韓国代表のウリ・シュティーリケ監督【写真:Getty Images】

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崖っぷちの韓国代表。監督解任への世論は高まっていたが…

 日本代表がサウジアラビア代表に勝利を収めた同じ日、韓国代表はソウルでウズベキスタン代表と対戦していた。ワールドカップ出場へ負けられない大一番を戦っていた日本代表と同じく、韓国代表も「崖っぷち」の状況である。ウリ・シュティーリケ監督への風当たりが強くなっており、試合前には解任の声も高くなっていた。試合は韓国が逆転勝ちを収め、なんとか解任を回避したシュティーリケ監督だったが、疑問も残る采配で課題も山積みだった。(取材・文:キム・ドンヒョン【ソウル】)

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 平日、いきなり訪れた寒波。決してサッカー日和ではない。しかしソウルワールドカップ競技場は大勢の観客で埋め尽くされた。韓国の相手はウズベキスタン。普段ならば軽い気持ちでスタジアムに来るファンも多かったはず。だが今日は普段以上の緊張感に纏われた。

 この試合で負ければ、ウリ・シュティーリケ監督の解任が濃厚になっていたからだ。解任よりも、もし敗れればロシアワールドカップ出場圏内はもちろん、プレーオフ進出もなくなる4位以下に転落する可能性があった。ある意味、解任の話が出るのは当然な話だ。サッカーファン、メディアなど世論はすでに解任に本腰を入れていた。

 韓国代表はそれこそ崖っぷちに追い込まれていた。だからこそ命を懸けた一戦となるはずだった。シュティーリケ監督も「世論が悪化しているのは知っている。ミスがあったことは認めている。今日の試合で結果をどうにかしたい」と意気込んでいた。

 選手たちもその緊張感を共有していた様子だった。キャプテンのキ・ソンヨン(スウォンジー)は「難しい試合になるはずだが、雰囲気はいい。必ず勝ち点3を取る」と勝利への確信を見せた。彼以外の選手たちの顔からも、ここで負けられないという表情が読み取れた。

 スタジアムの観客席には韓国サッカー協会が用意した大型横断幕が掲げられた。そこに書いてある文字は「絶対勝利」。サッカーファンのキム・ミンスさんは「絶対勝利してほしい気持ちがあったからスタジアムに来た。必ず勝ってほしい」と述べるほど、ファンの期待も大きかった。果たしてどのような展開になるのだろうか。

超攻撃的布陣の韓国、まさかのミスで失点

「必ず勝ち点3を取る」という意気込みが入った先発メンバーが発表された。1トップには連携に長けたイ・ジョンヒョプ(蔚山現代)。右にはチ・ドンウォン(アウグスブルク)、左にはソン・フンミン(トッテナム)が入る。

 注目すべきは中盤の構成だった。攻撃的MFの2人にク・ジャチョル(アウグスブルク)と“カタールのメッシ”ことナム・テヒ(レクイヤ)が入る。ボランチはキ・ソンヨンに任された。いわゆる守備的MFが1人もいない、超攻撃的布陣だ。

 4バックには左からパク・チュホ(ドルトムント)、キム・ギヒ(上海申花)、チャン・ヒョンス(広州富力)、キム・チャンス(全北現代)が入った。守護神はキム・スンギュ(ヴィッセル神戸)が完全にレギュラーを勝ち取ったようだ。

 ウズベキスタンのコンディションは一目から見て良くないような感じがあった。しかし守備はしっかりと組織されており、韓国のサイド攻撃を効率よくケアし、手強い相手であることを証明していた。

 ホームの韓国はボールポゼッションで上回るもなかなかゴールをこじ開けれられない。そしてこの最終予選で一貫して指摘されてきた守備からまさかのミスが発生する。

 ウズベキスタン陣営からのロングボールをキム・ギヒが落としたが、これが曖昧な位置に。キム・スンギュが急いでクリアしたが、これがウズベキスタン選手の足元へ行き、鮮やかなミドルシュートを決められた。

守備ミスからの失点も…大逆転を演じた“巨人”の活躍

 嫌なスタートからムードはそのまま固くなってしまう。ソン・フンミンは力が発揮できず、チ・ドンウォンのサイド攻撃も効率が悪い。ウズベキスタンは集中力で勝っていたが、韓国の完成度も明らかに下がっていた。1トップのイ・ジョンヒョプが機能しなかったのも要因だった。

 後半もこんなムードが続くが、ウズベキスタンの運動量が激減するのも感じられた。そこから韓国の反撃が始まる。左サイドでボールを持ったソン・フンミンが相手守備の裏をかいてパク・チュホにスルーパス。これを受けたパク・チュホが中央にクロスを上げると、殺到していたナム・テヒがヘッドで決めた。

 このゴールを機にムードが一瞬で変わった。シュティーリケ監督も動く。イ・ジョンヒョップに代えて、2メートル近い“巨人”キム・シヌク(蔚山現代)を投入。ロングボールを彼の頭に集中させ、とにかく逆転ゴールを奪う作戦を切り出した。

 そしてこれが見事に的中。キム・シヌクがバイタルエリアで落としたボールが、ク・ジャチョルの足元に落ちた。アウグスブルクで好調のク・ジャチョルがこのチャンスを見逃さず、逆転ゴール。ウズベキスタンも反撃を図ったが、運動量があまりにも足りず、試合は韓国の逆転勝利に終わった。

ファン、監督、メディアも結果にご満悦

 シュティーリケ監督は試合の結果に満足した様子だった。特にこの日、62歳の誕生日を迎えた彼は普段より喜んでいた様子だった。相次ぐ守備のミスに関しては「コミュニケーションが足りなかった。自陣でのパスの過程にミスがあったのは事実だ。改善しなければならない」と述べるも試合に関しては「選手たちが結果を作り出した。失点してから冷静さを失わなかった。相手より運動量もあったし、ポゼッションも上回った。全体的に満足している」と述べ、選手たちを称えた。

 ファンたちもそうだった。試合後に会ったイ・スンジンさんは「世論が悪いうえでの試合だったので、チームが少し乱れるのではないかと心配もした。正直シュティーリケ監督の采配に疑問があったのも事実」としながらも「とりあえず勝てたので満足している」とほほ笑んだ。

 韓国大手スポーツ新聞社『スポーツ朝鮮』のキム・ガウル記者は「韓国は最初から攻撃的な布陣だったが、後半にようやく勝てた感じ。キム・シヌクのプレーもよかったが、ク・ジャチョルのゴールでシュティーリケ監督は留任される形となった。ク・ジャチョルがマン・オブ・ザ・マッチだと思う」と述べた。彼女は「試合結果によってシュティーリケ監督が解任されるかもしれなかった。次の試合はマルチェロ・リッピ率いる中国が相手なのでどうなるか楽しみ」と述べた。

 また、イム・ソンイル記者は「シュティーリケ監督が、誕生日に交代カード3枚を適切に使い、新しい命を授かった」と表現。しかし、韓国サッカーの未来がかかっていただけに大げさには感じられなかった。もちろん守備の不安はまったく改善されない問題で、ソン・フンミンとキム・シヌクの不調和など課題も山積みだ。

 折り返しの時点で起死回生の勝利を挙げた韓国は果たして今後どんなサッカーを展開するのか、注目が集まる。

(取材・文:キム・ドンヒョン【ソウル】)

text by キム・ドンヒョン