■知られざる女子日本代表〜Beautiful woman(5)

「硬式に比べてボールのスピードが遅い分、シュートボールだけでなく、ロビングやカットを使って駆け引きができるところが面白いです」

 硬式テニスにはないソフトテニスの魅力をハキハキと答える平久保安純(ひらくぼ あすみ・21歳)は、同競技において屈指の強さを誇る早稲田大学軟式庭球部に所属している。同部は去年開催された全日本学生ソフトテニス大会で男女ともに全カテゴリーを制覇、今年も女子ダブルスを除くカテゴリーを優勝で飾った。

 日本代表が5名も在籍する早大においても、平久保の実力は目を見張るものがある。インカレ連覇に加えて、全日本シングルスが2位、国際大会でも好成績を残している。平久保は早稲田での選手生活をこう語る。

「自分たちで練習のメニューを考え、一人暮らしも、私生活もありで、自己管理を学生にゆだねられています。すべて自分次第ってところが強さの秘訣ではないかと思います。とても気に入っています」

 競技の実力だけでなく、ルックスでも話題になっている彼女だが、「初対面の人にはクールな人だとか、話しかけにくい人だと言われます」と自虐気味に笑う。確かに、一見クールビューティーな「高嶺の花」タイプにも見えるが、実際はほかの部員たちとも仲がよく、毎日が充実しているという。

「大学生活もエンジョイしていますよ。買い物したり、散歩したり、料理をすることも。得意料理はグラタンです。栄養バランスを考えて食べるものを選んでいます。オフの日にはしっかり休んで、よく食べてよく寝るようにしています」

 軟式テニスとも呼ばれたソフトテニスの起源は古く、明治時代の日本で考案された。当時は、ローンテニス(硬式テニス)用ボールの国内生産が困難だったため、ゴムボールで代用したのが始まりだ。ローンテニスとの違いは、ゴムボールなので速球は打てない反面、変化がつけやすく、テクニックや駆け引きが重視されること。ほかにもラケットのガットテンション(張力)が緩いことや、ネットの高さ(中央部)がローンテニスより高いなどの差異がある。ソフトテニスは長年ダブルスが主流だったが、1993年から競技カテゴリーにシングルスも導入されている。

 競技力は日本、韓国、台湾が抜きん出でていて、世界ソフトテニス選手権のタイトルも3カ国が独占している状況だ。特に韓国は圧倒的な力で世界タイトルを日本より多く獲得している。なぜなら、韓国のトップ選手の多くが、プロ待遇で競技に打ち込める環境でプレーしているからだ。日本はというと、実業団の廃部が相次いでおり、韓国に水をあけられている。それだけに、平久保は日本ソフトテニス界で大きな期待を持たれている。

 母の影響で小学1年生からキャリアをスタートした平久保は、加速度的な成長で、全国小学生ソフトテニス大会の連覇(2006年、07年)を達成。地元の強豪校である和歌山信愛中学校に進学後は全国大会で春夏連覇、高校(和歌山信愛高)ではシングルス部門で全国優勝に輝く。恵まれた才能と実力を評価されて、ナショナルチーム(日本代表強化選手20人から6人の日本代表選手を選抜するチーム)にも抜擢された。そして、早稲田大学に入学してからは、14年インカレ女子ダブルス優勝とシングルス連覇(15年、16年)。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで、出場した大会を総なめにしている。

「選手としてのプレースタイルは、熱くプレーするタイプではなく、どちらかというと淡々と冷静にこなすタイプです。豪打で思いきり攻めていくのではなく、相手の状況やポジションをよく見て、どのような回転や高さ、タイミングで打てば相手の体勢が崩れるかを常に見極めてプレーしています。コートを広く見られることが強みだと思っています」

 自身でそう語るように、平久保は広い視野を活かして相手の弱点を突くスタイルが持ち味だ。さらに、その強みを磨くために日々の練習に取り組んでおり、「今はどんなボールにも対応できるように、構えのときの足幅を広くして重心を下げるトレーニングをしています」と力強く話す。

「私はテニスを通して成長してきました。ジュニアの頃、絶対に最後まであきらめないということ、できないことでも自分で工夫してやってみることを教わりました。テニスをやっていたお陰で色々な国で試合をすることもできました。自分がいかに恵まれた環境でテニスをできているかをとても実感しています。日本では当たり前であることが外国では当たり前ではないことが多く、自分の生活を見直すきっかけにもなりました」

 実質的なプロ制度がある韓国と違い、日本では大学卒業後は実業団に入り、仕事をしながらプレーを続けるケースが多い。大学で結果を出している平久保が、学生ソフトテニスの先に見据えるのは、どのような未来なのか。

「人生の目標は模索中ですが(笑)、ソフトテニスを通して色々なことを学んできたので、これからも周りへの感謝の気持ちを忘れないで人間として成長していきたいです。そして選手としては、2015年の世界大会は準優勝だったので、今年のアジア選手権大会は優勝したいと思っています」

 プレースタイルや容姿でクールなイメージを持たれているが、内面には熱い闘志を秘めた平久保は、まもなく第8回アジアソフトテニス選手権(11月16日〜20日、千葉県・フクダ電子ヒルスコート)に出場する。国際大会は韓国勢がタイトルをほぼ独占しているが、ぜひ今年はその勢力図に風穴をあけてもらいたい。

たかはしじゅんいち●文 text by Takahashi Junichi