「雨にゆれる女」で主演を務める青木崇高

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11月19日(土)に公開される、半野喜弘氏の映画監督デビュー作「雨にゆれる女」で、長編作品単独初主演を果たす青木崇高にインタビューを敢行。

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本作は、本名を隠し他人として生きる男性と、そこに預けられた1人の女性による、サスペンス色豊かな愛の物語。

心に傷を持ち、他人と距離を置きながら1人で暮らす男・飯田健次を演じる青木に、役柄について、監督との運命的な出会いについて、そしてヒロイン・理美役の大野について語ってもらった。

――長編作品ではこれが単独初主演とのことですが、演じられた感想を教えてください。

主演だからこそ、などは普段あまり考えていないんですけど、そういう作品で半野さんとご一緒にできたことは素直にうれしいです。特に半野さんとの出会いというのは特別なものでもあったので、思い出深いです。

――特別な出会いというのは?

僕が事務所に入ったばかりで全然仕事がなかったころ、バックパッカーのようなことをやっていたんです。ヨーロッパ各地を横断して、安い宿に泊まっては同じ日本人の旅人と一緒にご飯を食べたりしていて。

あるとき、フランス・パリのカフェでも偶然日本人がいて「こんにちは〜僕、旅をしているんですけど、混ぜてもらえないですか?」って声を掛けた中の一人が、半野さんでした。そこからの付き合いなので、もう14年くらいになります。

日本に帰ってきてすぐのころは、半野さんのイベントなどに行ったこともあったんですけど、そこからしばらく空いて、8年とか9年たったとき、偶然今度は日本のご飯屋さんで、隣になって。「あれ〜? 久しぶり!」って(笑)。

僕がそれまでやっていたお芝居の仕事を半野さんは知ってくれていて、僕も半野さんが映画の音楽や映像を撮られているのを知っていたので、何かの縁だし、一緒に映画をやろうとなりました。脚本の段階からいろいろな話をしたり、映画に対する気持ちであったり、一緒に物を作るということについて考えました。

半野さんは音楽家としてものすごくキャリアのある方なので、事前にいろいろ話せたのは良かったですし、単純にすごく楽しかったです。とても有意義な時間が過ごせました。

――撮影で半野監督らしいと思ったことはありましたか?

僕も監督をしたことがないのでよく分からないんですけど、テーマとしては僕らが出会った意味とか、この作品を撮る意義を見つめながらやろうというのがありました。とにかく情熱をもって作ろうという感じだったので、テクニカルな細かい部分にあまりいかないようにしようと思っていました。

出来上がりに関しては、音楽家でもある方なので、時間の中に芸術性を作るところが天才的だなと思いました。色調とか「こうなるんだ!」とビックリしましたし、監督としてすごく信頼しました。

ベースには友人関係というのもあったので、撮影中は友人だからこそ言えることもありました。

きついことを言うとかじゃなくて、例えば役者としてはこういう状況の方が芝居しやすいとか、そういうことを言ってくれて助かったとか、監督が撮りたいものに対してどうやって整理をしながらやるかということを話しました。面白かったです。

――演じられた健次は極端に言葉数が少ないですし、表情での演技がメインになってくるのかなと思うのですが、演じられて難しさを感じましたか?

そこは監督ともよく話し合ったところですけど、言わないだけで思っていることはずっと胸の中にあって。健次の気持ちをどれだけ情報としてお客さんに与えるかとか、その強弱はありましたし、喋り方は監督からいろいろと教えていただきました。

ポツポツと切れるような音でせりふを言ってほしいとか。監督によると、発音の音が短くても人の心理に働きかけるリズムがあるらしいんです。

それは音に関するプロだからこそのお話だと思いますし、僕自身もああいう言い方の方がしっくりきました。それに健次として自然に振る舞うとき、監督が求めている方向性に近かったんです。お互いが求めているものが重なっているということで、自分たちがやっている方向が面白い方向に進んでいるなと感じました。

