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●"美人車掌"とともにトコトコ、"漁夫のプリン"ににんまり
銚子と聞いてすぐに場所をイメージできるだろうか。う〜ん、というは"チーバくんの耳"と覚えておいていただきたい。東京駅から銚子駅までは特急「しおさい」で約2時間。そしてその銚子駅は銚子電鉄の入り口でもある。全駅巡っても20分という短い路線ではあるが、それぞれの駅には趣がたっぷりだ。

○銚電旅を後押ししてくれる弧廻手形も

端となる銚子駅=外川駅間は6.4km。頑張って歩けば歩けなくもない距離ではあるが、昔も今も、地元民の心のよりどころとして、"銚電"は愛されている。車窓から眺めるキャベツ畑も、単線の線路も、初めて銚子を訪れた人であっても、どこか懐かしさを感じる風景がそこにはある。

また、9つの駅舎もそれぞれ魅力を放っている。銚子駅はオランダの風車風、観音駅はスイスの登山鉄道風、君ヶ浜駅は凱旋門風のゲートを備え、犬吠(いぬぼう)駅はポルトガル風。終点となる外川駅は木造駅舎になっており、漁師町の空気が降り積もっている。途中下車しながら一駅一駅味わいたいところがだが、いかんせん、ローカル線だ。次の電車は1時間後、ということもあるので、計画的に旅を楽しむようにしよう。

パスモなどのICカードは使えず、切符は銚子駅を除く有人駅もしくは車内で車掌から購入する。周遊旅をする人は、1日乗車券「弧廻手形」(大人700円、小児350円)を購入しよう。運賃が割安になるほか、犬吠駅内で販売している銚子電鉄名物「ぬれ煎餅」が1枚もらえるなどのサービスも付いている。さらに、犬吠駅が最寄りの「地球の丸く見える展望館」に行くなら、特典付き1日乗車券「弧廻手形Deluxe」(大人1,000円、小児500円)がお得だ。

○"美人車掌"のオススメ風景は1,2秒

レトロな駅舎と電車で知られる銚子電鉄だが、"美人車掌"がいることでも話題になっている。その人・袖山里穂さんは、銚子生まれ銚子育ちの"ど・銚子人"。とってもきさくな方で、地元の方々と自然に会話を楽しまれていた。そんな袖山さんに銚子電鉄の味わいどころをうかがってみた。

「犬吠駅で降りて『犬吠埼灯台』や『地球の丸く見える展望館』がオススメです。ただ、灯台と展望館は駅をはさんで逆方向にあるんですよね。でもぜひ、両方行ってほしいです。レトロな駅舎の外川駅まで行って、漁師町の雰囲気を味わったらまた折り返して銚子駅へ。これで"銚電"旅は十分味わえると思いますよ」(袖山さん)。

そんな袖山さんに、電車から見える好きな風景を聞いてみたところ、観音駅から本銚子駅へ向かう左の車窓からの風景とのこと。観音駅を出てすぐの、そして1,2秒という一瞬の風景だ。駅のそばには木が立ち並んでいるが、一瞬、視界が開けるところがある。銚子の街を一望できるその風景は、銚子で生まれ育った袖山さんにとってもなじみ深い、愛すべき銚子の姿なんだろうなと感じた。

○"漁夫のプリン"は縁起もよし

車窓から電車の影が入り込んだキャベツ畑を眺めながら、まずは海鹿島(あしかじま)駅で途中下車。この駅は関東最東端の駅(北緯: 35度43分18.4秒、東経: 140度51分48.8秒)であり、周辺には竹久夢二の詩碑や銚子出身の国木田独歩の碑などがあるので、文学碑巡りをするのもいいだろう。駅から徒歩2分のところには「あしか寿司」という寿司屋もあるので、ここでお昼の小休止をするのもありだ。

銚子グルメと言えばやはり新鮮な魚だが、銚子名物の寿司に"漁夫のプリン"と称されているものがある。今回いただいた「地魚にぎり」(吸いもの付き/税込2,490円)の中で、一際目立つ伊達巻寿司がそれだ。細工寿司のひとつなのだが、見た目はもちろん、その食感にもきっと驚くはず。滑らかで甘く、「プリンとはうまいこと言ったな」と思ってしまうほどである。

