サムスンが自動車分野に進出へ、ハーマン買収でコネクテッドカー事業を強化

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スマートフォン「Galaxy Note 7」を巡る大失態からの巻き返しを図る韓国サムスン電子は11月14日、米自動車部品メーカーのハーマン・インターナショナル・インダストリーズを80億ドル(約8,636億円)で買収すると発表した。

サムスンが新たな事業分野に進出するにあたって傘下に収めるには、ハーマンは最適の企業だといえる。ますます飽和状態が進むスマートフォン市場とは異なり、ハーマンが主に手掛ける自動車関連の分野は、向こう10年間に大幅な成長が見込まれているためだ。また、両社には重複する既存の事業部門がほとんどない。

ハーマンの売上高は、およそ70億ドル。そのうち約70%を占めるのが自動車関連製品となっている。どのモデルの車であれ、オーディオ機器をはじめとするハーマン製の装置やソフトウェアが搭載されている確率はかなり高い。また、ハーマンは自社ブランドの製品以外にも、コネクテッドカー向けのハードウェアを数多く生産している。

米国市場では現在のところ、新車にテレマティクスシステムが搭載される割合は40%以下。そして、その他の市場における普及率はさらに低水準だ。しかし、米調査会社ナビガントリサーチによれば、このシステムは10年後までに、北米と欧州ではほぼ全ての車に搭載されるようになる見通し。アジア太平洋地域でも、普及率の大幅な上昇が予想されている。

これは、自動車メーカー各社が新たなサービスの提供を目指していることによるものだ。各社は自動車が自ら駐車スペースを探す技術や、故障修理、メディアストリーミング、オーバージエア(OTA)ソフトウエア・アップデートなどを行う技術の実用化を進めている。一方、プラグインハイブリッド車はすでにテレマティクスを搭載しているものが多い。すでに、自動車がバッテリー残量や充電ステーションの場所を教えてくれたりするサービスなどがある。

テレマティクスへのさらなる期待

テレマティクスは向こう数年の間に、急成長を見せているもう一つの分野、車車間・路車間通信(V2X、Vehicle to Everything)との一体化が進んでいくとみられている。

そして、ハーマンはここ2年の間に、この分野に関連したイスラエルのスタートアップ2社を買収している。モバイルソフトウエア管理会社のレッド・ベンド・ソフトウエア(Redbend Software)と、コネクテッドカーの車載ネットワーク向けのサイバーセキュリティー・システムを手掛けるタワーセック(TowerSec)だ。

スマートフォン市場の成長が全体的に鈍化し、より安価な製品を提供する中国メーカーなどが台頭する中で、サムスンは市場シェアを縮小している。そのサムスンにとってハーマンを手中に収めることは、これまでに開発してきた携帯電話向けディスプレーやメモリーチップ、プロセッサーなどに新たな販売機会を得ることにもなる。

一方、サムスンがこれまで、同じ韓国のLGグループを競合相手として意識してきたことは間違いない。LGも自動車分野での事業拡大を目指してきた。ゼネラルモーターズ(GM)と共同で次世代電気自動車「シボレー「ボルト EV」の開発・製造に取り込むLGは、同モデルに必要となるバッテリーやモーター、パワーエレクトロニクス装置のほか、温度調節やディスプレー、インフォテイメントなどのシステムを提供している。

名誉挽回につながるか

サムスンはハーマンの買収によって、傷付いた自社ブランドの名前に頼ることなく、コネクテッドカー市場に参入できることになる。買収が完了すれば、ハーマンのシステムにはサムスンが製造する内部部品が使用されるようになるはずだ。

スマートフォン市場におけるサムスンの名誉挽回には、しばらく時間がかかるとみられる。だが、コネクテッドカー分野での事業が、埋め合わせをしてくれることになるだろう。