被災地のケアの在り方を考える必要も

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東日本大震災による被災で自宅が損壊した高齢者は、認知機能が有意に低下しており、認知症リスクも高まっているとする研究結果が、ハーバード大学公衆衛生大学院の引地博之客員研究員、東北大学大学院・歯学研究科の相田潤准教授、千葉大学予防医学センターの近藤克典教授らによって発表された。

これまでにも被災と認知症リスクを調査した研究は存在したが、両者の有意な関係や、被災した自宅の損壊状態が認知症リスクを上昇させる可能性を示唆したのは、今回の研究が初めてとなる。

研究は、東日本大震災で被災した65歳以上の高齢者のうち、被災以前の健康状態に関するデータが明確で、震源地から80キロ西に位置する地域に7か月以上住んでいた3594人が対象。

調査は被災から2.5年以上経過してから実施しており、認知機能の状態や、認知症の発症状態は、介護保険の認定時に用いられる生活自立度調査を利用している。

その結果、震災前に認知症判定や認知機能低下があるとされていた人は4.1%だったが、震災後は11.5%に増加していた。

さらに、認知症発症リスク要因と考えられる条件をすべて調整し、住宅の損壊状態と認知症や認知機能低下との関係を分析したところ、損壊が進むほどリスクが高まっており、「住宅が損壊してない人」は認知症発症リスクが非被災者の1.12倍、「住宅が損壊したが居住は可能な人」は1.29倍、「住宅が全壊し避難している人」は1.4倍となっていた。

特に住宅全壊の影響は大きく、歩行困難や脳卒中よりも認知症発症リスクを高めているという。発表は、2016年10月24日、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences」オンライン版に掲載された。

参考論文
Increased risk of dementia in the aftermath of the 2011 Great East Japan Earthquake and Tsunami.
DOI: 10.1073/pnas.1607793113 PMID:27791093

医師・専門家が監修「Aging Style」