業者だけが得をする「物件情報囲い込み」の実態[日本の不動産最前線 第7回]

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自身が所有している不動産の売却情報が、宅地建物取引業者(以下、宅建業者)によって囲い込まれ、その情報が市場に行き渡っていないとしたら、あなたはどう思うだろうか。

もちろんこのようなことは、依頼者であるあなたに対する背信行為であるし、そもそも契約違反だ。しかし今も多くの物件情報が隠蔽されている。

宅建業者が不動産所有者から売却依頼を受けた場合にはREINS(レインズ)といった不動産情報ネットワークに不動産情報が登録される。REINSとは、国土交通大臣指定の機構が運営するコンピュータ・ネットワーク・システムの名称。不動産の売買・賃貸物件情報や成約価格情報が登録されている、いわば「業者間情報ネットワーク」だ。

不動産を売却するための契約には、1社のみに売却を依頼する「1.専属専任媒介」「2.専任媒介」と、複数社に依頼する「3.一般媒介」があるが、1・2の場合、依頼先は1社であってもREINSに不動産情報を登録するため、情報が宅建業者に、またその先にいる購入希望者に広く知れ渡る。

宅建業者は、購入希望者から物件情報の提供依頼を受けると、このネットワークから物件を検索し情報提供を行なう。つまり売却物件情報は原則、全ての宅建業者が共有していることになっている。契約書には当然、広く不動産情報を行き渡らせる旨の文言が記載されている。

しかし実態は異なる。売却不動産情報をREINSに登録しない、登録証明書をとったらすぐに情報を削除する、登録はしているものの「契約交渉中である」などとし、情報を隠蔽するといった行為が横行している。理由は「より多くの仲介手数料がほしいから」だ。このシステムを利用できるのは宅建業者だけで一般には公開されていない。

不動産売買契約を成立させた宅建業者は、3%+6万円(税別)を上限とした不動産仲介手数料を売主・買主からそれぞれ受け取ることができる。売却依頼を受けた仲介業者は、売主からの3%+6万円の仲介手数料はなかば確保したようなものだが、もしこの仲介業者が買主も見つけたら、買主からも3%+6万円の仲介手数料が得られ、報酬は2倍に膨れ上がる。

例えば物件価格5,000万円の不動産なら、売主担当業者として受け取れる仲介手数料は156万円だが、買主からも手数料を得られれば総額は2倍の312万円となるのだ。


自己の利益のために情報を隠蔽、結果として円滑な不動産流通を阻害し、売主・買主の利益を毀損するこうした実態については、某メディアが2015年に暴露。業界団体はほどなくこうした事態の撲滅に努めると表明したが、実態は現在もさして変わらない。

コンプライアンス(法令遵守)が順守されている可能性が高い、誰もが知る大手企業なら大丈夫かといえば、そんなことはない。とある宅建業者は「物件情報の隠蔽をしてはいけない」といった内規はあるものの形骸化し、現場ではいまだに守られていない。この「物件情報囲い込み」は、あくまで社内で行われる。したがって決定的な証拠がつかみにくく顕在化しないのだ。

売りに出していることを周囲に知られたくないといった理由から「大々的に告知せずに、静かに売ってほしい」といった要望もあるが、そうしたケースは稀で、不動産を早く高く売るには広く情報が行き渡っているにこしたことはない。

不動産流通を阻害する、そしてあなたの利益を損なう可能性が高い、このような行為に巻き込まれないためにはどうしたらよいだろうか。まずは率直に、不動産情報の囲い込みをしていないかどうか、聞いてみることだ。これであなたは賢い顧客であることを理解させる。これだけで不動産情報の囲い込みはかなりやりにくくなるはずである。