サウジ戦で大きな勝利を収めたハリルホジッチ監督。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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[ロシアW杯アジア最終予選]日本 2-1 サウジアラビア/11月15日/埼玉
 
 勝利が必須のサウジアラビア戦をモノにしたのだから、素直にチームを、ハリルホジッチ監督を称えたい。確かに勿体ない失点もあったが、最終予選で求められるのは内容以上に結果だ。グループBで首位のサウジアラビアをここで叩いた意義は大きい。
 
 ロシア行きのチケットを争うオーストラリアが格下のタイと引き分ける幸運もあり、日本は同グループの2位に浮上。ここにきて“流れ”を引き寄せつつある。
 
 サウジ戦で素晴らしかったのはまず、CFの大迫だろう。最前線でボールを収めるだけでなく、チェイシングで敵にプレッシャーをかけるなど攻守両面で効いていた。とりわけ絶妙なトラップでタメを作る技術が素晴らしく、そこからトップ下の清武に良い形で何度もボールを預けた点も見逃せなかった。
 
 攻守両面で効いていたのは、左ウイングの原口も同じだ。アグレッシブな上下動でメディア、観客を驚かせた40分のシーンが物語るとおり、このアタッカーのタフネスは称賛に値した。
 
 走って、走って、走りまくるプレースタイルは味方に勇気を与え、しかも終盤にはエリア内まで走り込んでゴールまで決めてみせた。こういう選手が増えてくれば日本のプレスは強化される、そんな印象を抱かせてくれるほどのインパクトがこの日の原口にはあった。
 
 セカンドボールを拾ううえで重要な役割を果たしていたのが、2ボランチの長谷部と山口だ。いくつか中央を突破されそうな場面はあったものの、狙いを定めた守備で相手の攻撃を封じていた点は評価していいだろう。
 
 この日の日本は、大迫、原口、長谷部、山口ら中盤から前の選手が首尾よくプレスをかけたことでサウジにほとんどチャンスを与えなかった。多くの局面で4バックが数的不利に陥らず、比較的落ち着いて対応できたのは前線からの守備が機能していたからに他ならない。
 
「今日は僕だけじゃなく、(守備が)あまり得意じゃないキヨ君(清武)も頑張っていたし、全員がやったからボールを奪えた。そういう意味でチーム全員が頑張った、良いプレーをしたなと思う」
 
 原口のコメントからも、守備への手応えは窺えるだろう。

 
 決定力不足はさて置き、結果を出したという意味ではハリルホジッチ監督が最大の立役者なのかもしれない。本田、岡崎、香川をスタメンから外すという大博打を打って結果的に勝ったのだから、その手腕は見事というほかない。
 
 「負ければ解任」とも言われた試合で実際、あそこまで大胆なオーダーはなかなか組めないのではないか。CFに抜擢された大迫が「思い切った采配をしたと思う。僕が監督だったらこういう采配はできない(笑)」とコメントしたとおり、なんだかんだ本田や香川、岡崎に頼っていても仕方なかったところはある。しかし、指揮官はそうしなかった。
 
 UAEとのアジア最終予選初戦で大島をいきなりボランチで先発させたように、ハリルホジッチには勝負師の一面がある。より良い選手を選んだ──。このスタンスは、寄せ集め集団の代表チームを束ねるうえで重要なものになる。
 
 ただ、実は理に適っている部分もある。ハリルホジッチ監督は、ミスが許される前線に久保、大迫と代表経験の浅い選手を、ひとつのミスが失点に直結する4バックに長友など経験重視のDFを並べた。

 最大のポイントは長友の先発起用だろう。選手のメンタルも勝敗に影響してくるだろうサウジアラビア戦で最終ラインに百戦錬磨の長友(今回の最終予選は初出場も、サウジアラビア戦で代表91キャップ)を置くあたりに、指揮官の冷静さが窺えた。
 
 DFはなにより経験がものをいう。それを鵜呑みにすれば、ハリルホジッチ監督はこと4バックに関してはセオリー通りの選手起用をしたと言える。
 
 大胆さと冷静さを併せ持っていたのが、サウジ戦のハリルホジッチだった。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)