金正恩氏

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北朝鮮国営の朝鮮中央通信は13日、「色情(好色)犯罪のいけにえとしてしおれていく日本の女性と子供たち」と題した論評を配信した。

何のことかと言えば、日本のアダルトビデオ(AV)出演強要問題について取り上げ、「あらゆる社会悪がまん延する日本で、毎年2万編の各種好色編集物が製作されて人々の健全な思想意識を麻痺させ、腐敗堕落の道へと容赦なく押しやる一種の『麻薬』として、犯罪集団のための金もうけの手段として利用されている」などと論じているのだ。

権力者のやりたい放題

論評はまた、次のように述べている。

「好色編集物メーカーは、まず服の展示会(ファッションショー)やテレビ局に出演する俳優を募集するという嘘で18〜20歳の娘たちを誘惑しては、好色映画に出演するよう強圧的に要求するという。 娘たちが仰天して逃げ出そうとするや、この者たちは『契約』文書を振りかざしてあらゆる手段と方法を尽くし、彼女らを威嚇恐喝している」

どうやら、執筆者は日本の関連報道をよく読んでいるようだ。北朝鮮に指摘されるまでもなく、このような犯罪行為は決して許されるべきではない。

それにしても、北朝鮮のメディアでは、誰が、どのような基準で報道の内容を決めているのだろうか。近年、同国メディアは、金正恩党委員長が直轄に使い形で指導している可能性がある。そうでもなければ、正恩氏のヘンな写真までが次々に公開されるはずがない。

(参考記事:金正恩氏が自分の“ヘンな写真”をせっせと公開するのはナゼなのか

筆者が指摘したいのは、彼らは女性や子供をねらった性犯罪がどのようなもので、それがなぜ悪いのかを認識しているということだ。

そして、そんな正恩氏が指導する国では何が起きているのか。

昨年の話だが、北朝鮮で7年以上の軍歴のあった脱北女性らがソウルで記者会見を開いたことがある。それによると、ある女性は軍隊内の朝鮮労働党副書記から「労働党に入党させてやる」と言われ、「金日成同志革命思想研究室」に呼び出されて性的暴行を受けたと証言した。

北朝鮮では労働党に入党できれば、昇進や配給面で有利な扱いが期待できる。また、思想研究室は容易に出入りできない神聖な場所とされており、それを悪用して性的嫌がらせや暴行が行われることが多いと言う。

このような証言は他にも数多く聞かれる。

北朝鮮女性の転落

問題がいっそう深刻なのは、北朝鮮には「性的暴力」という言葉すらない。彼女らが自分が受けた被害が人権侵害だと気づいたのは脱北して韓国に来てからだった。北朝鮮の女性たちは、そもそも「人権とは何か?」という概念すら知らないことから、何をされても「人権侵害」だとは気づかない厳しい現実があるのだ。

では、北朝鮮の国家が、そのような現状を改善するための取り組みを行っているのかと言えば、そのようなものは何もない。むしろ、権力者のやりたい放題がひどくなり、貧富の格差が広がる中で、貧しい人々、中でも女性たちの転落が止まらなくなっている。

正恩氏は、そのような現状を知っていて放置、あるいは助長しているのではないか。今回のような論評がいずれ、自分たちが犯した「罪」の証拠になり得ることを、正恩氏は知っておくべきだ。