松山ケンイチ&東出昌大の熱のこもった対談スタート!

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松山ケンイチが、棋士・村山聖の実話を描く映画『聖の青春』(11月19日公開)で肉体、精神面ともに壮絶な役作りに挑んだ。松山は「行くところまで行くぞ」という強い覚悟で臨んだが、演じきった今、「まだ先に進めない自分がいる。それほどに燃え尽きた」と胸の内を明かす。村山役を手にし、演じきるまでにどんな軌跡があったのか。羽生善治を演じた東出昌大とともに、本作が役者人生に与えた影響について語り合ってもらった。

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羽生を追い詰めた伝説の棋士・村山。本作は、村山が病と闘いながら全力で駆け抜けた、29年の生涯を描く人間ドラマだ。松山は、「30代に入る時に、全身全霊をかけて役を作ってみたい。自分のすべてをかけて、限界を超えたところで見える景色を体験してみたいと思っていました」と前のめりの姿勢を明かす。

「大河ドラマ『平清盛』はそういうことができた作品だった」と言い、「もう一度あそこまで、そしてもっと先に行ってみたいと思っていて。そういう役を探していた」。そんな時に出会ったのが、大崎善生によるノンフィクション小説「聖の青春」だった。「『これだ!』と。ものすごく心を揺さぶられたし、村山さんはたくさんの人に何かを与えられる人だと思った。すると、もう映画化の話がだいぶ前から動いている話を聞いて。自分からアプローチしました」。ひたむきに生きた村山に惚れ込み、すべてをかける意気込みで村山役に名乗り出たと言う。

一方の東出も、村山の生涯のライバルであり、実在する偉大な存在、羽生役を演じるプレッシャーと闘った。森義隆監督からは「松山さんと話をしなくていい」との指示があったそう。

「松山さんは僕より先にクランクインをされていたので、『そこに最強の異物として来い』と言われました。松山さん自身、おそらく体調が悪くなるほどの増量をされての役作りだったと思うんです。もちろん村山さんと同じく、松山さんは絶対に弱音を吐かないし、現場はそんな松山さんを中心とした輪が出来上がっていました」と述懐。最強のライバルとして、真剣勝負の場に挑むべく、「僕はあの頃の羽生さんと同じように、殺し合いをするつもりで現場に行きました」と並々ならぬ覚悟で乗り込んだ。

誰もが村山という人物、そして将棋という世界に没頭していくような撮影現場だったそう。それほどまでにのめり込めた理由を、松山は「好きだから。好きに勝るものはない」と話す。「村山さんは何に対しても一生懸命。感情がストレートに向かっている感じが、すごく好きです。大人になっていくと、いろいろなことを学んで、汚れみたいなものがついて、それが個性になるわけで。でも村山さんは、汚れないで生きていた人。村山さんの生き方を見ると、自分を作ったりするのがバカバカしくもなります。やっぱり、憧れているんですね」。

東出も「すごく愛おしくもあり、儚くもある」と村山への愛情を語る。しかし、演じる上で大事にしたのは、羽生としての厳しさ。「棋界の誰もが村山さんの体が悪いことはご存知でした。でも、村山さんの憧れた羽生さんは、絶対的に手を緩めない強さと、誰よりも努力をしている鬼の面とがある方。その2人がピュアにぶつかり合っている姿に、人々は胸を突き動かされると思ったんです」。

松山は「素晴らしい役に出会えたことに幸せを感じている」としみじみ。「まだ先に進めない自分がいるんです。今は映画の主役はできないと思うくらい、燃え尽きてしまったところもあって。でもどこかで村山聖という役を自分から切り落としていかなければいけない。それは、公開してから徐々にですかね」と役者人生において、かけがえのない作品となった様子。

同時に「自分自身、いろいろなものをもらいました。限りある生。人の目を気にしたり、情報を入れたりとか、そういうことではなくて、自分の気持ちを大事して生きたいと思った」と人生観にも影響をもたらした。「この仕事の素晴らしいところは、自分自身に変化をもたらしてくれること。僕はそれを全部ポジティブに捉えて栄養にしている自信があるし、せっかくならそうしなきゃいけないと思っている。今回は、村山さんから素晴らしいものをたくさんいただきました」。

東出は「プレッシャーもあり、喪失感、焦燥感も感じた。それは初めての経験」と振り返り、演じきった今「今後も役者として続けていく光明が見えた」と言う。「役者って、宝物を得られるような瞬間もある仕事なんだと認識できたような気がしています」。【取材・文/成田おり枝】