やっぱりこの作品では、健次をどう立たせるかというのが重要な部分だと思ったので。理美が現れたとき、現れる前、仕方なく受け入れる、そこから一線を越えて完全に彼女を受け入れた、でも実は意味合いが違っていたと気付く、という段階の心情の変化についてはじっくり話しました。

ここまで喋っちゃった方がいいのかとか、もうちょっと何年も言えなかった気持ちを出した方がいいのかとか。もっと理美にゆだねていいものかとか、そういうことをよく話していたと思います。難しいんです本当に(笑)。

A・B・Cのパターンをたくさん撮って声の強弱を組み合わせ、うまく撮れなかったら、編集すれば何とかなる、とも思えなかったので、そこは丁寧にやりました。

――ヒロインの大野さんとの呼吸とはどうでしたか?

呼吸はどちらかというと、合わないところから始まりました。役柄的にも、大野さんと距離感が詰まっていてすごく喋れる感じでスタートするより、ギクシャクとまではいかないまでも、お互いに微妙な距離感があるスタートの方がいいかなと。

それは監督ともそういう見解で一致していました。大野さんも難しい感情を持つ役なので悩んだと思いますし、そのギクシャクを映画にたたき込めたんじゃないかなと思います。

作っているのはフィクションなんですけど「実際は役者が演技をしているんだよね」って感じが、一瞬でも画面に出てしまったらこの世界観は成り立たないと思ったので、それならフレッシュな間合いからどう詰めていくかのアプローチを劇中でも、外でもしていた方が、この映画には合っているかなと。

だから必要以上には現場でお話しませんでした。

――それはどちらからでもなく、最初からお互いそのつもりで?

そうですね。もちろんあいさつはするとしても、お互い完全にリラックスしてしまう関係になるのは怖いなと。

でも、彼女がいろいろな感情を出してくるとか、そういう部分を見ると、刺激になりましたし、いろいろと教わったことも多かったです。だから大野いとさんという役者をとても俯瞰で見られました。

――青木さんご自身は、ああいう陰のある女性に魅力を感じますか?

どうですかね。まあ陰の部分は怖いけど見たくなる、って気持ちは分かりますけど…。ただ、陰に染まるのは恐ろしいですし、全て持っていかれる恐怖心はあります。

陰は陰でいいなって思ってそっとするのが実は幸せなのかなとも思いますし、ハマってしまえば男性はズルズルいっちゃうでしょうから(笑)。危うい部分に、引かれるのは仕方ないのかな。

――青木さんはそこで危ういからと、踏みとどまれる方ですか?

対女性じゃなかったとしても、人生において勝負するときの危うさという意味では、どんどんいくようにしています。ガンガンいかなくても安全ということではないと思うので、それならなるべくチャレンジした方がいいかなと。

こういう仕事を受けたらちょっと危険かな、今までやったことないし、恥をかくかな…と思うかもしれないんですけど、今までやってきたこともそれの連続で出来ているわけで。

だったらどんどんいく方が逆に安全なんじゃないかなと思っているんです。常に挑戦していく方が普通になれば、さらに面白くなるかなと。結果どうなるのかは分からないんですけどね。

――半野監督とまた一緒に作品を作りたいですか?

それはもちろん! いろんなことを一緒にやりたいです。もちろん年の重ね方も違いますし、何かこの関係をもっと深くじゃないですけど、いい形でクリエーティブなモノづくりに展開しつつ、面白いことをどんどんやっていきたいなと思います。これからも挑戦的というか挑発的なことをしていければいいですね。

14年前、半野さんに初めて声を掛けたときの自分に、もっともっと「ようやったな!」って言えるような関係にしていきたいです。あの時、声を掛けなかったら今回こうやって映画を撮ることもなかったですし、恐らく今後もそれを言い続けるんでしょうけど、さらにその重みが増すような関係にしいけたら最高ですね。

これからも、もっと関係を濃いものにしていきたいと思います!