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人気アーティストのコンサートチケットが、オークションサイトなどで高額転売されている――。何年も前から見られたこうした光景に対し、2016年8月、業界団体が反対声明を出した。それを契機に、アーティストやそのファン、音楽関係者などを中心に、チケットの不正転売に注目が集まっている。

コンサートや演劇のチケットは紙での運用が主流だが、不正転売の抑止法としての側面を期待し、「電子チケット」の導入が徐々に進められている。その中のひとつで、スマートフォンアプリのみで運用可能な電子チケット発券サービス「tixeebox」は、実際の公演での運用が始まっているサービスのひとつだ。電子チケットの運用初期の現在、その状況はどうなっているのだろうか 。

前編では、同サービスのセキュリティ対策や電子チケットがこれまで普及しなかった背景を、tixeeboxを提供する会社「Live Styles」の取締役・飯塚優希氏と、DMM.com イベント事業部 営業局 局長・中村圭一氏に伺った。後編では、いわゆるダフ屋行為への反発を電子チケット運営側がどう受け止めているか、電子チケット普及に向けた「課題」について聞いていく。

――コンサートチケットなどの高額転売、いわゆるダフ屋行為が問題となっていますが、こうした現状で、「tixeebox」への注目度は高まっていますか?

○高額転売問題を経て、電子チケットを取り巻く状況

飯塚氏:おかげさまで、取材して頂く機会も増えましたし主催者からも積極的に導入して頂いています。今年の夏に導入して頂いた大型興行では、電子チケットによるオペレーションをこれまで通りの方法で問題なく行えたことを評価して頂き、主催者からの問い合わせも増えました。

中村氏:僕らは数年前から「電子チケットは不正転売の抑止につながる」という利点を主催者側に説明していましたが、昨今の「高額不正転売」が大きな問題となってきたことで、主催者側にも次第に認知され、電子チケットへの関心が高まっているという印象はあります。ただし、ユーザー目線から見ると課題はまだたくさんあり、それらを克服できるような施策を練っています。

――いま現在、取り組まれている課題は何かありますか?

中村氏:電子チケットは強力なセキュリティレベルで展開することが可能なので、不正転売の抑止につながるという利便性を持っています。

一方で、例えば「購入者が当日、突発的な理由でそのイベントに行かれなくなった」場合に、紙チケットであればそれを友だちに渡すことができますが、「tixeebox」は購入者が必ず1枚は保持していなければいけないという基本仕様のため(※セキュリティレベルの設定により異なる場合もある)、そうした人を救済する仕組みを用意する必要がありました。

それが、DMMで展開している「DMM Passストア」というサービスです。これは、都合が悪くなりイベントに行けなくなってしまった人とチケットを探している人をマッチングして、チケットを「定価」で譲ることができます。

○「転売対策はユーザーに利点をもたらさない」

――現在、DMMが制作委員会に参加されている舞台「『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺」では、紙チケットの窓口のほかに「tixeebox」での受付も行っておられますが、電子チケットと紙チケットの購入割合はどの程度でしょうか?

中村氏:舞台『刀剣乱舞』に関しては、DMMが制作委員会であることもあって、DMM会員に向けた先行販売をさせて頂いていますが、それは「電子チケットで受け取って頂きたい」という思いがあり、ひとつの選択肢をお客様に提示した形です。

しかし、単純に「電子チケットでも受け取れます」としたところで、紙チケットの絶対的な信頼性がある限り、どうしても紙チケットの希望者が多くなります。そこで今回の舞台に関しては電子チケットに「特典映像」を付帯する形で、お客様に電子チケットを使って頂こうというアプローチで提供しています。

――なるほど、新しい付加価値ですね。電子チケットの導入について、ユーザーからの反応はありましたか?

飯塚氏:刀剣乱舞は舞台(ストレートプレイ)とミュージカルを同時並行的に上演していて、両方で「tixeebox」での電子チケット発券を行っているのですが、11月12日に広島県の宮島で行われた「ミュージカル『刀剣乱舞』in厳島神社」に対して、「(電子チケットなら)鹿に食べられなくてイイね」という声がソーシャル上であがっていました(笑)

『刀剣乱舞』の演目に関しては、少しずつ電子チケットを選択して頂くお客様が増えてきました。もちろん、特典映像という付加価値もありますが、ユーザーもそれほど抵抗なく電子チケットを選んで頂けるようになってきたという印象です。それは弊社からすると非常に喜ばしいことです。

先ほどの質問にもありました「課題」で言えば、主催者側からは「転売対策」のために導入して頂いているのですが、その対策によってユーザー側が受ける利点は特にありません。仕組みとして転売対策は施されていますが、ユーザーからは電子チケットならではの付加価値があることで選んでもらっているので、弊社としては嬉しい限りです。

中村氏:「電子チケットを普及させたい」という思いを実現するためには、DMMの会員だけにアピールするだけではナンセンスです。従来の「コンビニ発券」や「自宅への紙チケット送付」のように、「電子チケットのスマートフォンでの受け取り」を選択肢のひとつに加える、というのが、電子チケット分野への参入理由でした。

「tixeebox」は特定のプレイガイドだけでしか使えないものではなく、会員登録の情報があって決済手段さえあれば、どことでも連携は可能ですので、そうした体験をお客様に試して頂く機会をさらに増やしたいと考えています。一度でも体験して頂ければ、電子チケットの利便性がわかって頂けると思います。

――最後に、今後の電子チケットの普及に向け、「tixeebox」として取り組む課題や目標などをお教え下さい。

飯塚氏:「tixeebox」というのは単なる「発券ツール」のため、特典動画やデジタル画像、プッシュ通知など、電子チケットならではの付加価値を提供するのは、あくまで主催者側の意向次第とはなってしまいます。しかし、それらを実現するツールの提供は可能ですので、主催者に「こんなに簡単にできますよ」と提案し理解して頂くことによって、エンドユーザーに電子チケットの付加価値をご提供できると考えています。

中村氏:主催者側の声も聞きながら、エンドユーザーにいかに使って頂くかを考えると、紙チケットと同等の信頼性を持つソリューションになる必要があると思っています。そのために、まずは実際に使って頂くことがとても重要です。開催されるイベントの感動を、少しでも増やせるような楽しみをお客様に提供できるようなソリューションでありたいので、そのための仕様はどんどん盛り込んでいきたいです。

――ありがとうございました。

(早川厚志)