錦織圭が男子テニス世界最高峰の舞台であるATPワールドツアーファイナルズで、今年も躍動している。

 年間成績上位8人しか出場できないロンドンでの大舞台への出場権を3年連続で獲得し、「当たり前のように感じていますね」という錦織は、またひとつトッププレーヤーとしての証を自身のキャリアに刻み付けた。こうしてさらに上を目指そうとする意識が高まってきた錦織を、ツアーに帯同するふたりのコーチも評価している。

「過去2年より早く出場権を獲得でき、とても安定したシーズンでした。マスターズトーナメントでもとてもよかったです。圭が成し遂げたことをとても誇りに思います」(マイケル・チャンコーチ)

「お見事! 圭はハードに努力してきたのだから、出場にふさわしい選手だと思います。彼にとっても、僕たちチームにとっても、とてもうれしいことです」(ダンテ・ボッティーニコーチ)

 ツアーファイナルズ2日目、ラウンドロビン(総当たり戦、以下RR)の初戦で、第5シードの錦織(ATPランキング5位、11月14日付け、以下同)は、2016年US(全米)オープンチャンピオンで、第3シードのスタン・ワウリンカ(3位)を6−2、6−3で破って、幸先のいい1勝を挙げた。

「出だしからリターンがよく、アグレッシブなプレーを心掛けた」と語る錦織は、コート上での動きが速く、グランドストロークを攻撃的に打って、ラリーの主導権を握った。加えてネットプレーやドロップショットも随所で効果的に決まった。

 錦織はファーストサーブの確率が46%と低かったことについて、「ファーストの確率がやっぱり60%ぐらいは最低欲しかったですね。それでもファーストが入らない中でも、余裕をもってプレーできました」と振り返った。ファーストサーブでのポイント獲得率は80%、セカンドサーブのポイント獲得率は74%と、セカンドからもうまくポイントにつなげたことを数字が表している。実際、ワウリンカにサービスブレークを一度も許さなかった。
 
 一方、ワウリンカは、大会前から不安を抱えていた左ひざにサポーターをしてのプレーとなり、本来の力強いテニスは影を潜めた。結局錦織は、わずか1時間7分で、今年のUSオープン準決勝のリベンジを成功させた。

「相手も相手ですし、(ワウリンカの)アンフォースドエラーが多かったので、すごくチャンスがあった。(勝利に)特に驚きも(ない)。自分がいいテニスをしていたので、それが一番大事なことですし、次につながるいい試合だったと思います」

 試合が差し迫ったここ2〜3日の練習によって、テニスが上向いてきた錦織にとっては、ワウリンカからの勝利は何よりも良薬になるはずだ。

 実は錦織にはツアーファイナルズの成績次第で、ATPランキングを4位あるいは3位まで上げられるチャンスがある。

 それでも錦織は「なるべく4位か3位で終わりたいと思っていますけど、正直、何点取れば、4位なのか、3位なのか把握はしていない」と、ひとつでも多く試合に勝つことだけを心掛けて、考え過ぎないようにしている。

 11月14日時点で3位のワウリンカが5115点。5位の錦織が、RR初戦に勝ったので、4705点から200点を加算して4905点に。4位のミロシュ・ラオニッチもRR初戦を勝ったので5050点から5250点になった。三者のランキングポイントが非常に接近しているため、三つ巴の争いになってくる。来年のオーストラリアン(全豪)オープンのシード順などを考えると、今後も目が離せない。

 まずはいいスタートを切った錦織は、11月16日(ロンドン時間)に、RR第2戦で、同じく1勝を挙げた新世界ナンバーワンのアンディ・マリーと対戦する。

 2016年USオープン準々決勝はフルセットで3時間58分にも及び、錦織が勝利した。マリーは「圭は多分ツアーでのベストイヤーを過ごしている。彼は世界のベストプレーヤーのひとりだ。とりわけここ数カ月とてもいいプレーをしている」と警戒する。

「明らかにこのグループで一番タフな試合です。アンディを倒すために100%でプレーし、いいプレーをしなければいけない」(錦織)

 世界トップ8のエリート選手だけが集まるツアーファイナルズの中で、「どこまで上にいけるかというのが、大きな目標になってくると思います」と錦織は語り、それが自分にとってのチャレンジだと言いきる。その意味でマリー戦は、錦織にとって最大の挑戦となる。

神 仁司●文 text by Ko Hitoshi