ワクチンは接種する時間帯で効果に違いが(shutterstock.com)

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 例年に比べて、インフルエンザの流行が早いようだ。

 厚生労働省によれば、3000人弱の感染報告(11月6日時点)は昨年の同時期に比べて、何と5.4倍もの感染者数だという。

特に流行の早い沖縄県では、AH3型(A香港型)が多く検出された。たとえ型を外したとしても、インフルエンザワクチンは一定の効果を発揮すると報告されている。

 重症化を防ぎたい人は、今からでも早く予防接種を受けた方が良いだろう。そんな人に参考となる報告が注目されている。
 
 ワクチン接種は、午後よりも午前中にした方がより効果的――。そんな可能性を示す報告が10月に米科学誌『The Journal of Experimental Medicine』(電子版)に掲載された。

夜行性のマウスは夜の接種が効果的

 この報告を行ったのは、大阪大学免疫学フロンティア研究センター・鈴木一博特任准教授(免疫学)らのグループ。

 夜行性のマウスは夜中、昼行性のヒトは午前中のワクチン接種がより効果的だという。 その理由は、ウイルスの抗体を作る「免疫反応」が身体の活動が活発な時間帯に盛んになるためだ。

 研究グループは、心拍数や血圧、呼吸機能などの調節に関わる「交感神経」と、免疫をつかさどるT細胞などの「リンパ球」との関係に着目。

 ご存じのように交感神経の活動は、マウスのような夜行性の動物の場合、活発な夜間にピークになる。そこで、マウスのリンパ節におけるリンパ球数を、1日を通して測ってみると、昼間に比べて夜間は1.5倍〜2倍に増加することがわかった。

 さらにそれを制御しているのが交感神経であり、交感神経の活動性が上がることで、リンパ球がリンパ節から血液中に脱出するのを抑制することも突き止めた。

 一方、接種されたワクチンはリンパ節に運ばれることで、病原体を迎え撃つ抗体を作る。そのときリンパ節内にリンパ球が多いほど、その免疫反応は強く起こる。

 そこで研究グループは、マウスを2群に分けて夜(午前1時)と昼(午後1時)にワクチン接種を行い、作られた抗体の量を比較。すると、接種5週間後では夜接種の方が昼より約4倍も抗体が多くできていた。

 これは、交感神経の活動性が高く、免疫応答が強く起こる時間帯を選んでワクチンを接種すれば、より高い効果が得られることを示しているといえる。
ヒトを対象とした調査でも同様の結果に

 ヒトの場合はマウスの逆で、リンパ球が最も多いのは午前中。今回はヒトを対象とした研究を実施していないが、マウス実験からも午前中が最も効果的と推察できる。

 じつは英バーミンガム大学で今年、高齢者276人を対象にした研究も行われている。被験者を「午前(9〜11時)」と「午後(3〜5時)」の2グループに分けてインフルエンザワクチンを接種したところ、1カ月後のウイルス抗体の量は「午前」がより大きく増えていたという。

 一般的に、抗体が多いほどワクチンの効果は高まる。同研究グループはこの研究成果について、こう説明している。

 「午前中にワクチン接種すれば、より高く安定した効果が得られることが期待される。ワクチンの効果の個人差という問題の解決につながる可能性がある」

 特に高齢者は、インフルエンザで肺炎や死亡に至る深刻な事態につながりやすい上、ワクチンの効果が比較的出にくいことが知られている。定期接種となった「肺炎球菌ワクチン」なども含めて、予防接種の効果を上げる工夫に発見に期待したい。

 ちなみに、<夜型生活の人には「午後の接種」が効果的>という報告はない。
(文=編集部)