"漁夫のプリン"という名称は10年ほど前、街のイベントの一環で命名されたもののようだが、寿司そのものの歴史は約100年前の明治初期と長い。漁夫たちの活力となる甘い食べものとして誕生したのが始まりで、その後、銚子市内の寿司屋に製法が伝授されたという。厚焼き玉子のように巻かれた形跡はなく、どのように焼いているの不思議に思っていたところ、店主が「釜で焼くんだよ」とこっそり教えてくれた。プリンのようにつるんとした表面に仕上げるには、よほど技術が必要なんだろう。

「材料は卵と出汁と砂糖のみ。器用な人なら家庭でも作っているかもだけど、地元の人も正月や祝い事では寿司屋で購入しているよ。扇形は末広がりで縁起がいいからね。最近では、この伊達巻をお土産に買って帰る観光客もいるかな」(店主)。

もちろん、銚子港でとれた新鮮な魚が味わえる魅力も大きい。ていねいにあぶられた赤ムツも、飲み込んでしまうのがもったいないほど。秋〜冬にかけてはマダイやシメサバがオススメとのこと。どんなネタが楽しめるかはその日の仕入れ次第となるが、店主に銚子の魚事情も教えてもらいながらかみしめてみるといいだろう。

ちょっと面白いと思ったのが、醤油が2種類あることだ。ヤマサ醤油とヒゲタ醤油はともに、銚子に工場を構えている。「銚子に2社あるんだから両方そろえておかないと。それぞれ味わいが違うんですよ。好みの味で楽しんでもらいたいなと思って用意しています」と店主。そうしたところも銚子スタイルなのかもしれない。

●information
あしか寿司
住所: 千葉県銚子市小畑新町8499
営業: 11:30〜21:00
定休日: 月曜日(祝祭日は営業)
アクセス: 銚子電鉄「海鹿島駅」から徒歩2分

しっかりランチを楽しんだら、また銚子電鉄に乗って今度は犬吠駅へ。地球が丸いことを実感できる絶景スポットにも足を伸ばしてみよう。

●地球は本当に丸いんだな、漁村の坂道は夕暮れ前もよし
○地球を丸く見てみる

犬吠駅の中には、銚子電鉄のオリジナルグッズやお土産を取りそろえた売店がある。経営難の銚子電鉄にひとつの光となった「銚子電鉄のぬれ煎餅」(1枚税別100円)のほか、「銚電のぬれ最中」(6個入り/税別900円)、銚子電鉄の形をした「トレインボトル」(税別280円)など種類も豊富。訪れた時はちょうど、記念乗車証明書をデザインした「マグネット」が税別93円から税別50円になっており、ちょっとお得なお土産もあった。弧廻手形を持っている人は、ここでぬれ煎餅をもらおう。

犬吠駅の駅舎がポルトガル風なのには理由がある。犬吠駅から歩いて行ける犬吠埼灯台とポルトガルのシントラ市にあるロカ岬は、ユーラシア大陸の東と西に位置するとのこと。その縁で、銚子市とシントラ市は友好関係にあるという。そして、駅舎前には貧乏神に犬が乗った「しあわせ三像」なるものも。"貧乏がイヌ"ということで、犬が幸福・子宝・長寿をもたらしてくれるとのこと。「語呂もよくてかわいいわよね」と、地元民にも親しまれているようだった。

車掌・袖山さんもオススメの犬吠埼灯台は犬吠駅から徒歩7分。そして、地球の丸く見える展望館へは徒歩15分なのだが、駅から逆方向なので今回は地球の丸く見える展望館に行くことにした。道中には願いがかなう観音さまがいらっしゃる「満願寺」があるので、時間があれば立ち寄ってみるのもいいだろう。

