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 反トランプデモが全米各地で起きています。トランプ氏が大統領選で勝利した後、数日経った現在でもその勢いは衰えていません。SNSが主流になった今日、若者やデモ参加者はSNS上で、#notmypresident (私の大統領ではない)というキャッチフレーズを作り、デモへの参加を呼び掛けています。

 筆者は、アメリカ留学時代にパキスタン系米国人と仲良くなりました。彼女はアメリカでイスラムの教えを守っています。

 彼女に今回のトランプ氏勝利について尋ねました。すると、相当滅入っている様子でこう答えました。

「トランプが勝った日は泣いた。もう数日経っているのに、いまだにうつ状態」

 この女性は、トランプ氏を絶対に大統領にしたくないとの思いから、選挙期間中ずっと反トランプの姿勢を示していました。それもむなしく、トランプ大統領が誕生するという事実に、どうしていいかわからない。彼女だけではなく、彼女の周りの多くのイスラム系米国人の間で失望が広がっています。彼女の友人らも口を揃えました。

「私も泣いた」

「イスラム教徒の入国禁止を、と叫んでいた男を本当に信頼できないし、これからどうなるか不安だ」

 やはり、米国でイスラム教の教えを守っている人たちから見れば、トランプ氏のように、「反イスラム」的発言をする人物が大統領になるという事実をなかなか受け入れることができない状態のようです。

◆英国EU離脱決定時と様子が異なる今回のデモ

 彼女の知人も、デモに参加しています。いったいなぜデモに参加するのか。その質問に対する答えが今回のデモの難しさの一面を物語っています。

「勘違いしないでほしいんだが、別に俺はヒラリーに大統領になってほしいからデモしているんじゃない。このデモは、トランプという人間に対する怒りを表しているデモなんだ。」

 つまり、デモ参加者が必ずしもヒラリー・クリントン氏の支持者とは限らないということです。

 大統領選の最中から、今回はどちらが大統領としてマシなのかを決める選挙戦と言われてきました。ヒラリー・クリントン氏を支持した人の中にも、トランプ氏を大統領にしたくがないために彼女に支持をしたという人が大勢います。そういった人たちは、トランプ氏という、人種に関わる過激な発言が多かった人物が大統領になることに対し、やり場のない「怒り」と「恐怖」を感じています。

 デモは起こるもの。英国のEU離脱が決定した時もデモをしていた。そのような意見がちらほら聞こえてきます。ただ、今回のエピソードから垣間見えるのは、今回の反トランプデモの目的がトランプ氏そのものへのデモであること。反対のヒラリー氏を支持するためのデモとは必ずしもいえない、複雑化したものなのです。

◆イスラム教徒は襲撃され、反トランプデモは暴徒化

 トランプ氏勝利が確定したのち、様々な事件が起こっています。

 サンディエゴ州立大学ではイスラム教徒の学生が襲われ、強盗にあいました。同様の被害が、サンノゼ州立大学のイスラム教徒の学生にも起こりました。

 これらはイスラム教徒が標的にされたと考えられています。このような「ヘイトクライム」と考えられる事件が起こっていることで、不安を持っている米国人が多くいます。

 一方、トランプ次期大統領に対する全米各地のデモも、平和的なものばかりではなく、一部では暴徒化しているという事実があります。

 店のガラスを割り、落書きをしたりするデモ参加者。さらに12日には、大規模デモが行われていたオレゴン州ポートランドのモリソン橋にて、銃撃された参加者もいました。

 デモの過激化、ヘイトクライム。様々な問題が出ている中、今後、彼らの心が休まる日は来るのか。

 はたして、トランプ氏がアメリカをまとめるための行動を起こすのか。

 この問題を根っこから解決するのは、非常に難しい課題であるといえるでしょう。

<文・岡本泰輔>

【岡本泰輔】
マルチリンガル国際評論家、Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。
米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。