10月の豪州戦と11月のサウジ戦。このふたつのビッグマッチで、ハリルホジッチ監督の本質が見えた。(C)SOCCER DIGEST

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[ロシアW杯アジア最終予選]日本 2-1 サウジアラビア/11月15日/埼玉

 アジア最終予選で両極端なシチュエーションを迎えたことが、ハリルホジッチ監督のスタイルの本質をより鮮明にした。

 グループ最大のライバルとのアウェーゲームで最低でも勝点1をもぎ取りたかった10月のオーストラリア戦と、グループ首位とのホームゲームでなんとしても勝点3を掴みたかった11月のサウジアラビア戦――。
 
 オーストラリア戦では自陣に守備ブロックを築き、ロングカウンターを狙ったが、サウジアラビア戦では「強い気持ちとアグレッシブさを見せる」「攻撃して得点を取りたい」と指揮官が宣言していたとおり、素早いトランジションによってハイプレスをかけ、縦へ、縦へと攻撃を繰り出していった。
 
 4-2-3-1のシステムは同じでも、選手のチョイスと配置によって戦い方が変わる。対戦相手と試合の性質に合わせて戦い方を変える――これこそ、ハリルホジッチ監督のスタイルの本質だろう。
 
 サウジアラビア戦のあと、キャプテンの長谷部誠もこんなことを言っている。
 
「前回のブラジル・ワールドカップで、相手がどこであれ、自分たちのサッカーを貫こうとしたけど勝てなかった。そういうなかで、間にアギーレさんがいますけど、(ハリルホジッチ)監督が来て、相手のやり方によって臨機応変に戦っている。そういうことを予選で試しながらやっていくのはリスクもあるんですけど、オーストラリア戦もそんなに悪くなかったし、今日はうまくいったと思います」
 
 注目の右ウイングに起用されたのは、本田圭佑ではなく久保裕也だった。
 
 オマーン戦における本田のパフォーマンスは、特に攻撃面において悪いようには思わなかったが、サウジアラビア戦で求められたのが、攻守の切り替えのスピードや前線からのプレス、裏を狙う姿勢だったなら、コンディションやスタミナに不安を残す本田ではなく久保だったのは必然だ(前々日には浅野拓磨も右ウイングで試されている)。
 
 その久保がハーフタイムで本田と交代したのは、久保が右ひざを痛めたからだったが、リードした展開でゲームを落ち着かせるために本田とスイッチするプランは、もともとハリルホジッチ監督にあったに違いない。左サイドに流れた本田が起点となって、原口元気が決めた2点目のような攻撃パターンは、前半のうちには見られなかったものだ。
 ここまで指揮官が強く求めてきた「縦に速い攻撃」に関しても、それを生み出す「舞台装置」はいろいろあることが見えてきた。

 9月のUAE戦では大島僚太の縦パスで攻撃のスピードアップを狙い(うまくいかなかったが)、タイ戦ではシンプルに浅野のスピードを生かそうとした。

 10月のオーストラリア戦では本田のキープ力を生かし、原口や小林悠を飛び出させてロングカウンターを繰り出し、サウジアラビア戦では前述したようにハイプレスを仕掛け、中盤では長谷部と山口蛍が手数を掛けず、トップ下の清武弘嗣に預けたり、1トップの大迫勇也の足下に付けたりしていた。
 
 ちなみに、オマーン戦とサウジアラビア戦の後半は、山口のロングランがチームに縦の意識と推進力をもたらしていたようにも見えた。
 
 怪我のため、9月シリーズで離脱することになった槙野智章は、その際、ハリルホジッチ監督からこんな言葉をかけられという。
 
「今回の対戦相手と対戦チームを考えたら、おまえを起用したかったから残念だ」
 
 この言葉はやはり、対戦相手と試合の性質に合わせ、選手を選択していることを表している。となれば、今後、ゲームプラン次第で1トップに大迫ではなく岡崎慎司や浅野が起用される試合もあれば、ボランチに山口ではなく大島や柏木陽介、小林祐希が選ばれる試合もあるだろう。
 
 原口、大迫、清武、山口らロンドン五輪世代が新風を吹き込み、ホームで首位を叩いたサウジアラビア戦。指揮官のスタイルに選手たちが手応えを感じてきたことにも大きな価値がある。

文:飯尾篤史(スポーツライター)