満願寺脇の坂を上りきると、地球の丸く見える展望館が見えてくる。展望館は愛宕山の頂上に位置しており、オススメはその名の通り、360度の大パノラマで地球の丸さを実感できる屋上の展望スペースだ。中央にはステップが設けられており、ここからぐるっと見渡せば、330度展開された水平線でちょっと不思議な感覚が楽しめる。天気がいい日には富士山や筑波山の姿も。水平線に沈む夕日はもちろん、地理的な理由で銚子は日本一早い日の出が拝めるため、初日の出をここで迎えるのもよさそうだ。

●information
地球の丸く見える展望館
住所: 千葉県銚子市天王台1421-1
料金: 大人380円、小・中学生200円、65歳以上330円
開館: 4月〜9月9時〜18時30分、10月〜3月9時〜17時30分
定休日: 年中無休
アクセス: 銚子電鉄「犬吠駅」から徒歩15分

○漁村の坂道でノスタルジーな時間を

銚子電鉄の終点である外川駅へは、地球の丸く見える展望館から徒歩15分くらい。駅の先には外川漁港が広がっており、港を中心に碁盤の目状に細い坂道がつながっている。この8つの坂道にはそれぞれ名前が付いており、ノスタルジックな駅舎とともにその町並みも情緒ある漁村の風景として知られている。

地元の方に「どの坂道がオススメですか」と聞いたところ、「どうだろう。端から歩いてみるといいんじゃないかな」とのこと。駅舎からまっすぐ進んだところに6つの坂道が並んでいるので、時間が限られている時はこの坂道から歩いてみるとよさそうだ。

外川駅の留置線には、引退したデハ801が保存されている。在りし日の姿を想像しながら、また外川駅から銚子電鉄旅をスタート。駅内でたい焼きを販売している観音駅を目指す。

トンガリ屋根の駅舎と同じくらい目立つ大きなたい焼きの看板を掲げた観音駅は、皮が分厚くしっかりとした食べ応えのたい焼きの駅として知られている。ただ、焼き上げたものがなくなり次第閉店となるらしく、16時30分頃に訪れた時にはすでに閉店した後だった。どうしても食べたい人は、早いタイミングに訪れることをオススメしたい。

○こだわり豆のカフェラテで甘い休息

銚子電鉄巡りの最後は、仲ノ町駅と銚子駅からともに徒歩10分くらいのところにある「curoccho cafe(クロッチョカフェ)」へ。「銚子で落ち着ける場所」を目指して13年前にオープンしたカフェで、地元の人々が集う憩いの場として、また、仕事後の1杯に立ち寄る店として常連客も多いよう。

東京・吉祥寺の自家焙煎コーヒーショップ「LIGHT UP COFFEE」から仕入れた豆を使用し、ドリンクは税込300円から用意。ドリンクの一番人気は「カフェラテ」(税込430円)で、バリエーション豊かななラテアートが魅力的。コーヒーが苦手な人にも楽しんでもらえるよう、コーヒーが入っていない「ベビーチーノ」(税込420円)や、マロンをプラスした「マロンチーノ」(税込420円)もそろえているので、子連れ旅にもぴったり。

テイクアウトもできるベーグルやスコーンなどは全て手作り。朝3時から作り始め、ベーグルなどは常時15種類、スイーツは常時20種類を取りそろえているという。「キャラメルチーズケーキ」(税込420円)などのスイーツを店内飲食で注文すると、サービスでホイップやチョコなどでデコレーションしてくれるのもうれしいところ。一品一品に心がこもっている。

●information
curoccho cafe
住所: 千葉県銚子市中央町13-6
営業: 11時〜18時(フードL.O17時、ドリンクL.O17時30分)
定休日: 水・木曜日
アクセス: 銚子電鉄「仲ノ町駅」「銚子駅」から徒歩10分

銚子駅からは、ヤマサ醤油の工場(銚子駅から徒歩7分)やヒゲタ醤油の工場(銚子駅から徒歩12分)にもアクセスでき、ともに無料の工場見学を実施している。また、銚子駅から徒歩5分のところには、地元の人たちが自らセレクトした海産物や農産物、銚子土産などがそろった「銚子セレクト市場」もある。銚子電鉄旅とあわせて、銚子グルメ・文化を楽しむ1日もいいだろう。

※記事中の情報・価格は2016年11月取材時のもの

(松永早弥香)