FBIとトランプが生む史上最悪「ネット監視社会」到来の恐怖

写真拡大

サイバー攻撃対策の強化を主張するドラルド・トランプが次期大統領に選出され、米国民は政府によるネット監視が強化されるのではないかと怯えている。人々の恐怖は、ソーシャルメディア上で急速に拡散し、ツイッター上では次のようなコメントが投稿されている。

「監視システムのPRISMやXkeyscore、Temporaなどのデータは全てトランプ政権が所有することになる」

一方で、アメリカ国家安全保障局(NSA)の元職員は、トランプ大統領が誕生してもネット監視が直ちに強化されることはないと述べる。NSAの副長官を務めたクリス・イングリスは「NSAの任務は米国憲法を遵守することであり、相手が大統領であっても違法な要求をしてきた場合には応じない」という。

元NSAのコンピュータ・サイエンティストのデイブ・アイテルも「NSAの活動がすぐに変わることはない」と話す。彼はiPhoneのロック解除を巡ってアップルと連邦捜査局(FBI)が対立した際、トランプがFBIを声高に支持したことに触れ「影響を受けるのはNSAよりも、FBIを配下に置く司法省になるだろう」と話す。

トランプとFBIの友好関係

大統領選挙の1週間前にFBIがヒラリー・クリントンの私用メールに関する捜査を再開し、トランプ勝利の一因となった。これによりトランプとFBIの関係に注目が集まっている。FBIは彼らの操作権限を強化するトランプが大統領にふさわしいと考えているのかもしれない。

元NSAで現在はブルッキングス研究所に勤務するスーザン・ヘネシーも、トランプが司法省やその配下のFBIに権力を行使する危険が大きいと指摘する。「司法省は誰に対してでも捜査を行なうことができる。特定の人物に対して報復的な訴追や不当な操作が行なわれる可能性は否定できない。大統領の持つ権力を甘く見てはいけない」

米国では、エドワード・スノーデン事件の後にNSAによる違法な情報収集活動を制限する大統領令がいくつか発令された。しかし、アイテルはトランプがその一部を撤廃する可能性があると考えている。

コロンビア大学のジェイ・ヒーリーも同じ意見だ。「共和党が上下両院の多数派を占め、トランプは今後2年間で法律を改正してNSAをコントロールしやすくなった」と彼は話す。トランプは、現在の愛国者法に設けられている制約を撤廃し、NSAによる不特定多数に対する電話通信記録の収集を可能にするかもしれない。

「警察国家」誕生の危険性

ヘネシーは、トランプがオバマ大統領の行った改革を白紙に戻すとしたら、最初に手を付けるのは「大統領政策指令第 28号」だと予測する。これは、NSAの監視から米国民以外のプライバシーを保護するものだ。「新しいものほど撤廃しやすい」と彼女は言う。大統領政策指令第 28号に関しては、個人のプライバシー保護などを訴える非営利組織「電子フロンティア財団」が先月、オバマ政権が公約を果たしていないと非難声明を出している。

トランプの大統領就任によって、政府の情報機関は試練を受けるとヘネシーは予測する。「NSAは強力な保護を受けている上に、スタッフも法律を遵守する高潔な人ばかりだ。彼らにはこの試練を乗り越えてくれることを期待するが、未来のことは誰も予測できない」

セキュリティ専門家のロバート・グラハムは次の様に指摘する。「トランプがネット監視の強化に乗り出したら、最悪な事態に陥る。9.11のような事態が生じたら、トランプは国民の支持を背景にNSAを変革し、強大な警察国家を作り上げるだろう」。

スノーデンもかつて、NSAの秘密ファイルを暴露した際に独裁者の登場に警鐘を鳴らしていた。彼は当時投稿したビデオの中で次の様に述べている。「強大な権力を持つ独裁者は、いとも簡単に国民を監視する体制を作ることができる。そうなると、大衆はなす術がない」