり政治的行動をとることができる唯一の方法は投票であると、アメリカ人が考えるようになったことから生じた副産物だ。しかし近年―特に2008年の金融危機以降―、アメリカ人は抗議行動が持つ力を再認識している。自分たちの抗議の声を響かせるための作戦として、膨大な人数を集め、デモ隊を組み、包囲する。世界を動かすエリートたちに対する信頼が失われていき―その証拠に投票率は下がり続けており、今回のドナルド・トランプの得票数は、2012年に敗れたミット・ロムニーよりも少ない―、変化を求めてますます多くの市民が反抗的行動に出るようになった。『いつもはデモなんかやらないが、さすがにね』というのは、反トランプデモで人気のあるプラカード表記の一つだ。

反トランプデモの参加者は、集会、徹夜の抗議、行進、ストライキなどへ加わった理由としてさまざまな理由を挙げている。先述のディアスや、『メイク・ザ・ロード・ニューヨーク』のメンバーで、オバマ大統領が実施したDACAプログラム(子どもの頃、親に連れられ米国に不法入国した若者を対象にした救済策)の受給者、スレイマ・ドミンゲスは、トランプの掲げる政策に直接的な影響を受ける。「トランプは就任後100日以内にDACAプログラムを廃止すると言っているけれど、そうなると私の就労許可がなくなり、家族離れ離れで暮らさなくてはならないの。自宅から追い出されたら困るし、勉強を続けることができなくなる。自分の社会保障番号がなくなってしまったら奨学金を申し込むこともできなくなるから。」と、ドミンゲスは話す。またトランプ政権成立の現実感に恐怖を感じ、同じ考えを持つ者同士で団結したいと抗議活動に参加する者もある。南カリフォルニア大学の学生、アミー・バンデンバーグはロサンゼルス・タイムズ紙に対し「この国には世の中の隅に追いやられている人たちが大勢いて、不安を募らせ、傷ついている。私は、『彼らを見守り、共に暮らし、大事に思っている』一人の白人として抗議できればいい。それが私の考えていることです」と語った。