「人間は感情に左右される生き物ですから、セックスの時も、いかにしていい感情を持てるかが大事です」
 こう話すのは、『脳で感じるセックス入門』などの著作がある弘邦医院・院長のドクター林氏だ。

 こんな話がある。
 「30代の男性が“最近、突然EDになった”と相談に来られたのです。とはいえ、糖尿病でもなく、これといった原因が見つからない。ただ、話を聞いていくうちに、勃起しないだけでなく、セックスに集中できないことが分かったんです」

 その理由を本人とともに考えていくと、思い当たるのが職場環境の変化だ。
 「異動となって、以前の仕事に比べて、やりがいがなくなったというのです。かといって、人間関係に悩みなどはない」

 EDの要因には、ストレスも多い。だが、彼の場合、ストレスよりも「仕事にやりがい」を感じなくなったことが影響していた。
 「仕事に燃えていた頃の彼は日々、競争意識も強く、それによって落ち込むことも多かったそうです。しかし、それがセックスにもいい効果を与えていたのです」

 なぜか。実は人間は、感情が揺さぶられるほど性の快楽も得られるという。
 「性行為の最中、本来、人間は幸せや喜びを感じますよね。しかし、日々の生活が平坦で感情の浮き沈みも少なくなると、幸福を感じる瞬間も、さほど強い感情が高まらないのです」

 話は少し変わるが、女性も感情の激しい人のほうが、感度はいいという。
 「良くも悪くも普段から、よく落ち込んだり、逆にちょっとしたことで大喜びしたりする女性はセックスでもイキやすい。性行為になるや、その世界にどっぷりと浸かり、我を忘れるほど楽しめるのです」

 ちなみに、嫁とセックスレスになる男性は、仕事も私生活も淡々としているタイプが多いそうだ。
 「常に刺激的な人生が素晴らしいわけではありません。波風立たない普通の暮らしこそ、幸せでもあります。ただ、そういう生活を続けていると、感情が揺さぶられることを忘れて、セックスの時、熱く燃えることもできなくなるのです。結果、セックスに集中できない=心因性EDとなるのです」

 では、どうすればいいのか。人生を賭ける大博打でもやるべきなのか。
 「そんな必要はありません。これも気の持ち方一つで、まずは素直になること。さらに、楽しいという感情を強く持つのです。それにはいい方法があります。毎日、楽しかった思い出を一つ、日記に書くのです」

 楽しみなど一つもない、などと思うなかれ。
 「例えば、職場では何もなかったけど、昼に食べたお弁当が美味しかったなど、些細なことで人間は喜びを感じている。駅で可愛い女の子を見かけた――それだけでも構いません」

 そうやって“楽しいこと”を振り返ることで、感情は豊かになり、生きている喜びも感じられるという。
 「普段から感情豊かにすごしていれば、セックスも楽しくなるんです。その結果、性的興奮も高まり、心因性EDは解消できるのです」

 毎日、何もない…そんな状態は危険。ちょっと楽しみを知ることで、大きな快楽と自信を得られるのだ。

ドクター林
弘邦医院(東京・江戸川区)院長。『脳で感じるセックス入門』や『お医者さまが教える癒されてもっと気持ちよくなる!』など著書も多数。ED治療にも精通しており、現在、同医院では局部海綿体注入法による「ICI治療」も行っている。