看板は重要ではない。最終予選4試合連続ゴールと原口が結果を残し、証明してくれたね。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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[ロシアW杯最終予選] 日本 2-1 サウジアラビア/11月15日/埼玉

 選手たちの闘争心が伝わってくるような、感情のこもった試合だったね。ここで負けたらあとがない日本の選手たちが120パーセントと言える必死な想いを見せてくれた。サウジアラビアのレベルは決して低くはなかったけれど、しっかりプレスをかけて押し込み、PKと流れのなかから1点ずつ奪った。前半から飛ばしていったことが、功を奏したよね。
 
 ただ、ハリルホジッチ監督がこれまでの記者会見で饒舌に話してきたモットーが、すべて撤回されたとも言えた。ヨーロッパにいる選手たちは貴重な経験を積めていて、彼らには存在感もある。そう言って尊重してきた選手たちを、すべてベンチに下げたんだからね。
 
 負けたらクビになるかもしれないという大勝負。ここでハリルはコンディションの良い選手を優先して起用した。原口元気は激しいプレーでチームを引っ張り、大迫勇也も前線でよく身体を張っていたね。ちょっと不運もあったけど(どこか痛めたようだったね)、久保裕也も何度かチャンスを作り出していた。

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 名門のベンチにいるより、ケルン、ヘルタ・ベルリン、ヤングボーイズといったヨーロッパでは決してステータスが高いとは言えないけれど、より高いレベルを目指そうとしているチームで主力としてプレーする。そのほうが絶対に飛躍につながるということだ。

「クラブで試合に出場していない選手は、代表の試合に出られるはずがない」。単純明快なこと。そんな当然の物差しが、このチームにも定められた。
 
 看板を掲げているだけの選手は必要ない。所属チームで試合に出られなければ、移籍をすればいいんだ。プロフェッショナルなんだからね。巨人の2軍で満足してしまい、胡坐をかいている。それは真のプロではないということだ。
 
 コンディションの良い選手こそ先発で起用されるべきであり、看板なんて重要ではないんだ。そういった「常識」を、原口がしっかり証明してくれたことが、この日の最大の収穫だ。レベルアップしている選手が、これまで常連として活躍してきたけれどコンディションを落としている選手たちに良い刺激を与えたくれたよ。
 
 試合前は、本田と香川がスタメンで出るかどうかが話題になった。でも、グループ首位に立つサウジアラビア相手に目立ったのは、原口と大迫だった。メディアも、売れるか、売れないか、視聴率を稼げるかどうかは大切かもしれないけど、原口と大迫をしっかり扱ってほしいね。特に原口は最終予選の4試合連続ゴールで、カズやゴンを抜いたんだから。

 本田はプライドが傷付いたはずだ。でも、そのプライドをもう一度取り戻せばいい。そのためには、まず試合に出ること。そのための選択肢を考えるべきだと思う。

 ハリルはどれだけ彼に気を遣ってきたのかな。この試合を前に、「外されるのであれば、監督はその意味を説明する義務がある」と言っていたね。でも、その理由は明快だよ、「試合に出ていないから」さ。
 
 日本代表という頂点にあるチームで、いつの間にか甘やかされてきてしまったのかもしれない。そして、まだ、大丈夫だ、安泰だと思ってしまっていた。周りの環境が、彼を過信させてしまったのかもしれない。本田はまだ、リトル本田のままだね。大人になっていないよ。常に競争原理が働いている世界なんだから、まずは所属チームで結果を残す。そこがベースになる。
 
 もちろん、一寸先も読めない怖さはあるよ。岡崎慎司はつい数か月前まで、プレミアリーグ優勝チームのレギュラーだった。新シーズンを迎えてコンスタントに試合に出られなくなり、パフォーマンスも一気に落ち込んでしまった。競争が厳しいからこそ、その落差も大きい。
 それでもハリルは彼に頼ってきた。しかし背に腹は代えられない状況に陥り、ここにきて心中を回避したわけだからね。
 
 いずれにしても、チームとしてひとつの明確な方向性は示せた。ワールドカップ最終予選は、これで半分が終わり、来年は後半戦――残り5試合が待っている。実力のある選手の中から、代表選手は選ばれる。この方針の下でのチーム作りは、これからも継続してほしいと思うよ。
 
 原口や大迫だって、少しでも安堵したら外されるかもしれない。そういった緊張感は持ち続けてもらいたいね。その意味では、今やっとチーム内の争いが、横一線になったと言えるのかもしれない。
 
 来年3月にはアウェーでのUAE戦(23日)とホームでのタイ戦(28日)がある。そして、6月にアウェーでのイラク戦(13日)があり、8月31にホームでのオーストラリア戦、最後は9月5日にアウェーでのサウジアラビア戦というスケジュールが組まれている。このグループは団子レースが続きそうだから、最後まで気が抜けないだろうね。
 
 結局、得失点差ではサウジアラビアを上回れなかった。つまりは、2017年、日本の本当の戦いはここからだよ。
 誰それがアーセナルに行ったとか、名門のジュニアチームにいたとか、「名前」は決して重要ではない。スーパースターは日本にはいない。まずはハングリーに上を目指していかなくてはならないんだ。 今回はそういう欲を持った選手が活躍したということ。そのプラス材料を、これからの戦いに活かしてもらいたいね。
 
 もしかしたら、日本ぐらいかもしれないんだ。試合に出ていない選手のCMを、ハーフタイムに流しているのは。だからもう一回、這い上がってこいということだよ。
 
 欲を言えば、もっと早くハリルには今回のような決断を下してほしかったけれどね。でもこれで、来年も日本代表の試合でスリルと興奮を味わえる。それは、とても幸せなことなのかもしれないね。

【日本対サウジPHOTO】