11月13日、パプアニューギニアでFIFA U-20女子ワールドカップが開幕した。日本は2年前のFIFA U-17女子ワールドカップ(コスタリカ)で世界一に輝いたメンバー8名がそのまま繰り上がって臨んでいる今大会。もちろん狙うは世代をまたいでの世界2連覇だ。率いるは、なでしこジャパンも兼任する高倉麻子監督。元々この世代の選手を最初のカテゴリーであるU-16時代から育て上げてきた今のU-20女子代表は、いわば高倉監督の愛弟子たちといっていい。

 再びの頂点を目指す日本に立ちはだかるのは、予選グループの戦いだ。日本はナイジェリア、スペイン、カナダと同組で、今大会の死のリーグと言われているグループB。スタートダッシュを決めて、勢いそのままに決勝トーナメント1位通過をもくろむ日本にとって、初戦を落とすことはできない。13日、ナイジェリアとの一戦は、初戦独特の高揚感に包まれるなかで始まった。

"フィジカルに長けている"の一言では片づけられないポテンシャルを持っているナイジェリア。さらにマンツーマンの守備を敷いてくるのだから、やりにくい。それでも、日本は一気に攻勢に出た。開始1分で、トップに入った上野真実(愛媛FCレディース)のシュートがクロスバーを叩く。その後も日本ペースで攻撃を組み立てるが、決定的な場面が生まれない。ようやくゴールをこじ開けたのは34分、籾木結花(もみき ゆうか/日テレ・ベレーザ)のダイビングヘッドだった。

 一度スコアが動けば、日本の攻撃力はとどまるところを知らない。37分に乗松瑠華(浦和レッズL)からのマイナスへのボールを、上野が受けるとDFをかわしながらゴール。2−0で折り返すと、後半はまさに日本のゴールラッシュとなる。上野は初めてのワールドカップでハットトリックを達成し、籾木は2ゴール1アシストでプレーヤーオブザマッチを獲得するなど、終わってみれば6−0の完勝だった。

 得点だけを見ると大味な内容を想像しがちだが、内容は充実していた。なかでも、日本の攻撃の成熟度を確認できる2つのゴールがあった。

 ひとつは先制点。左サイドの長谷川唯(日テレ・ベレーザ)がボールを持って上がり、流れを止めずにDF陣の頭上を越えてファーサイドへクロス。その落下点を籾木がダイビングヘッドでピタリと合わせた。この形は同じベレーザに所属する籾木、長谷川、そして大会直前にケガで離脱を余儀なくされた清水梨紗が日々練習を重ねてきたもの。練習では、なかなかうまくいかなかったという。それでもワールドカップという舞台で挑戦し、結実させた。この得点を振り返るとき、籾木はともにこの攻撃スタイルを築いてきた清水の名を口にし、アシストをした長谷川は試合終了後に清水のユニフォームを着て勝利を喜んだ。3人で手にしたゴールだった。

 2つ目は上野の2点目だ。「動き出しとタイミングに変化をつけられれば崩せる」と、メンバーの攻撃力に自信をのぞかせていた上野。そのなかで自身がこだわったのは裏を取る動きだった。日ごろは、ポジションを落としてボールを受けるポストプレーを得意としているが、タレントが揃うU-20女子代表では、これまで飛び出しのタイミングを常に意識してきた。

「点を決めたら自信になると思うんです」――今年5月のパプアニューギニア遠征で招集され、そこからの急成長は高倉監督のお墨付きだった。しかし、その手応えを実感するためには、ゴールという結果を残す必要がある。この2点目は、DFの間にパスを通した杉田妃和(ひな/INAC神戸)の精度の高さももちろんだが、そのパスを受ける位置に無駄なく、一直線に走りこんだ上野の動きも完璧だった。

 このチームの強みは、こうした共有したイメージを限定された選手たちのみが実践するのではなく、ピッチのあちらこちらで表現しようとする意図があることだ。それは守備にも通じている。

 先制点を奪った直後に、改めて落ち着かせようと声をあげたのは乗松だった。ピンチらしいピンチは、全体を通して2度ほどしかなかったが、そのひとつでGKとの1対1の状況を作ってしまったことも重く受け止めていた。GK平尾知佳(浦和レッズL)がしのいでくれたものの、乗松はマークの受け渡しの連携がマズイことを痛感し、守備の要として中2日で修正する決意を滲ませていた。このチームが発足した2年半前、もっといえばU-16世代だった4年以上前に種をまき、成長させてきたものがまさに今、攻守において花開こうとしている。

 次なる相手は日本同様、初戦(カナダ戦)に5−0という大勝を収めたスペイン。無敗同士の直接対決であり、2年前、コスタリカで決勝を戦った相手でもある。相手に不足はない。似たタイプのサッカーを展開する両者の戦いは見ものだ。真っ向勝負をどちらが制すのか。第2戦は中2日、厳しい暑さが予測される16日16時(現地時間)にキックオフを迎える。

早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko