ベンチスタートとなったFW本田圭佑

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[11.15 W杯アジア最終予選 日本2-1サウジアラビア 埼玉]

 足早にミックスゾーンを通り過ぎた。先発落ちで後半開始からの途中出場となったFW本田圭佑(ミラン)は試合後、「みんな良かったから、みんなに聞いてやってください」とだけ言い残し、報道陣の呼びかけにも立ち止まることはなかった。

 大胆な決断がチームを動かした。バヒド・ハリルホジッチ監督は本田、MF香川真司、FW岡崎慎司という攻撃の主力3選手をベンチに置き、11日のオマーン戦(4-0)で結果を残したFW大迫勇也、MF清武弘嗣、さらにはA代表初先発となるFW久保裕也を抜擢。本田は後半開始から、香川は後半19分から、岡崎は後半アディショナルタイムからの途中出場だった。

「何人かの選手はトップパフォーマンスではない。監督によっては、そうであったとしても信頼して使い続ける人もいるだろう。しかし、私は躊躇なく、より良い選手を選び、そしてプレーさせた」

 オマーン戦後の記者会見で「本田は試合のリズムが足りないということが確認できた」と名指しで言及した指揮官は試合前日の記者会見でも「決断はいろいろとしないといけない」と、先発落ちを示唆していたが、その言葉を実践した。

 本田は合宿中、指揮官が先発から外れる可能性に言及したことを聞かれ、「(監督には)その意味を説明する必要がある。それが納得できるなら受け入れる。監督にはそういう義務がある」と反発していたが、この日、ハリルホジッチ監督は「何人かの選手とは話をした」と指摘。「確実に席が用意されている選手はいない。他に良い選手がいれば、その選手が試合に出る。そう私は考えている。選手はプレーできなかったらうれしくないだろうが、私はこのやり方でやっている」と、理解を求めた。

「今日は、今日(のコンディションが)良い選手を先発で選んだ。(香川)真司も(川島)永嗣も(本田)圭佑も岡崎も、もちろん信頼している。ただ、今日は私はこう考えた。私の責任で選んだ」

 所属クラブで出場機会に恵まれず、コンディションが良くなければ、ポジションを約束することはできない。「特に海外組はもっと頻繁にプレーしてほしい。競争力のあるコンディションでないと、同じようなことが繰り返される。おそらく先発では使われないだろう」。今後も状況が変わらなければ、先発を取り戻すことは難しい。そう繰り返した指揮官だが、同時に彼らがクラブで定位置をつかんで代表に戻ってくることにも期待している。

「これまでも『先発を取り続けなさい』『先発を取れるクラブに行きなさい』と言い続けてきた。我々のチームの強みは、海外組のプレー回数が多いことで決まる。彼らを本当に信頼している。全員をリスペクトしている」

 先発11人だけでなく、途中出場の3人を含めた14人、ベンチ入りの23人、さらにはベンチ外の2人も含めたチーム全25人での勝利。「困難な状況だったが、グループ、チームの勝利だと思う。勇気と強い気持ちを持ったチームだった」と強調したハリルホジッチ監督は「プレーしなかった選手、先発を外された選手もみんなを励ましていた。このスピリットをキープしてほしい。それがいつか報われると思う」と、選手への感謝を口にした。

(取材・文 西山紘平)


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