「Thinkstock」より

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 本連載の前回記事では、スマートフォンの通信費などデジタル費がどんどん増えて家計を圧迫している実態を紹介した。携帯電話が登場する前に比べて、軽く個人で年20万円、夫婦で30万円以上の出費増になっているケースも珍しくない。デジタル費を減らす努力をする一方で、別の出費の無駄も削っていくことが大切だ。

 食費や小遣いなど、日々の努力が必要な項目も大切だが、毎月決まった額が出ていく項目、つまり固定費にも注目したい。固定費の見直しはちょっと面倒だが、一度見直すと節約の効果がとても大きい。今回は、そんな固定費のなかで生命保険料についてみていこう。もちろんデジタル費が膨らんでいない人も、生命保険を見直すことで家計をスリム化できる。

●独身者や子どものいない夫婦に死亡保障はいらない

 多くの人の家計を見ていてわかるのは、生命保険料に大きくカットできる余地があるという点だ。片働きの家庭で小さい子どもがいると、働き手に大きな死亡保障が必要。万一、働き手が亡くなった場合は収入が絶たれるので、遺族年金は払われるものの、残された家族が暮らしていけるように生活費や教育費として数千万円を残す必要があるからだ。

 しかし、共働きなら子どもがいても死亡保障は小さくていいし、子どもがいない夫婦や独身者には、死亡保障はまず必要ない。にもかかわらず、死亡保障5000万円の保険に入り、月2万〜3万円の保険料を払っている人も珍しくない。

 たとえば、30歳の独身者は、死亡保険金を残す必要がないので、もし死亡保障のために保険に入っていれば、これは解約できる。とはいえ、保障がまったくなくなるのも考えもの。病気やけがで入院した時に備える「医療保険」(入院保険とも呼ばれる)には入っておきたい。

 医療保険とは、病気やけがで入院した時に入院日数に応じて、1日当たり5000円などと給付金が払われる保険。手術をした時にプラスで給付金が払われるタイプもある。ウェブで簡単に申し込みできる商品もある。

●保険料は月3000円以下にできる

 たとえば、オリックス生命保険の新キュア。30歳男性が入院1日5000円のシンプルなコースに加入するときの保険料は月2022円、30歳女性が女性専用コースに加入する場合で2400円(いずれも保険料を65歳まで払う場合)。月2万円の保険料を3000円にして、月1万7000円の節約に成功すれば、年20万4000円の節約になる。これは大きい。

 結婚していても子どもがいないなら、保障の考え方は独身者と同じでいい。つまり死亡保障はいらず、入院に備える医療保険だけでいい。夫婦2人で保険の見直しをすれば、年40万円以上の支出減になる可能性もある。

●子のいる共働き夫婦は、掛け捨てで小さな死亡保障を手当

 子のいない共働き夫婦は医療保険だけで十分、死亡保障はいらない。でも共働きでも子どもがいれば、手頃な死亡保障(亡くなった時に保険金が払われる)を付けておくと安心だ。親の片方が亡くなった時、生活には困らなくても収入が減ることで、貯金がしにくくなる。そのため、大学でかかる教育費分の保険に入っておくといい。想定している進路にもよるが、子どもひとり当たり1000万円くらい。期間は子が20歳になるまでくらいでいいだろう。

 10〜20年など一定の期間、死亡保障を手当てする掛け捨ての保険を「定期保険」という。これもネットで手続きできるものが手軽で、しかも保険料が安い。

 たとえば、ライフネット生命保険の場合、35歳で保険金額1000万円、保険料払い込み機関20年の定期保険に入ると、月額保険料は男性2385円、女性1982円だ(女性のほうが長生きするので保険料が安い)。

 先の医療保険にこの定期保険を加えると、保険料の月額合計は5500円程度。もともと入っていた月2万円の保険を解約してこちらに入り直せば、月1万4500円の節約、年間17万4000円、夫婦で約35万円の支出減になる。

●保険見直しの注意点

 保険を見直す時に注意したいのは、新しい保険の保障がスタートしてから、古い保険を解約するという点である。病気の治療中だったり、治療が終わって5年以内の病気があると、新しい保険に(すぐには)入れない場合がある。条件は保険の種類や保険会社によって違う。

 この場合は解約を急がず、新たに保険に加入できるようになってから手続きをする。また、古い保険の保障が切れて、新しい保険がスタートする前に、入院や死亡という事態が起こりえる。確率は高くないが、万一に備えるのが保険ということを考えると、このセオリーは守りたい。

●ネットで保険に加入するのが不安な人へ

 もともと保険のことはよくわからないのに、ネットで保険に入るなんてハードルが高すぎる――。こう思う人がいるかもしれないが、実際にやってみれば意外に難しくない。まずは保険会社のコールセンターに電話して、医療保険や定期保険に入りたい旨を伝える。保険が苦手なので基本から説明してほしい旨を伝える。

 私はパソコン全般が苦手なので、困ったことがあるとすぐにヘルプセンターに電話する。最初に「機械は全然わかりません。苦手なのです」と断ると、感激するほど親切に教えてくれる。わからないからこそ電話して尋ね、それで納得できなければ契約しなければよいのだ。

「わからないことは質問する」。これから生きていくためにとても大切な姿勢。「聞くはいっときの恥」というが、これだけ専門化、細分化された世の中、わからないことがたくさんあって当たり前。恥ずかしいことなど全然ない。しかし聞かないと「一生の恥」だけで終わらずお金のことは「一生の損」になってしまう。この保険のことから始めて、マスターしてほしい。
(文=中村芳子/アルファアンドアソシエイツ代表、ファイナンシャルプランナー)