カーリング男子日本代表のSC軽井沢クラブが、韓国の義城市で開催されたパシフィック・アジア・カーリング選手権(以下、PACC)で優勝。日本勢としては、15年ぶりにアジアの頂点に立った。

 スキップの両角友佑(もろずみ・ゆうすけ)は、「長かった。(アジア王者に)なってみると、『こんなものか』という感じ」と言い、セカンドの山口剛史は、「結果が出て安心した」と語った。チームとしては7度目の挑戦でやっとつかんだタイトルゆえ、それぞれ安堵の笑みを浮かべた。

 SC軽井沢は2005年、両角と長岡はと美コーチらで活動していたチームに、当時大学生だった山口が加入して創部した。その後、2006年に両角の弟・公佑(こうすけ)、2007に清水徹郎が加わって現在の主要メンバーがそろうと、日本選手権では2007年から3連覇、2013年からは4連覇を達成。史上最多7度の優勝を誇る、国内男子のトップチームになっていった。

 一方で、2015年までに4度出場した世界選手権では、10位(2009年)、11位(2013年)、5位(2014年)、6位(2015年)という成績にとどまり、同じく2015年までに6回出場したPACCでは、すべて準優勝に甘んじてきた。そのため、「世界はおろか、アジアでも勝ちきれない」と、揶揄(やゆ)されることも少なくなかった。

 特に多くの関係者から指摘されていたのは、攻撃偏重の戦術とショットの選択についてだ。しかし彼らは、世界と互角以上に渡り合うために、自らのスタイルを頑として変えなかった。そして、「毎年、無理をしてでも必ず行った」(両角友)というカナダ合宿を敢行し続けた。

 両角友が振り返る。

「(カナダ合宿では)ゲームを重ねることはもちろん、空き時間はとにかく(他のチームの)試合を見た。ライブで見られない場合は、現地の知り合いに録画をお願いして、(その映像を日本に)送ってもらったこともある。

 彼ら(カナダのチーム)のゲームは、単純に見ていて面白いんですよ。劣勢でも、ドーンと逆転するようなゲームがたくさんあって。やっぱりリスクはあるけど、そこでチャレンジして(リスクを)はねのけたあと、大きなメリットが待っている。でも日本では、いかにリスクを回避するか、というチームが多い。それを否定するわけではないんですけど、僕らの戦術は(カナダでの影響を受けているため)国内では主流でなかったことは確かです」

 強豪が集うカナダで学び、世界と戦うために攻撃的な戦術を貫く――それが、両角友率いるSC軽井沢が標榜するカーリングだ。

 具体的には「速い石」と呼ばれる、1投で局面をすべて変えてしまうような、相当数の石を弾き出す、あるいは連鎖して3つ、4つの役割を果たす、パワフルなショットを磨いてきた。両角友が言う。

「結局、ああいうショットは試合で使わないと決まるようにならない。だから、最初は決まらなかったです。そこで(結果も出せず)、周囲からいろいろと言われることもありました。でも、世界で勝てるカーリング、やっていて面白いカーリングを目指すなら、他に選択肢はなかった」

 その信念が実ったのは、今年4月の世界選手権(スイス・バーゼル)だった。SC軽井沢は予選リーグで、最終的に3位に輝いたアメリカ、ソチ五輪銀メダルのスコットランド(五輪ではイギリス代表として出場)などの強豪に競り勝った。そして、身上とする"攻めのカーリング"で日本男子カーリング史上最高位となる、4位入賞を果たしたのだ。

 それから半年が経って、彼らのカーリングはさらに成熟していた。

 PACC決勝の中国戦では、「相手のほうが(うちを)警戒していた」と長岡コーチが言う。実際に中国は、特に後半から終盤にかけて、石をハウス内にためるリスクを嫌い、シンプルでオープンなカーリングに終始した。

 それでも、SC軽井沢が慌てることはなかった。

「簡単なショットをミスしないように決めればよかった」

 そう清水が語ったように、それぞれが自らの仕事をシンプルかつ確実に遂行し、相手のミスを誘って勝利をたぐり寄せた。アジアを制し、両角友も確かな手応えを口にした。

「攻守のバランスの取り方、攻撃での引き際の見極め方がよくなった」

 このPACCの結果により、SC軽井沢は来年4月にカナダ・エドモントンで開催される世界選手権の出場権を獲得した。前述のスイス・バーゼル大会と合わせて、エドモントン大会は2018年平昌五輪の選考を兼ねている。バーゼル大会で4位という結果を残したSC軽井沢は、世界選手権の出場12カ国中、中位以上の成績を残せば、男子カーリング競技では1998年長野五輪以来、20年ぶりの五輪出場は間違いないだろう。

 SC軽井沢のメンバーは、「カーリング選手です」と自己紹介すると、「えっ!? カーリングって、男子もやってるの?」と、言われることが多いという。日本選手権などの大舞台でも、観客の目やメディアの興味は、ほとんどが「カー娘」ともてはやされる女子チームに集中している。

「男子もよろしくお願いします」

 苦笑いを浮かべながらそう訴える両角友の姿を、これまでに何度見てきたことか。しかし、そうした状況はもはや過去のものになりつつある。アジアを制した今、次なる目標は世界の頂点となる。優勝後の会見で、山口は言い切った。

「世界選手権で金メダルを目指します!」

竹田聡一郎●取材・文 text&photo by Takeda Soichiro