映画『聖の青春』で主人公・村山聖を演じる松山ケンイチ

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伝説の棋士・村山 聖(さとし)の29年の生涯を描く映画『聖の青春』が11月19日に公開される。本作は、天才・羽生善治と「東の羽生、西の村山」と並び称されながら、29歳にして亡くなった実在の棋士・村山 聖の、病と闘いながら将棋に全人生を懸けた感動のノンフィクション作品。今回、主人公・村山聖を演じる松山ケンイチにインタビューを行い、役作りにあたっての強い思いを聞いた。

リサーチに時間をかけられたのでいろんな面の村山さんを表現できたかなと思います。

――元々原作を読まれていて、自分から役に名乗り出たという松山さん。原作の感想はいかがでしたか。

元々将棋が好きで読んだのですが、本と出合ったのが29歳の頃で、村山さんも29歳で亡くなったというところが気になっていましたね。こんなに激しく生きた人がいるのかと思いました。病を相棒のようにしていて、何事にも左右されず自分の人生を生きていて。僕自身、好きなように気ままに生きられたらいいなって常に思っているので、そういう生き方の人がいたのが嬉しかったし、その感動を欠けることなくお客さんに伝えたいって思いました。

――体重の増減も村山さんを演じる上で必要だったのですか?

これができなければスタート地点に立っていないですね。将棋に対してのプロのたたずまいというものもマストだったし、村山さんを演じる上でやらなくてはいけないことってものすごくたくさんあって、簡単にできるものではなかった。すごく時間がかかりましたし、そういうふうに時間をかけてもやりたい役でした。それを許してくれた周りの方にはとてもご迷惑をかけていますけど、感謝したいですね。

――今回の準備期間はどれくらいだったのですか?

体重をここまで戻すことも考えると1年半以上はかかっていますね。

――羽生善治役の東出昌大さんの印象はいかがでしたか?

今回はヒロインがいなくて、いるとしたら羽生さんなんですけど、対峙する役だったので、あんまり現場ではお話しなかったです。東出さんは誠意があるし、皆さんおっしゃいますけど、真面目な方ですよね。今回は東出さん自身、将棋が好きっていうことと、羽生さんのことを好きっていうことが全部重なって、強い愛から生まれるモチベーションが、共演していてもオーラのように感じられました。それが抜群によかったです。それがなかったら村山聖として尊敬や憧れを抱くことはできなかったと思うし、僕も素直に尊敬できる、憧れることができる羽生善治だったんですよね。だからそういうところにすごく助けられましたし、東出さんでよかった!と思いました。

――実際に羽生さんとお会いしたことは?

撮影が終わって、今回のプロモーションの取材で初めてお会いしました。

――羽生さんとはどんなお話をされたんですか。

「潜る」ということは話した気がします。劇中にもあるのですが、あまりに潜りすぎて戻ってくるのが恐い。戻ってこられるかどうか不安になるっていうか。

――「潜る」というのは例えば?

役者としてだったら役に没頭して、自分に戻ってこられるのかということですよね。僕は家族がいるから、家に帰ったら、「あ、これ自分だよな」って認識させてくれるものがあるのでそういう怖さはなくなってきたんですけど、昔はほんとにそればっかりだったなって思って。役に没頭しすぎてどこまでも行っちゃうから、そういう怖さはすごくありました。以前の僕は自分を痛めつけていましたね。酒をがぶ飲みして吐いたり、ケンカしたり。自分自身の言葉を吐きたかったのかな。自分の言葉を表現するっていうのはすごく苦手なんですけど、でも自分の言葉を発して何かしないと自分というものを取り戻せないようなところでやっていて、そこにすごく限界を感じていました。

――この映画でご自身の人生観は変わりましたか?

前から、自分の人生って誰のためにあるのかを考えていたんですけど、なんとなくこの作品で答えが出たような気がしますね。僕は村山さんの生き方を見て、自分の人生は誰のためのものでもないし、自分のための人生だからこそ、大事にしながら生きたいなって思ったんです。だから誰かのために犠牲になって働く、生きるっていうことが自分のことより優先順位が上になっちゃうとちょっと違うのかなって思います。それが学べたので、落ち着けたというか、不安にならなくなりましたね。

――村山さんは将棋を自分の人生をかけて全うされていると思いますが、松山さんが人生をかけてこれだけは絶対成し遂げたいことはありますか。

家族に対して「向き合う」ということを最後まで続けたいって思いますね。子供だったら離れていくまでだとか。自分にとってすごく大事なものに対して、目を離したくないなっていうか。正しいことを教えるというよりも、一緒にいるということが大事なのかなと思うので、そこは成し遂げたいというか、できる限りやりたいなと思いますね。