金正恩氏

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国連総会で人権問題を扱う第3委員会は15日、北朝鮮の人権侵害を非難する決議案を、議場の総意により無投票で採択した。日本と欧州連合(EU)主導の同種の決議の採択は、2005年から12年連続。共同提案国は59カ国に上った。

決議は、来月の国連総会本会議で最終的に賛否が問われるが、そこで覆されることはまずない。

処刑前の動画

今年の決議案には新たに「リーダーシップを実質的に統制する機関により人権蹂躙(じゅうりん)が行われている」と明記。この問題を国際刑事裁判所(ICC)に付託し、金正恩党委員長の処罰を促す内容が盛り込まれた形となった。

人権問題で追いつめられる以上に、正恩氏を刺激することはない。韓国の聯合ニュースは8月、次のような「うわさ」を伝えている。

「米国が自分を人権犯罪者扱いしていると言って激怒し、拳銃に実弾を装填して辺りに乱射した」

事実ならば正気の沙汰ではない。もっとも、正恩氏は昨年、スッポン養殖工場を視察して支配人の職務怠慢にブチ切れ、彼を処刑にした際、その際の動画をテレビで放映させていた。

処刑の嵐

自分の怒りの強さを、周囲に思い知らせなければ気が済まない性質なのかもしれない。しかし、そのような振る舞いは結局、正恩氏の権力基盤を弱めることにつながるのではないか。

聯合は前述した同じニュースで、次のように伝えている。

「消息筋によると、海外駐在の北朝鮮公館職員の間では近ごろ、金委員長が北朝鮮エリート層の相次ぐ脱北・亡命に激怒し、軍に指示して脱北を防げなかった人民保安省(警察)や国家安全保衛部の関係者を残忍に銃殺させたとするうわさが公然の秘密として広がっている」

意に沿わない幹部らをことごく残忍な方法で処刑してきた正恩氏ならば、大いにありうることだろう。

健康不安

そして、このところエリートたちの脱北が相次いでいるのは、明らかにこうした恐怖政治が原因の一端になっている。今後、北朝鮮の外交部門や外貨稼ぎ部門は、深刻な人材難に陥っていく可能性がある。

一方、筆者の分析では、正恩氏は激しい粛清を始めた頃から急速に太り始めた。身近で仕えてきた人々を殺すというのは、並大抵の神経でできることではない。本人も、ストレスに苛まれていると思われる。

国家情報院は先ごろ、国会情報委員会の国政監査で、正恩氏が毎週3、4回ずつ夜通しのパーティー(酒宴)を開き、不摂生な生活と食習慣のために健康不安を抱えているとの分析を報告した。

(参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙

そのような荒れた生活が、極度のストレスに由来していることは容易に想像がつく。

今後も、正恩氏に人権侵害の責任を問う動きが弱まることはない。その度に暴走を繰り返す正恩氏は、貴重な人材を失い、自らの健康まで害する「自滅」の悪循環に陥っていく可能性は小さくはないだろう。